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東北地方太平洋沖地震の現状報告と
ご遺体の身元確認への出動要請について

■東北地方太平洋沖地震の現状報告とご遺体の身元確認への出動要請について
  日本歯科医師会会長 大久保 満男

1.現状報告
  今回の地震において被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。また不
幸にしてお亡くなりになられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
  地震発生直後に本会に設置した災害対策本部は、土・日曜日も情報収集に全
力をあげておりますが、時間が経つにつれ極めて厳しい状祝が判明しつつあり
ます。
  岩手県歯科医師会は、土曜日早朝より8組のチームを最も被害の大きかった
宮古と陸前高田方面に派遣し、身元確認作業を開始し、その報告が21時に本対
策本部に入りました。
  それによれば、宮古市の入り口近くの旅館に30体余のご遺体が安置され、そ
の口腔内所見を終わりましたが、その先は一歩も市内に入ることが出来ず、陸
前高田にいたっては足を踏み入れることも不可能な状態だったということでし
た。宮城県歯科医師会と福島県歯科医師会もすでに身元確認作業を開始してい
ると思います。
  本会対策本部は、政府の対策本部とも土曜日より連絡を取っており、身元確
認のための派遣が可能かの打診がありました。西村まさみ議員が政府対策本部
のメンバーとなり、さらに与野党歯科議員も、政府に緊急歯科医療と身元確認
作業について提言をしております。私は細野豪志首相補佐官と連絡を取り合い、
被災地の歯科医師会の行動と今後の本会の行動予定を伝えてあります。
  これらの情報交換の中で、土曜日の夜の時点で、死者は報道されている数を
超え、一万名を超えるのではという予測が伝えられ、われわれがかつて経験の
ない身元確認の作業の極めて厳しい状況を覚悟いたしました。
  このように、ご遺体の身元確認は、われわれの立てた災害時のシミュレー
ションをはるかに凌駕する、想像を絶する困難な事態に直面すると考えられま
す。しかし、どんなに困難であっても、人としての最後のアイデンティティー
であるご遺体の身元確認は、われわれ歯科医の責務であることを改めてすべて
の会員とともに確認したいと存じます。それを果たすために全力を挙げる覚悟
ですので、ご協力をお願い申し上げます。

2.身元確認への会員派遣についてのお願い
  先に記しましたように、会員の現地への派遣について、政府と話し合いを続
けてまいりましたが、日曜日の18時15分に岩手県及び宮城県の要請を受けて警
察庁より正式に本会に派遣要請がありました。しかし現地の受け入れ態勢は十
分ではなく、現状では、まず11名(岩手県7名、宮城県4名)の要請があり、こ
の人員の確保はすでにつき、リストを警察庁に送りました。警察庁での移動手
段の決定があれば、遅くとも明朝には到着の予定です。
  しかし、今後、発見されるご遺体数が急速に増加すれば、派遣要請の規模も
数も増加すると考えられます。
  以上をご理解いただき、以下のことについて、どうかよろしくご協力をお願
い申し上げます。
  このような事態に事前に備えるために、貴会において、派遣可能な会員の選
択をして、本会にご連絡いただきますようにお願い申し上げます。
  なお、その中で、平素より警察歯科医として確認作業の経験の深い会員がい
らしたならば、それもあわせてご連絡いただきたいと存じます。
  ただし、現地への交通手段が未だありませんので、実際の派遣場所や日時は、
警察庁や現地からの要請を受けて本会対策本部から正式にご連絡いたしますの
でよろしくお願い申し上げます。会員の先生方には、ご多忙の中での要請は、
誠に恐縮に存じますが、非常事態としてご理解を賜りますように、重ねてお願
い申し上げます。
  最後に、現時点で、最も被害の大きい、岩手、宮城、福島の各県歯会員、ご
家族、スタッフの安否不明者が多数おられます。しかし最後まで諦めることな
く、生存を信じて、日本歯科医師会全ての会員の先生方とともに祈っていきた
いと存じます。
  今回の事態は、われわれ歯科医師会会員の連帯と絆の強さと、非常時におけ
るわれわれの姿勢や精神のあり方が問われています。
  執行部は、全会員とともに、今後予測される極めて困難な事態を乗り越える
べく、死力を尽くしてまいります。
  本文を作成している今も、想像を超える困難な状況の中で、自らも被災者で
ありながら、歯科医師としての責務を果たそうと、被災地にあって黙々と確認
作業を続けておられるであろう会員の姿が目に浮かび、胸の熱くなる思いを禁
じえません。
  会長として、このような仲間と共に居ることができることに感謝し、ただた
だ頭を下げるばかりであります。
  どうか、気持ちを一つにして、未曽有の非常事態における被災者の救援と身
元確認に力を注いでいただくことをお願いし、報告とお願いといたします。
  なお可能な限り、本文を郡市区歯科医師会と会員諸先生方にお伝えいただき
たくお願い申し上げます。

