ステロイド剤の服用による副作用の一つ、筋肉が衰える筋萎縮のメカニズムを解明したと、東京大医科学研究所の田中広寿(たなか・ひろとし)准教授(内科学)らが2日付米医学誌に発表した。筋萎縮を防ぐ治療法を開発し、春以降、臨床試験を始める予定。
田中さんは「筋萎縮は軽視されているが、患者の日常生活に与える影響は大きい。今回の治療法は、生活習慣病などによる筋萎縮にも効果がある可能性がある」と話している。
ステロイド剤は膠原(こうげん)病などの代表的治療薬。服用により筋力が低下するが、特に高齢者では運動能力が落ちて転倒や骨折のリスクが上昇、運動できなくなり、さらに筋萎縮が進行するという悪循環も起きる。
田中さんらは、ステロイド剤の成分であるホルモン「グルココルチコイド」の作用をラットで研究。このホルモンが筋肉の細胞にある受容体と結合すると、この受容体がタンパク質分解を促進する遺伝子や合成を抑制する遺伝子の働きを強め、筋萎縮を引き起こすことを突き止めた。
特定の酵素複合体がこの受容体の働きを抑え、筋萎縮を防ぐことが判明。この酵素複合体を活性化させる3種類の必須アミノ酸(BCAA)を投与すると、筋力低下を防ぐことができた。
臨床試験は、ステロイド剤を投与している膠原病の患者20人程度にBCAAを投与して効果を確かめる。
※医学誌はCELL・METABOLISM