2010 米国リウマチ学会

2010.11.9

初回の寛解達成が早い早期RA患者では寛解を長期に維持できる可能性

 発症1年以内の早期関節リウマチ(RA)患者では、通常の抗リウマチ薬による治療でも、半年以上の臨床的寛解(DAS28<2.6)が現実的な治療目標になり得る。若年とベースラインの低CRP値が寛解の有意な予測因子――こんな研究成果がメキシコから報告された。メキシコ国立医学・栄養学研究所のIrazu Contreras-Yanez氏らが、11月11日まで米国アトランタで開催されている米国リウマチ学会(ACR)で発表した。

  Contreras-Yanez氏らは、発症1年以内のRA患者で3年間以上フォローアップができた89人を対象とした。2カ月ごとの受診で連続3回、DAS値が2.6未満となった場合、寛解維持(SR:sustained remission)。連続的、断続的にかかわらずフォローアップ期間の8割以上、寛解維持した場合、結果良好(EO:excellent outcome)。また、期間中1度もSRを達成できなかった場合を疾患活動性遷延(PDA:persistent disease activity)とした。

  フォローアップ期間の平均は37.1カ月。87.6%(78人)の患者が少なくとも1回SRを達成した。SR達成群と未達成群を比較したところ、DAS28値、医師によるVAS、ESR、CRPの各項目で有意差が認めたが、ロジスティック回帰分析を行ったところ、ベースラインのCRP高値のみがPDAの有意な予測因子となった(オッズ比:1.5、95%CI 1.2-2、p=0.01)

  期間中25%(22人)がEOを達成した。EO達成者は非達成者(67人)に比べ、臨床的寛解の達成までの期間が有意に短く(4.2±2.3カ月 対 15.9±11カ月、p≦0.001)、最初の臨床的寛解の継続期間は逆に有意に長かった(28.7±9.9カ月 対 12.9±10.7カ月)。

  ベースラインの属性とEO達成の関連をロジスティック回帰分析で調べたところ、若年(オッズ比:0.96、95%CI 0.91-0.99、p=0.04)とCRP低値(オッズ比:0.64、95%CI 0.45-0.93、p=0.02)が有意な予測因子だった。

  若年とCRP低値は、早期SR達成の予測因子でもあることから、EOを従属変数としてCox回帰分析を行ったところ、早期SR達成はEOと有意な関連のある唯一の説明変数となった(ハザード比:0.72、95%CI 0.62-0.83、p≦0.001)。

  このことは、強力な治療によって早期に寛解達成に導くことが、RA患者の予後改善に関連することを示唆しているとみることもできそうだ。なお、本研究の対象者は通常の抗リウマチ薬で治療された。



2010.11.9

RA患者でもスタチン中断で死亡リスクが増大する

 健常人でスタチン投与を中止した場合、死亡リスクが増加することが分かっているが、関節リウマチ(RA)患者でも、スタチン投与の中止により、心血管死と全死亡のリスクが増加することが新たに示された。カナダ関節炎研究センターのMary A. De Vera氏らが、米国アトランタで11月11日まで開催されている米国リウマチ学会(ACR2010)で発表した。

  De Vera氏らは、1996年1月から2006年3月の間にカナダ・ブリティッシュ・コロンビア州でRAの治療を受けた患者の診療管理データを基に、1996年5月から2006年3月の間にスタチン投与を受けた4102人(平均66.6歳、60%が女性)を対象として、1万6144人・年のフォローアップを行った。期間中、3カ月間以上スタチン投与が中止されていた場合、スタチン中断者とした。

  対象者が投与を受けていた主なRA治療薬は、従来タイプの非ステロイド性抗炎症薬(57.6%)、ステロイド(42.0%)、COX-2阻害薬(32.8%)、MTX(23.4%)などだった。

  患者が投与されていたスタチンは、アトロバスタチンが47.9%と最も多く、次いでシンバスタチン(21.9%)、プラバスタチン(12.2%)の順だった。期間中、1862人(45.4%)が、少なくとも1回、定義したスタチン中断を経験した。

  平均4年超のフォローアップ期間中、467人が死亡した。うち心血管死は198人だった。スタチン中断の調整済みハザード比は1.60(95%CI 1.15-2.23)、全死亡の調整済みハザード比も1.79(95%CI 1.46-2.20)で、スタチン中断によって、いずれも有意に死亡リスクが増加していた。

  これらの結果についてDe Vera氏は、「後ろ向き研究ではあるものの、RA患者でもスタチン中断による循環器死亡と全死亡のリスクが有意に増加していることが示された。RA患者でも、スタチンに関する服薬コンプライアンスはリスク管理上重要」とした。


