呼吸器感染に最近罹患した患者はMIと脳卒中のリスクが倍増する


新規の症例対照研究によると、気道感染に最近罹患したことと心臓血管事象の間に強い関連がみられ、感染後7日間は心筋梗塞と脳卒中のリスクが倍増する
Lisa Nainggolan


-WebMDの専門ニュースサービスHeartwireより-
大規模な英国のプライマリケアデータベースを用いた新規の症例対照研究において、呼吸器感染に最近罹患したことと、重大な心臓血管事象との間に強い関連が見出された[1]。研究者らは、感染後1週間は心筋梗塞(MI)と脳卒中のリスクが倍増したことを見出した。「呼吸器感染に最近罹患したこととMIおよび同じく脳卒中との間に、強い関連があることを示す、反論の余地のないエビデンスが存在する」と、『European Heart Journal』で2007年12月6日にオンラインで発表された研究で報告
している。

しかし筆頭著者であるTim C Clayton博士(ロンドン大学衛生・熱帯医学校、英国)は、heartwireに次のように強調した:「いかなる人も絶対リスクは依然として低いことを認識しておくことが重要である。大部分の心臓発作と脳卒中は呼吸器感染の結果として発生するわけではない。人々に『ああ、私はインフルエンザに罹ってしまったから、心臓発作を起こすのだろう』と考えて欲しくない」。

しかしClayton博士らは、心臓血管疾患のリスクが以前はどうであったかにかかわらず、関連が存在することを実際に見出しており、したがって感染は、従来の臨床的リスクファクターに更なる危険を増し加えるように思われる。Mike Knapton博士(英国心臓財団、英国ロンドン)は、「我々は、心疾患のある人は誰でもインフルエンザの予防接種を受けるよう勧める。インフルエンザは、特に心不全のような心疾患のある患者においては重篤な感染であり、心臓発作を誘発する可能性すらある」。

Clayton博士らは、大部分の呼吸器感染は細菌よりもむしろウイルスによるものであるため、抗ウイルス薬を用いた試験によって血管事象が減少する可能性があったことも示唆している。以前に行われたいくつかの研究で心臓血管事象に対する抗生物質の効果が認められなかった理由がこれで説明される可能性があると、博士らは言及している。

かなり多くのMIおよび脳卒中が予防可能であった
Clayton博士らは、MIまたは脳卒中と初めて診断されたすべての患者、および各患者に対応する1例の対照を同定するため、UK IMS Disease Analyzer Mediplusプライマリケアデータ
ベースを使用した。前年の呼吸器感染による受診に関する詳細な情報も抽出した。

合計11,155例のMIおよび9,208例の脳卒中の患者が同定された。MIおよび脳卒中の患者のうち、指標日前の1カ月間にそれぞれ326例および260例が呼吸器感染に罹患していた。感染後7日間の両事象のリスク上昇を示す強力なエビデンスが存在し、MIに関する調整オッズ比(OR)は2.10、脳卒中に関するORは1.92であった。リスクが最も高かったのは感染後3日間であった(ORはMIが3.75、脳卒中が4.07)。事象のリスクは時間とともに低下し、感染後1カ月を過ぎるとリスク上昇はほとんどなかった。

研究には多数の長所があると、Clayton博士らは述べている。第一に、呼吸器感染に最近罹患したこととMIとの関連を調べたこれまでの研究はUK General Practice Research Database
(GPRD)を使用していたが、今回の研究は異なるプライマリケアデータベースを用いて実施されたことである。;第二に年齢の制限がないこと;第三に、使用された呼吸器感染の定義が、これまでの研究で使用されたものよりも厳格であっただろう点である。

おそらくこの最後の点から、呼吸器感染の結果として生じたMIおよび脳卒中の占める割合が低かった(症例の2%未満)という事実が説明されるであろうと、博士らは述べている。しかし「呼吸器感染は非常に多い一般的な疾患であるため、予防できたかもしれないMIおよび脳卒中の絶対数はかなり多い」と博士らは指摘している。

最初からリスクの高い人々においても関連が認められた;感染が更なる危険となる
今回の研究のもうひとつの長所は、脳卒中およびMIのその他のリスクファクターに関する詳細な情報が含まれているため、既存のリスクすべてにおいて関連が認められたかどうかを調べることができることである。

「最初からリスクの高い人々における発生率は、更なるリスクファクターが加わっても有意な影響は受けないだろうと推定されることが時折ある」と博士らは述べている。

しかしMIに関して、すべてのリスクレベルにおいて呼吸器感染に関連するORが有意に上昇したことが見出され、「心臓発作リスクの既往すべてに関連するメカニズムが作用することが示唆される」。

リスクレベルが高い場合はリスクレベルが低い場合よりも関連は弱いかもしれないが、同じことが「脳卒中にもあてはまる可能性があるだろう」と博士らは言及している。

今後2つの研究方法によって、呼吸器感染に最近罹患したこととMI/脳卒中との間に認められる関連が本当に因果関係のあるものかどうか解明できるであろうと、博士らは述べている。

第一に、重大な血管事象の発生率が感染によって上昇するメカニズムに関する研究が、この問題の解明に役立つ可能性があると、博士らは述べている。第二に、例えば、確立されたインフルエンザの持続期間と重症度を軽減できる抗ウイルス薬を用いた介入研究によって、更なる洞察を得るべきであると、博士らは結論付けている。

英国心臓財団が本研究の資金を提供した。研究著者らは関連のある金銭的関係がないことを開示している。

1. Schober SE, Carroll MD, Lacher DA, Hirsch R. High serum total cholesterol--an indicator for monitoring cholesterol lowering efforts; US adults, 2005?2006. NCHS data brief no 2, Hyattsville, MD: National Center for Health Statistics, 2007. Available at:
http://www.cdc.gov/nchs/data/databriefs/db02.pdf.

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Medscape Medical News 2007. (C) 2007 Medscape

2007.12.11 Medscapeより引用