「舌苔」のつき方に注目
「うっすら白」は問題なし
取りすぎもNG

舌は健康状態を示すバロメーターといわれる。体調が悪いと表面に白い舌苔(ぜったい)がべっとりこびりつき、口臭の原因にもなる。舌磨きの専用ブラシなども市販されているが、使いかたを誤ると傷つけてしまい、味覚障害を引き起こすので気をつけたい

舌の表面には細長い形をした糸状乳頭と呼ぶ組織がある。この表面に口の中で繁殖した細菌が付着したものが舌苔だ。歯のあたる部分や裏側にはできない。普通に食事をとっていればこすれて適度にはがれるが、年をとると唾液(だえき)の分泌量も減りできやすくなる。

歯磨きなどを怠って口の中を不衛生にしておくと、できやすくなると思っている人は少なくないが、健康な人でもうっすらと白い舌苔が付着しているもの。逆に舌苔が全くなくピンク色できれいに見えるつるつるした状態は、体調が崩れた場合に起きやすい。舌がぴりぴり感じることになる。

白く分厚い舌苔が慢性化すると、口臭を引き起こす。食べ物の残りかすがとどまりやすく、菌が増殖してにおいのもとになる硫黄化合物が生まれやすくなるからだ。

歯磨きのあと洗口液やうがい薬を使って口腔(こうくう)内を洗浄する習慣をつけると、舌苔の量は減ってくる。分厚く付着している場合は専用ブラシやガーゼ、タオルなどで拭い取るようにしよう。ただ「力を入れすぎると舌が傷ついて味覚障害を起こすことがあるので注意が必要」と鶴見大学の中川洋一講師は言う。

舌は実に繊細。ちょっと力を入れてこするだけでも傷つく。歯ブラシなどでごしごし磨くと表面の糸状乳頭が無くなってしまい。ひどくなると「つるつる」したところと「ざらざら」のところがまだら模様のようにできる「地図状舌」という状態になり、炎症や軽い痛みをともなうことにもなる。気をつけたい。

口のなかの細菌が付着してできる舌苔だが、九州歯科大学の柿木保明教授は「糸状乳頭が伸びると表面に付く細菌の量も増える」と説明する。糸状乳頭は舌の血管から供給される糖分やたんぱく質などの栄養の供給バランスが崩れると成長することが知られている。胃腸など消化管の調子がよくなると、糸状乳頭も短くなり細菌も付着しにくい。

薬の服用などで消化器にダメージがあると、影響が表れることも。薬には唾液(だえき)の出にくくなるものもあり、菌の増えやすい環境になりやすい。「舌苔を気にしすぎてガーゼなどで何度もぬぐい取っても、1時間あればまた増える。体調を整えないと一時しのぎにすぎない」と柿木教授は指摘する。

舌苔はさまざまな病気と関連がありそうなこともわかってきた。例えば脳卒中などでは舌の運動機能が低下、口が開いた状態が多くなり唾液の分泌量が減って悪化するといわれる。糖尿病や胃腸障害、下痢による脱水症状でできるという専門医もいる。詳しい因果関係の解明はこれからだが、病気が治ると舌苔が改善することがあるため、何らかの関係があるという見方が多い。東洋医学では舌で健康状態を調べる「舌診」という方法がある。内臓とは違い自分で鏡を見て状態を確認することもできる。「舌は消化器疾患の入り口。体調の良し悪しがでる。姿がいつもと違うと感じたときは口腔外科などを受診した方がいい」と東京医科大学の千葉博茂教授は言う。

舌苔をあまり気にすることはないが、毎日の歯磨き時に鏡をのぞき込んで、自分の舌に変化がないかどうかチェックすることが大切だ。
(松田省吾)


舌苔ケアのポイント


◆いつもより白い舌苔が増えている場合は、洗口液などを使って口の中を清潔に保つ

◆舌が真っ白な状態では、専用ブラシやガーゼでぬぐう。ただし、力を加えすぎないよう気をつける

◆薬の服用で増加することがある

◆食事中はよくかむ。人ともおしゃべりを心がける。こうすることで唾液が出やすくなり、舌苔がたまりにくくなる

◆胃腸などの不調で悪化することも。体調管理に気をつける

◆毎日、舌の状態をよくチェックし、異常が見つかったら専門医に診てもらう





2007.4.8 日本経済新聞