下血の場合の対応など

憩室出血管理のレビュー

家庭医療で推奨される憩室出血の臨床治療勧告が出された。

Laurie Barclay

【11月13日】家庭医療でみられる成人憩室出血の管理について、『American Family Physician』11月1日号のレビューに臨床診療勧告が掲載された。

「憩室出血は成人の下部消化管 (GI) 出血の17-40%を占め、下部GI出血の最多原因となっている」とジョージア医科大 (オーガスタ) のThad Wilkins, MDらは書く。「無痛の大量直腸出血を呈する患者は憩室出血の疑いがあるが、ほとんどの憩室出血は自然治癒する。65歳以上の成人の場合、特に血行動態が不安定な人や高血圧、糖尿病、慢性閉塞性肺疾患、慢性腎機能障害、冠動脈疾患などの併存疾患がある人では、憩室出血が原因で重い疾患にかかることもある」。

憩室出血の主な症状は無痛の大量直腸出血である。患者の約80%で憩室出血は自然に消失する。まず生理食塩水か乳酸加リンゲル液で輸液補充療法を始め、出血が持続するようであれば赤血球製剤を輸血する。

重症出血患者には気道確保、必要に応じて酸素補給、ヘモグロビンおよびヘマトクリット値の測定、血液型の特定、クロスマッチ試験などの蘇生処置を急ぎ行う。重症出血患者や重大な併存疾患がある患者は集中治療室への入室が推奨される。

精密検査は大腸内視鏡から始めるが、発症の12-48時間以内に大腸内視鏡検査が実施できるようにポリエチレングリコール液で迅速に腸管の前処置をしておく。大腸内視鏡で出血源を特定できたら、エピネフリン注射や電気焼灼療法などの内視鏡治療を実施してよい。内視鏡クリップ (体内クリップ)、フィブリンシーラント、結紮術も有用である。

大腸内視鏡で出血源が分からない患者の場合、テクネシウム-99m標識赤血球スキャンによる放射性核種画像法が役立つ。それでも病巣が見つからない場合は動脈造影法が必要である。継続する憩室出血には選択的塞栓術、動脈内バソプレシン注射、手術などの治療法を検討する。

塞栓治療を併用した選択的動脈造影法は患者の 76%-100%の出血を効果的に抑制し、虚血の合併率は20%未満である。動脈造影中の動脈内バソプレシン注射により72%の出血が正確に特定でき、90%の出血を抑制することができるが、再出血率が50%のため臨床ではほとんど使われない。

86%の患者の出血は自然治癒する。また、手術以外の止血方法の成功率が高いこともあり、ほとんど手術は必要ない。手術適応は大量輸血が必要な出血 (24時間以内に赤血球製剤を4単位以上)、治療抵抗性の再発出血、薬物治療が効かない血行動態不安定である。

低血圧と併存疾患のせいで緊急止血手術例の死亡率は10%-20%である。術前に出血源が特定されている状態であれば、標的部分切除が手術方法として選択される。結腸亜全摘は疾病率 (37%) および死亡率 (11%-33%) が高いため、制御できない大量の非局所性下部GI出血で他の治療が無効な場合に限り実施するべきである。

ある研究で1年間再出血率を追跡したところ、結腸亜全摘は0%、出血源を特定した部分切除は14%、出血源が未特定の部分切除は42%であった。2回以上の憩室出血エピソードがある患者では、選択的切除を検討するべきである。

「ほとんどの憩室出血は自己限定的で自然回復するが、9-19%の患者で急速な大量出血が認められる」とレビューの著者らは書く。「併存疾患を持つ患者、栄養不良状態の患者、すでに肝臓疾患にかかっている患者は転帰不良のリスクが高い。憩室出血が消失した後および大腸内視鏡を一度実施した後は、大腸がんのスクリーニングなど別の適応がないのであれば検査目的の大腸内視鏡は推奨されない」。

憩室疾患の進行を予防するには、食物繊維の摂取を増やす、繊維補助食品の摂取を始める (1日32 g)、身体活動量を増やす、などの方法が推奨される。肥満患者 (BMI 30 kg/m2以上) では憩室出血リスクが2倍になる。合併症を避けるため憩室疾患患者はナッツ、トウモロコシ、ポップコーンを控えた方がよいとする勧告はなくなった。

具体的な臨床診療勧告

具体的な臨床診療勧告とそのエビデンス評価レベルは次のとおりである。

  • 重度の起立性めまい、30回/分以上の起立時脈拍上昇が認められれば、中程度から重度の出血とみて間違いない (エビデンスレベルC)
  • 大量のGI出血が持続する患者で上部GI出血を除外するには、経鼻胃洗浄を実施し、吸入物に明らかに血液が混じっていれば上部GI内視鏡を行う (エビデンスレベルC)
  • 大腸内視鏡は安全で診断的有用性の高い下部GI出血検査法であるので、第一選択処置とみなすべきである (エビデンスレベルC)
  • 下部GI出血患者において、緊急大腸内視鏡検査は安全に実施できる (エビデンスレベルB)
  • 内視鏡で診断がつかない持続出血患者にはテクネシウム-99m標識赤血球スキャンまたは動脈造影法を実施してよい (エビデンスレベルC)
  • 憩室出血治療のため内視鏡の最中に治療処置を行ってもよい。その方法としてはエピネフリン注射や電気焼灼療法がある (エビデンスレベルB)
  • アスピリンと非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs) は憩室出血に関連するとされているため、診断患者では避ける (エビデンスレベルC)
  • 憩室疾患の進行を防ぐには繊維補助食品の摂取 (1日32 g) と身体活動量の増加が有用である (エビデンスレベルB)

    レビュー著者らは開示情報で金銭的利害関係はないと報告している。
    Am Fam Physician. 2009;80:977-983.

    Medscape Medical News 2009. (C) 2009 Medscape


2009.11.20 記事提供  Medscape