2010.11.11

RA妊婦の血中サイトカイン濃度は、出生児の成長に影響する

 妊婦が関節リウマチ(RA)を罹患している場合、出生時低体重のリスクが高いとされ、疾患活動性が高いほど体重減少が大きくなることが知られている。このほど、RAに関連したサイトカインと出生児体重との関連を調べた新たな研究で、妊娠初期には、IL-6が体重減少を増悪し、IL-10は体重減少を防ぐ関与をする可能性が、また妊娠後期のRA低疾患活動性時には、TNF-αと出生時体重に正の関連性がみられることが示された。オランダ・エラスムス大学ロッテルダム医療センターのFlorentien D.O. de Steenwinkel氏らが、11月7日から11日まで米国アトランタで開催されている米国リウマチ学会(ACR2010)で報告した。

  de Steenwinkel氏らは、妊娠とRAの関連を調べているエラスムス大学のPARA(Pregnancy-induced Amerioration of Rheumatoid Arthritis)研究の一環として、本研究を実施した。対象は、妊娠第1期(1〜12週)の134人と妊娠第3期(27週)の168人とし、出生時体重とDAS28-CRP値と、IL-10、IL-6、TNF-αの血中濃度を測定した。出生時体重とその変化は性、週齢に基づく標準値からの標準偏差で正規化した標準偏差スコア(bwsds)を用いた。

  妊娠第1期の妊婦で、IL-10が検出可能(高値)だったのは12人だった。このIL-10高値群は低値群に比べ、DAS28値が高かった(平均4.4 対 3.6)ため、低値群の中から疾患活動性とステロイド使用などが高値群と一致する24人を選び、比較した。

  その結果、IL-10高値群はbwsds値が0.92で、低値群の0.15に比べ、有意に大きかった(p=0.02)。こうした関連性は妊娠第3期群ではみられなかった。

  妊娠第1期に、IL-6とDAS28値を中央値で2分し、それぞれの高値・低値の4つの組み合わせで比較したところ、DAS28が中央値(=3.8)よりも高い時、IL-6高値群はIL-6低値群に比べ、有意にbwsds値が低かった(0.357 対 -0.194、p<0.05)。こうした関係は妊娠第3期群では認められなかった。

  同様にTNF-αとDAS28を中央値で2分して4つの組み合わせをみると、妊娠第3期には、DAS28低値で疾患活動性が低い時、TNF-α高値群の方がTNF-α低値群よりも、bwsds値が有意に高かった(0.515 対 0.053、p<0.05)。このような関連性は、DAS28高値、あるいは妊娠第1期にはみられなかった。

  de Steenwinkel氏らはこれらの結果から、(1)IL-6は、妊娠第1期に出生時体重に与えるRA高疾患活動性の悪影響を増大する、(2)IL-10は、妊娠第1期にRA高疾患活動性が出生時体重に与える悪影響を抑制する、(3)TNF-αは妊娠第3期、かつRAが低疾患活動性の時に、出生時体重に良好な影響を与える、といった関連性が本研究から示唆されたとした。


2010.11.11

TNF阻害薬による骨びらん修復は疾患活動性の十分な抑制に依存する

 TNF阻害薬は、関節リウマチ(RA)患者の臨床症状を改善するだけでなく、関節破壊の進行を抑制し、一部の患者においては破壊された関節の修復をももたらすことが、近年多くの臨床試験によって示されている。しかし、これらは臨床試験という限られた条件下での知見であり、日常診療の場における関節修復の実態は明らかではない。そこで横浜市立大学の小林幸司氏らは、TNF阻害薬による治療を受けたRA患者84人のX線画像を検討して骨びらんの修復度を観察するとともに、修復と関連する因子をレトロスペクティブに解析。骨びらん修復の成否はDAS28の改善と相関することを示した。研究結果は、11月7日から11日まで米国アトランタで開催されている第74回米国リウマチ学会(ACR2010)において報告した。

  本検討の対象は、米国リウマチ学会のRA分類基準(1987 ACR RA分類基準)を満たし、TNF阻害薬により1年以上の治療が施された患者84人(インフリキシマブ38人、エタネルセプト30人、アダリムマブ16人)。平均年齢は54.3歳、女性比率は90.5%、平均罹病期間は7.4年だった。

