体に余計な負担をかけない歩き方を会得するとウオーキングも楽しくなる。若いときなら、特定の筋肉だけを使って歩き疲れても一晩寝ると回復して元気になるが、年をとるとそうもいかない。翌日にも疲労が残り、下手すると慢性疲労を招く。

平地の平たんな道路を歩くとき、大切なのは着地と踏み込みでポイントは3つ。

まず、つま先、ひざ、かかとの連係動作。前脚を出す際、つま先を上げアキレスけんを伸ばす。自然にひざが伸び、この姿勢のまま、かかとからスッと着地する。つま先はやや外側に向いているのがよい。極端に外側に向いたがに股(また)や、内側に向いた内股だと長い距離を歩けない。

次に、かかとからつま先への上手な重心移動。きちんと着地した後、足裏を丸くころがすようにローリングして、重心をかかとからつま先へ移動させる。連動して片方の足は地面から離れる。つま先へ重心が移ってくると、親指の付け根の所で靴底が曲がる。

3つ目が親指の付け根に重心を残してしっかり地面を踏み込む。地面からの反発力で腰が前方へグーと押し出され、片方の足はスムーズに前に出ていく。歩幅が広がり、背筋が伸びたよい歩き方のフォームになり、1つ目の動作へとつながっていく。

上半身は前かがみにならず反らさない。あごは軽く引き、頭のてっぺんが天空からつるされているようなリラックスした感じがよい。足元ばかり見ないで、周りの景色を楽しむようにしよう。

左右の肩を結んだ線と、腰のラインを地面に平行にして、背筋を伸ばし、お腹はへこまし、へその少し下の丹田にほどよい緊張をもたせる。肩はあげないで、ひじ、手首は力を抜いて体の移動に合わせてブラブラと自然にふる。速く歩くときは、速さに合わせて、コンパクトにひじを曲げてリズムよく。

最初は緊張して疲れるが、慣れてくると歩くのに必要な骨格や筋肉が適切に強調して動く。速く・長く歩いても余計な力が入らず、心地よいウオーキングが可能になる。
(日本ウオーキング協会副会長  泉 嗣彦)

2007.8.19 日本経済新聞