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 寒さが増すこの季節、薬局や薬店で市販の風邪薬を買い求める人が目立つ。ただ、様々なタイプの薬を前に悩むことも多い。上手な風邪薬の選び方をプロに聞いた。
 
 市販の薬214品目
 現在、薬局などで市販されている風邪薬はどれくらいあるのか。日本大衆薬情報研究会が編集した「大衆薬事典」(第10版)によると、「かぜ薬」として214品目載っている。
 「効能」を見ると、多くは「かぜの諸症状の緩和」とあり、成分の薬の形状(カプセルや錠剤など)が違ったり、小児向けだったり。飲む回数など用法も様々だ。この中から自分にあったものを探すのは悩ましい。さらに、副作用など安全性も考えると、生半可な知識で選ぶことは避けたいものだ。
 
 どんなことに気をつけたらよいのか――。よくあるのは「いつも飲んでいるこの風邪薬をください」という指名買い。日本薬剤師会の常務理事、生出泉太郎さんは「飲みなれている安心感は理解できるが」としながらも、「一口に風邪気味といっても症状は様々。今の体調にあった薬かどうか薬剤師に相談してから購入して」と注文する。
 日本大衆薬工業協会の常務理事、熊谷弘さんも「同じ名前の薬でも年月がたつと副作用情報が追加されていることがある」と指摘する。ずらりと並ぶ風邪薬を前に困惑しないためには「薬局や薬店で伝えることを整理しておくことが大切」(生出さん)だ。
 
 まず伝えるべきことは、だれが飲むのか。親が子どものために買い求める場合、特に用法や用量をきちんと確認したい。例えば大正製薬の「パブロンS」や「パブロンゴールドA錠」は大人から子どもまで服用可能だが、「パブロンエース錠」などは大人専用(15歳以上)。
 「パブロンエースに配合されている『イブプロフェン』は医療用薬品からの転用で、まだ小児の使用で安全性が確立されていない」(大正製薬)。このため、飲ませる量の多少にかかわらず、この成分が入った薬は小児には使用できないことになっている。
 
 次に肝心なのは、具体的にどんな症状かということ。「38度以上の高熱が続く場合はインフルエンザ、黄疸(おうだん)が出ているときは肝臓や腎臓の障害が疑われる。その時は市販薬での症状緩和は困難で、医療機関での受診が必要」と生出さん。
 
 風邪の初期症状とほぼ判断できれば、一番つらい症状に応じて薬を選ぶ。
 熱があまりなく鼻水、鼻づまり、くしゃみがひどければ鼻炎薬、せきが多いときはせき止め薬、熱やのどの痛みには解熱鎮痛薬というのが一般的。これらはピンポイントで症状を緩和する薬だが「どの症状もなんとなく出ている」というときは総合感冒薬がいいという。
 ここで気をつけたいのは、服用中の薬や生活状況。生出さんによると、日ごろからひざの痛みや頭痛をやわらげる薬を飲んでいる場合、解熱鎮痛薬などを服用すると、薬の作用が強くなりすぎることがある。薬の成分によっては眠気を誘うものがあり、車の運転をする人は避けたほうがよい薬も。このほか持病やアレルギー体質の有無、妊娠、授乳中かどうかなどもきちんと薬剤師に伝えよう。
 
 成分だけでなく、薬の形も様々。例えば武田薬品工業の風邪薬「ベンザブロックIP」には円形錠剤、カプレット(細長い錠剤)、細粒の3タイプがある。円形の錠剤は小型の瓶に入っているので、家庭常備薬向き。6錠ずつ包装しているカプレットや、1回分ずつ分包している細粒は携帯に便利。「生活スタイルに合わせて選んでほしい」と同社。
 
 添付文書も読んで
 薬を購入したら「箱の中の添付文書にも必ず目を通してほしい」と話すのは日本大衆薬工業協会の熊谷さん。用法や用量はもちろん、成分やその作用、使用上の注意や副作用情報などが細かく載っている。
 「字が小さい」との声もあるが、最近はイラストを添えるなど製薬会社側もわかりやすさに努めている。同協会のホームページ(http://www.jsmi.jp/)内の「おくすり検索」では、症状などを入力すると、合う薬がわかる。
 
 改正薬事法が2009年に施行されると、コンビニエンスストアでも風邪薬などの大衆薬が販売される見込みだ。専門スタッフの配置が条件とはいえ、購入する側も身近な大衆薬に関心を持ち、必要な知識を身につけておきたい。
 
 風邪薬の素朴な疑問Q&A
 Q カプセル剤、シロップ剤、錠剤などの違いは?
 A 飲みやすさや携帯性を考えて選ぶといい。カプセルは胃や腸など必要な場所で薬が溶けて効力を発揮するので飲む前にはずさない
 
 Q 市販の風邪薬を飲んで症状が改善しない時は?
 A 5−6回服用しても快方に向かわない時は医師や薬剤師に相談し、医療機関で受診を
 
 Q 1日2回、1日3回など薬によって飲む回数に違いがあるけど?
 A 生活スタイルに合わせて選択を。仕事で昼に薬を飲めそうもない場合は1日2回の薬を選ぶとよい
 
 Q 市販の風邪薬でインフルエンザは治るの?
 A 市販の風邪薬では無理。38度以上の高熱が続く場合はインフルエンザが疑われるので、医療機関で受診を
 
 Q 大人用の風邪薬は量を減らして子どもに飲ませてもいいの?
 A 対象年齢「15歳以上」と表示してある薬は、量に関係なく子どもに飲ませてはいけない。用法・用量に必ず従う
 (日本薬剤師会、日本大衆薬工業協会の説明をもとに作成)
 
 薬局・薬店で伝えること
 1 だれが薬を飲むの?
 本人なのか、自分の子どもなのか、高齢の親なのか。成人(15歳以上)と子どもでは適切な薬や飲む量が違うことが多い
 
 2 いつごろからどんな症状?
 熱が高い、頭痛がひどい、せきが止まらない、のどが痛い、鼻水が出る、鼻がつまる…など具体的に
 
 3 いつも服用している薬は?
 睡眠剤などを日ごろのんでいると副作用が強くなることも。服用歴を書いた「お薬手帳」を日ごろから用意しておくといい
 
 4 病歴、アレルギーは?
 心臓障害や高血圧、肝障害などの持病やアレルギー体質がある場合、風邪薬の成分が症状を悪化させる恐れがある
 
 5 車の運転は?高所での作業は?妊娠・授乳中?
 仕事で車の運転をする人は眠気を誘う成分が入っていると危険。妊娠・授乳中は専門医か薬剤師に相談を
 この症状にはこんな薬(一般的な目安)
 @熱やせきがあり、鼻、のどにも症状 → 総合感冒薬
 A熱があり、のどや関節の痛みがある → 解熱鎮痛薬
 B熱があまりなく、くしゃみや鼻水、鼻づまりの症状 → 鼻炎薬
 C熱があまりなく、せきやたんが出る → せき止め薬、去たん薬
 
 
 
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