  平成23年3月14日9時

■日歯、対策本部設置し対応協議
  会員診療所の被害は甚大

  三陸沖を震源に日本観測史上最大規模のマグニチュード(M)9.0を記録し
た東北地方太平洋沖地震が3月11日午後2時46分頃に発生したことを受けて日歯
は同日、災害対策本部(本部長:大久保満男会長)を設置し、以後、14日〜16
日にかけて岩手、宮城、福島各県に犠牲者の身元確認のための会員歯科医師等
を派遣したのを始め、都道府県歯を通じて各種対応や情報の提供を随時行うな
ど、支援策等の協議を重ねるとともに被災地や被災者等への支援等を果たすべ
く、日夜対応協議を続けている。15日現在、会員の被災状況は現地間で連絡を
取ることも困難な状況にあるため具体的には不明だが、分かっているだけでも
多くの診療所が全壊・全流出しているなど、被害は東日本の広範囲に及んでい
る。
  日歯は、東北地方太平洋沖地震発生後、北海道・東北地区の歯科医師会を中
心に被災状況の確認に努め、午後5時30分に災害対策本部を設置。各歯科医師
会や政府、警察庁、自衛隊などとの相互連絡を開始した。
  翌12日には第1回会議を開催した。被災地宛にお見舞いの文書を送信すると
ともに、被災状況確認の文書を被災地歯科医師会に発出。会員の安否や診療所
の稼働状況、行政・警察からの出動要請などを午前9時、午後3時、午後9時の3
回に分けてFAXを通じて報告するよう依頼した。
  また、同日には、被災者の歯科診療の受診時における協力依頼を都道府県歯
に発出。被保険者証等を紛失、あるいは自宅等に残したまま避難したために提
示できない可能性があることから、その場合は本人確認で保険診療の扱いとな
る旨発信した。氏名、生年月日の確認を行い、被用者保険の被保険者は事業所
名を、国民健康保険及び後期高齢者医療制度の被保険者は住所を申し立てるこ
とで受診できる取り扱いとなる。

  ◎岩手、宮城、福島に身元確認協力者を派遣
   都道府県歯にはリストアップ要請

  14日には、13日に岩手県警から、14日に宮城、福島、茨城の各県警から当該
歯科医師会に身元不明死者の確認作業に対する出動要請が発せられたことを受
けて、警察庁から日歯に正式に派遣が要請された。ただ、現地の受け入れ態勢
が十分に整っていないため、岩手県7名、宮城県4名の11名の派遣要請となっ
た。
  派遣要請を受けて日歯は同日、関東甲信越の歯科医師会を中心に協力を呼び
かけたが、程なく千葉県、東京都、神奈川県、新潟県の各歯科医師会から大学
関係者を含めて15名の推薦が寄せられ、被災地への派遣リストを警察庁に送っ
た。15名のうち岩手県と宮城県に向かう会員及び大学関係者は14日に、福島県
には16日にそれぞれ出発し、身元確認作業に当たっている。
  また、14日時点での現状報告を行うとともに、身元確認の出動要請を全国の
都道府県歯にも依頼。特に身元確認への会員派遣については、警察歯科医とし
て確認作業の経験が深い会員を含めた派遣可能な会員のリストアップを求めた。
全国からは15日現在、合計64名の協力が寄せられている。
  身元確認についてはこの他、各大学の法歯学チームや地区歯の有志会員等も
作業に当たっており、岩手県では12日に8組のチームを編成して、宮古市や久
慈市、陸前高田市など6〜8カ所で、宮城県は12日に2カ所で、13日に3カ所、
福島県は14日に相馬市でそれぞれ行っている(15日現在)。
  ただ、足を踏み入れるのも困難な状況にあり、現地から引き返して待機して
いる状況に置かれているところもある。
  大久保会長はリストアップを求めるに際し、「今回の事態は、会員の連帯と
絆の強さ、非常時における姿勢や精神が問われている。執行部は全会員ととも
に今後予測される極めて困難な事態を乗り越えるべく、死力を尽くす」との決
意を示している。
  14日はその他、厚労省からの連絡を受けて、東京電力による輪番停電(計画
停電)に係る対応を発出。医療機関も例外なく対象となることから、東京、
茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、神奈川、山梨、静岡の1都8県において患者の
治療に支障を来さないよう対応を求めた。