  これらの患者のTNF阻害薬治療前後の手関節と足関節のX線画像を、個々の臨床データや撮影日などを伏せて熟練した画像診断医1人が読影し、骨びらん修復の有無を評価した。修復の定義は、(1)破壊された関節の皮質骨の再生、(2)びらんの一部もしくは全体がふさがっている、(3)軟骨下骨硬化と骨棘の形成、のいずれか1つ以上が認められる場合とした。

  その結果、84人中7人(8.3%)の患者で1カ所以上の骨びらんの修復が認められた。修復が認められた患者(修復群;n=7)と修復の認められなかった患者(非修復群;n=77)の年齢、性、罹病期間、登録時のDAS28-CRPなどの背景因子には、有意な差は認められなかった。

  総シャープスコア(平均値)は、非修復群では0.8ポイント悪化、修復群では2.1ポイント改善していた(p<0.01)が、治療前後のDAS28-CRPの変化量(平均値)を比較すると、非修復群の-1.6に対して修復群では-2.5だった(p<0.05)。

  以上の結果から、日常診療においても、TNF阻害薬により疾患活動性が低く制御されれば、骨びらんの修復がもたらされることが示唆された。


2010.11.11

他のTNF阻害薬からインフリキシマブへの切り替えは、約半数の患者で有効

 米テキサス大学Southwestern Medical Center のRoy Fleischmann 氏らは、本年6月の欧州リウマチ学会(EULAR)において、皮下注製剤のTNF阻害薬(アダリムマブ、エタネルセプト)が無効あるいは効果不十分な関節リウマチ(RA)患者の約半数が、静注製剤のインフリキシマブに良好に反応することを示唆するRESTART試験の追跡10週後の成績を報告し、投与経路の異なるTNF阻害薬間の切り替えという治療選択肢の可能性を提示した。試験の追跡データをまとめた同氏らは、インフリキシマブの効果が10週以降も安定して認められ、26週後においても維持されていたことを、11月7日から11日まで米国アトランタで開催されている第74回米国リウマチ学会(ACR 2010)で報告した。

  RESTART試験は、メトトレキサートの併用下でエタネルセプト(ETN)またはアダリムマブ(ADA)による3カ月以上の治療にもかかわらず、効果不十分(DAS28≧3.6、かつ、腫脹関節数≧6、かつ、圧痛関節数≧6)のために、インフリキシマブ(IFX)への切り替えがなされたRA患者を追跡した第IV相試験だ。本試験は日常診療における試験のため、前治療薬の中止後はwash-out期間を経ず、即座にIFX治療が開始された。

  同試験には203人が登録、うち197人のデータが解析可能だった。平均年齢は54歳、平均罹病期間は6.8年、切り替え前のTNF阻害薬の内訳は、ETNが121人(61.4%)、ADAが77人(39.1%)だった(両剤の使用歴があった1人を含む)。

  これらの患者において、IFXへの切り替えの結果、ベースライン時に6.18だったDAS28-ESRは、26週後には平均1.5ポイント改善し(p<0.001 対ベースライン時)、全体の51.8%(前治療薬がETNでは48.3%、ADAでは57.1%)の患者でEULAR基準のModerate/Good responseが得られた。また、ACR20、50、70改善達成率は、それぞれ41.4%、20.4%、8.0%となった。

  腫脹関節数はベースライン時の17.4から9.1へ、圧痛関節数は30.2から17.0へと減少し、ベースライン時に1.35ポイント(平均値)だったHAQは0.22ポイント改善した(すべてp<0.001 対ベースライン時)。

  これに伴い、CDAI (clinical disease activity index)とSDAI(simplified disease activity index)で評価した高疾患活動性(CDAI>22またはSDAI>26)の患者の割合は、約9割(CDAI:94.9%、SDAI:87.8%)から3割程度(CDAI:30.5%、SDAI:26.6%)にまで減少した。また、安全性のプロファイルは従来より報告されたものと同様で、忍容性は良好だった。

  以上の結果より、ETNおよびADAが無効あるいは効果不十分な患者に対するIFXへの切り替えにより、日常臨床の場において約半数の患者で有効性を示し、身体機能の改善効果は少なくとも半年にわたって持続することが明らかになった。


2010.11.12

悪性RA患者では血中の免疫複合体が多く、全身性炎症を増悪している

 関節外症状を来す重症の活動性悪性関節リウマチ(ExRA)の患者では、血液中の免疫複合体濃度が高い。この血中免疫複合体が、TNF産生やリウマトイド因子(RF)の増加を促し、全身性の炎症を増悪させていることが示された。スウェーデンSkane大学病院リウマチ科のCarl Turesson氏らの研究成果で、11月7日から11日まで米国アトランタで開催された米国リウマチ学会(ACR2010)で報告された。

