肺炎 国内の死因第4位で9割は高齢者。予防法は。
◆肺炎 国内の死因第4位で9割は高齢者。予防法は。
◇ワクチンで死亡率7割減 インフルエンザの重症化も防ぐ
◇効果は5年…医師ら「国は追加接種認可を」
インフルエンザが流行する季節は肺炎も多発する。肺炎が原因で亡くなる人はがん、心疾患、脳血管疾患に次ぎ、4番目に多い。肺炎で死亡する人の9割以上は65歳以上。高齢者をかかえる家族は、肺炎にならない予防策を取ることが大切だ。
■耐性菌出現で注目
肺炎を起こしている主な原因菌には緑膿(りょくのう)菌や肺炎球菌などがある。緑膿菌は院内感染も起こす。肺炎球菌は鼻の奥にすむ「常在菌」で、体の免疫力が低下すると発熱やせき、たんなどを伴う肺炎になり、死亡する場合もある。インフルエンザに感染していると、肺炎球菌が気管支などに侵入しやすくなり、症状はより重くなる。
肺炎球菌による肺炎の治療ではペニシリン系の抗生物質を使うが、最近は薬が効きにくい耐性菌が現れてきた。そこで注目されているのがワクチン接種だ。毒性をなくした肺炎球菌の一部を注射し、体に抗体をつくらせて重症化を防ぐ。日本では88年に承認された。米国では65歳以上の約6割が接種しているが、日本では5%程度と低い。ワクチン接種した人はしない人に比べ、死亡率は約7割も下がる。複十字病院(東京都清瀬市)の工藤翔二院長は「65歳以上の高齢者はワクチン接種をした方がよい」と事前の予防策を勧める。また、インフルエンザや肺炎治療に詳しい松本慶蔵(けいぞう)・長崎大名誉教授は「ワクチン接種はインフルエンザになったときの重症化を抑える効果もある」と指摘する。
の効果は1回の接種で5年程度持続する。米国では2回の接種が認められているが、日本では安全性や有効性を裏付けるデータが少ないとして、厚生労働省は1回しか認めていない。だが、工藤さんは「接種して5年以上たったら、2回目の接種をした方がより効果的だ」と国に2回目の接種の必要性を訴えている。
■欧米では小児用も
肺炎球菌は肺炎だけでなく中耳炎や髄膜炎などの原因にもなる。免疫力の弱い4潤オ5歳以下では、血液に入った肺炎球菌が脳や脊髄(せきずい)を覆う髄膜に侵入して炎症を起こす髄膜炎の原因にもなる。日本神経感染症学会の報告によると、日本では年間約1000人の子どもが髄膜炎にかかっていると推定されている。
欧米では子ども専用ワクチンが認められている。2歳未満の専用ワクチンを開発した米製薬企業「ワイス」は昨年9月、厚労省に使用申請したが、まだ承認されていない。普段から、うがいや運動、日光浴などで体の免疫を強くしておくことが必要だ。
■自治体が助成の動き
ここ数年、全国の自治体が住民に接種を促す動きを見せている。
スイカの産地で知られる長野県波田町(人口約1万5000人)は、04年から05年の冬、インフルエンザと肺炎を併発した高齢者が急増し、町の病院に収容できないほどの事態になった。
そこで、06年6月から、75歳以上を対象にワクチン接種への助成を始めた。通常の接種料金は6000円だが、2000円を補助し、自己負担は4000円。半分近い高齢者が接種を受けた。その結果、06年6月以前は、全死亡者のうち肺炎死亡が11-17%を占めたのに対し、助成後の07年は約6%、今年は約4%(10月1日現在)と肺炎死亡率は大幅に減った。
清水幹夫・波田総合病院救急総合診療科長は「肺炎で入院すると1カ月間の入院費用は1人あたり約86万円もかかる。ワクチン接種で高齢者の入院患者は大きく減った」と経済的な効果も認める。
全国のワクチン接種の平均的な費用は8000円前後だ。東京都渋谷区のように75歳以上は全額補助の例もある。
万有製薬は治療法やワクチン接種の病院紹介などを解説する「肺炎球菌感染症コールセンター」(月潤オ金曜の9-17時、0120・66・8910)を来年3月末まで開設している。【小島正美】
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