White Family dental-site



プラーク形成に重要なデキストラン多糖体は、
βグルカンを含む?
口腔内真菌症と歯周病の関連は?

深在性真菌症疑い、βグルカン検査は必須
偽陽性は依然あるがどう判断?


β-D-グルカン(βグルカン)検査が深在性真菌症の診断でどこまで有用か議論がある。 偽陽性となる例があり、無用な抗真菌薬の処方につながるとの指摘もある。 重要な検査で必須か、ほかの診断方法を選択すべきで必須とまでは言えないか。

βグルカン検査は必須
「βグルカンは偽陽性が多いとの声があるが、重要な参考値。積極的に使いこなしていくべきだ」。昭和大学臨床感染症学准教授の吉田耕一郎氏はこう説明する。

繰り返し行われる汎用検査

 βグルカンは日本で開発された検査。人体には本来なく、2大真菌のカンジダ菌やアスペルギルス菌などの真菌が有している場合が多い。血中に存在していれば、真菌感染の可能性が高いと判断できる。

 保険点数は220点で、一般的な検査項目の中では検査料は高い。国内では抗菌薬が効かない不明熱など、真菌症を疑う場合に、スクリーニングのため繰り返し検査が実施される。吉田氏は、「深在性心筋症と疑われたケースであれば、βグルカン値の測定は必須なのではないか」と考えている。幅広い真菌をスクリーニングできる点で臨床上は有用との見方。

 βグルカンの値が高くなるのは、2大真菌症と言えるカンジダ症や肺アスペルギルス症のほか、ニューモシスチス肺炎、輸入真菌症。原因となる真菌がβグルカンを有し、侵襲性病変を作る疾患で、βグルカンが血漿中に出て検出される。

 一方で、侵襲性の病変を作らない場合は、真菌症でもβグルカンは検出されない。口腔咽頭や食道のカンジダ症のほか、非侵襲性のないアスペルギローマが該当する。また侵襲性のある例でも、接合菌症は真菌がβグルカンを持たないので検出されず、クリプトコッカス症でもβグルカンを持つものの、莢膜のために血中に出てこない。

偽陽性は見抜ける

 問題は、偽陽性のケースがあること。感度は80%前後で、特異度は90%強。キットは改善が進んでいるが、偽陽性は依然として存在する。偽陽性になるのは、真菌由来のβグルカンが血中になく、ほかの物質に反応するケースが典型的だ。

 例えば、βグルカンと同様な多糖類のセルロースに反応する場合が知られている。セルロース膜を利用した材料で血液透析を受けている患者に、βグルカン検査で陽性と判定されてしまう。また、手術の際に、多くのガーゼを使用されると偽陽性が出ることもある。さらに、原因不明の非特異的な反応で偽陽性となる場合もある。

 吉田氏は、「βグルカン検査で偽陽性は確かに見られる。過剰診断があるから直ちに有害、無用と判断できない」と話す。数字で判定するが、これだけで診断しようとすれば「使えない」となってしまうという。

 「そもそも深在性真菌症が問題となりやすいのは免疫機能が落ちている患者で、そのことを念頭に置くべき」と吉田氏は話す。元気な人でも、輸入真菌症にかかったり、手術後にカンジダ症にかかったりすることはある。ただ、こうしたケースは例外的。「普段元気な人が肺炎になって、その原因が真菌と言うケースは少ない」(吉田氏)。

 「リスクが高いのは、外科手術後のほか、白血病の罹患、移植の実施、重症熱や重症膵炎の罹患、肺の傷害、免疫抑制薬や抗癌剤の服用者、エイズ罹患者、何らかの理由で好中球がない状態など。こうした前提を踏まえて、真菌症かどうかを判断すべき」と吉田氏は説明する。やみくもにβグルカン検査を実施して、値が高いからと抗真菌薬を処方するのは早計という。

早期診断に有用な手段

 「真菌症のリスクが高い人に対して、βグルカンを1週間に1回、2回と複数回測定し、追跡するとよい」と吉田氏は話す。例えば、術後の患者は好中球が減少する。βグルカンを継続的に使っていれば、真菌による発熱があっても、症状が重くなる前に診断して、適切な治療に移ることができる。早期診断は大切という。

 吉田氏は、「βグルカン検査は、有用な所見を集めて、真菌疑いの例をピックアップし、治療対象を取捨選択する上で有用。この患者には検査を使っていく、使えないと見分けるのが重要で、医師の力がそこで問われる」と話す。

2011.01.20 記事提供:m3.com