  Turesson氏らは、あらかじめ設定した臨床像に合致するExRA患者35人を対象群に、また、関節外症状などExRAの特徴がなく、ExRA群の各個人と性、年齢、罹患期間が一致する通常のRA患者70人を対照群とした。

  血液中の免疫複合体は、補体を用いたC1q結合法で測定した。また、ポリエチレングリコール(PEG)沈降法で血液成分がない状態の免疫複合体分画を作り、末梢単核球の培養液に加えてTNF産生量を調べた。

  その結果、免疫複合体濃度は、ExRA患者で中央値8.52gEq/mL(四分位範囲:3.63-24.77)、通常のRA患者で4.51 gEq/mL(四分位範囲:1.81-10.45)で、ExRA患者で有意に高かった(p=0.005)。末梢単核球からのTNF産生も、ExRA患者の場合で平均17.7pg/mLだったのに対し、通常RA患者の場合で平均12.1 pg/mLで、有意な差が認められた(p=0.02)。

  免疫複合体濃度とリウマトイド因子(RF)の相関は、ExRA患者、通常RA患者ともに有意だったが、ExRA患者ではより強い相関があった(r=0.62、p=0.001 対 r=0.38、p=0.0017)。一方、ExRA患者では、免疫複合体濃度と抗CCP抗体に有意な相関はみられなかった。

  Turesson氏らはこれらの結果から、重症ExRA患者では血中免疫複合体濃度が高く、それがTNF産生量やRFを介して、全身性炎症の増悪に関与していることを示唆するものだとした。


2010.11.14

発症早期RA患者へのタイトコントロール治療で5割超が寛解を達成

 オランダTwente大学のMarloes Vermeer氏らは、日常臨床において発症1年以内の関節リウマチ(RA)患者を対象に、臨床的寛解を目標として適切に薬剤を切り替えていく、最新の治療戦略(tight control、treatment RA to target)を実施した結果、1年間のフォローアップ患者で55.1%、2年間のフォローアップ患者で64.3%という高い寛解率が実現したことを明らかにした。結果は11月7日から11日まで米国アトランタで開催された第74回米国リウマチ学会(ACR 2010)で報告した。

  本研究は、オランダの6施設が参加した前向き観察研究DREAM(the Dutch Rheumatoid Arthritis Monitoring)の一環。対象は18歳以上で発症1年未満、ベースラインのDAS28が2.6以上、かつ抗リウマチ薬やステロイド薬の投与を受けていないRA患者を登録した。

  治療戦略は、MTX15mg/週で開始し、定期的にDAS28を評価して、疾患活動性のコントロールが不十分の場合には、MTXの増量、スルファサラジンの併用と増量、スルファサラジンからTNF阻害薬(アダリムマブ)への切り替え、アダリムマブ投与回数の増加、さらにエタネルセプトやインフリキシマブへの切り替えと、治療を順次増強するものとした。

  主要評価項目はDAS28、EULAR反応基準、修正ACR基準に基づく寛解達成率で、初回寛解までの期間と寛解継続率(DAS28<2.6の6カ月以上継続)についても評価した。

  本研究には2006年から2009年に534人が登録されている。そのうち1年間のフォローアップ結果が得られたのは392人、2年間のデータが得られたのは210人だった。1年フォローアップが完了した392人の平均年齢は57.8歳、女性が63.5%、RA症状の持続期間(中央値)は14.5カ月、DAS28(平均値)は5.0だった。

  治療の結果、寛解達成率は1年フォローアップ群で55.1%、2年フォローアップ群では64.3%だった。EULAR反応基準のgood達成率はそれぞれ64.8%、75.7%、修正ACR寛解達成率はそれぞれ45.1%、54.4%だった。

  2年フォローアップ群の2年後のRA治療は、MTX単独が約40%、MTXとスルファサラジンの併用が約12%、MTXと生物学的製剤の併用が約22%で、対象の約15%は治療薬を必要としなかった。この2年フォローアップ群では、約60%の127人が6カ月以上引き続いてDAS<2.6を実現でき、寛解継続率は約60%となった。

  以上の結果から日常臨床の場でも、発症1年以内の超早期RA患者の寛解達成は現実的なゴールになることが示された。Vermeer氏は、「疾患活動性を厳格にコントロールすることで、早期から高率で寛解を実現できる。患者の大半は通常の抗リウマチ薬治療で寛解を達成できた」と述べ、「超早期RA患者の治療では寛解を目標とすべきだ」と強調した。


記事提供:日経メディカル別冊編集