滲出性中耳炎って
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長引く中耳炎の背後にGERD
成人ではPPI投与による改善例も 滲出性中耳炎に胃食道逆流症(GERD)の併発が多いことが分かってきた。プロトンポンプ阻害薬(PPI)で中耳炎症状が改善した例も報告されており、中耳への胃酸逆流が治癒を妨げている可能性がある。 黒原由紀=日経メディカル 難治性の中耳炎で名大病院耳鼻咽喉科准教授の曾根三千彦氏の元に最近訪れた75歳の女性。鼓膜切開を施行しても改善しなかったその患者に奏効したのは、PPIだった──。
図1 滲出性中耳炎患者(75歳女性)における中耳貯留液中のペプシノーゲン1(PG1)値の変化(曾根氏による) 中耳炎患者の約半数に症状 図2 滲出性中耳炎患者のGERD併発率(曾根氏による) さらに曾根氏は近隣の複数の診療所に協力を依頼し、成人患者253人(平均年齢63.4歳)に問診票を用いてGERD合併率を調査。その結果、誘因不明の滲出性中耳炎患者では、約47%がGERD症状を有していた。一方、中耳炎以外の症状で受診した患者のうち、GERD症状があったのは約13%で、中耳炎患者の方が合併率が有意に高いことが分かった(図2)。GERD合併の疑いのある症例の多くには、PPI投与や、「食後すぐに寝ない」「腰痛防止のベルトなどで体を締め付けない」といった生活指導が奏効したという。 小児の難治例にも逆流関与 症例 逆流を認めた小児中耳炎患者(提供:上出氏)
生後4カ月で受診。体温37℃、不機嫌。両耳ともに鼓膜が肥厚混濁していた(A)。鼻咽腔ぬぐい液からβラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性(BLNAR) インフルエンザ菌、Moraxella catarrhalisが検出され、急性中耳炎が長く放置され遷延化したものと推察された。鼓膜切開、鼓膜チューブ留置術を行ったが改善せず、3カ月後には高熱と下気道感染を繰り返し生じたため、その1カ月後に精査・加療のため静岡県立こども病院に入院。上部消化管造影検査では、ミルクで4倍希釈したバリウムを200mL摂取させ、臥位で観察したところ、鼻咽腔まで到達する逆流を4〜5回認めた(B)。ヒス角の鈍角、長軸方向の軽度胃捻転、幽門部での通過不良などがあり、胃内溶液の逆流が強く疑われた。検査中に誤嚥は認めなかった。 授乳を少量ずつ頻回に行い、食後30分以上は臥位にさせないようにした。ファモチジン0.5mg/日、クエン酸モサブリド0.35g/日を投与して経過観察を行っている。 |
2010.12.14 記事提供:日経メディカル |