リウマチ新薬に学会が懸念表明
トファシチニブの適正使用を強く求める

 日本リウマチ学会の宮坂信之理事長は、関節リウマチの新薬で、JAK3阻害薬「トファシチニブクエン酸塩(商品名ゼルヤンツ錠)」が3月25日に製造販売承認を得たことを受け、声明を発表した。学会は、本剤による重篤感染症や発癌のリスクを懸念しており、適正使用がなされるかどうか、厳しくモニタリングしていく考えを表明している。

 トファシチニブに関しては、米国食品薬品局(FDA)も「用量依存的な重篤感染症、長期暴露時の発癌、免疫抑制に伴うリンパ増殖性疾患のリスクがある」と注意を促している。学会が懸念しているのは、「安全性に問題のある薬剤を、米国よりも広い適用、同量で承認すること」「経口薬で処方しやすく、使用施設や医師の限定が難しいこと」「従来の市販後全例調査と同じ方法では発癌リスクが評価しづらいこと」などの点。2月20日付けで製造販売会社のファイザーに慎重な対応を求める要望書を提出していた。

 この要望に対してファイザーは、学会の主な懸念4点につきどう対応するかを詳細に説明した文書を3月14日付けで返信している。他の抗リウマチ薬にはない「メトトレキサートをはじめとする少なくとも1剤による適切な治療でも症状が残る場合」という条件を設定したことを説明。また、添付文書の警告欄で「重篤な感染症や発癌が発現し、致死的な転帰に至った症例がある」と記載する。全例調査期間の処方は日本リウマチ学会専門医などに限定し、流通管理品目として納入制限を行う考えも明らかにした。また、全例調査は4000人を対象に3年にわたり実施。2000人の対象群を設けて比較調査を行い、投与中止例についても3年間の追跡調査を行うという。

 学会のホームページで、学会の要望書とファイザーの返書の全文を読むことができる。

【関連リンク】
トファシチニブについて

2013年4月22日 提供:日本リウマチ学会