  ◎各1千万円の見舞金送金へ

  15日には、災害対策本部の第3回会議を開催。岩手、宮城、福島各県歯に当
座の見舞金として1千万円ずつ送金することを決めた他、▽保険診療・緊急受
診等への対応▽身元確認作業への現状と今後の方向と、出動者の保険加入、器
材不足、緊急通行車両確認標章への対応▽病院歯科や歯科診療所の稼働状況と
復旧対策の確認▽避難所における歯科保健対策▽メーリングリストの設置―な
どについて協議した。
  また、一連の経過を都道府県歯に連絡。被災地における身元確認作業状況を
始め、▽器材不足、宿泊・食事の不便さなどが訴えられている▽日歯として器
材の調達や身元確認出動者の保険加入及び被災県歯への助成や支援の準備を行っ
ている▽岩手、宮城、福島各県への身元確認作業について、各県警から10名の
追加(計21名)派遣要請があった▽避難所への保健対策や医療対策に係る自治
体からの各歯科医師会への要請は現時点ではない▽会員の安否と被災状況は取
りまとめて後日報告する▽義援金の窓口を本日開設した―などを報告した。
  その他、緊急通行車両確認標章の発給等について都道府県歯に連絡。日歯が
移動診療車等の車両の派遣を依頼し、被災地で訪問歯科診療などを行うに際し
ては、15日付の厚労省の事務連絡を最寄りの警察署に提示して緊急通行車両確
認標章の発給を求め、検問等で提示するよう依頼した。
  東北電力による計画停電に係る対応については、厚労省からの連絡を受けて
発出。青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島、新潟各県での計画停電の実施が
想定されることに鑑み、周知を図った。
  ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
  東北地方太平洋沖地震は、第167回代議員会及び第122回通常総会の終了後間
もない時間に発生したこともあり、被災地に会員や家族を残す代議員を始め、
多くの代議員や関係者が帰路に着けず、また、家族や会員の安否確認の連絡も
ままならない状況に置かれていた。
  箱崎守男岩手県歯会長、細谷仁憲宮城県歯会長、金子振福島県歯会長も東京
滞在を余儀なくされ、現地の情報収集等に努めつつ、災害対策本部の第2回会
議まで参画した後、地震発生2日後の13日にようやく帰路に着かれた。

■身元確認への派遣など説明
  日歯が緊急記者会見

  日歯は3月14日、全国各紙や放送各局等を交えて厚労省及び歯科医師会館で
緊急記者会見を開催し、地震発生から約3時間後に災害対策本部を設置したこ
とや、身元確認作業として警察庁から岩手県7名、宮城県4名の11名の派遣要請
を受けて、両県に派遣する予定であることを説明した。また、今後の身元不明
者の大幅な増加が見込まれることに鑑み、身元確認作業への派遣可能な会員の
登録を都道府県歯に依頼したことを報告した。
  会見に臨んだ大久保満男会長は、津波に流されて遺体となっていることが多
い状況を踏まえ、カルテとの照合等が困難になり、身元確認には長期間を要す
るとの見解を披露。また、各県警への身元届出の際、生前に通っていた歯科医
院を伝えることでカルテを取り寄せて照合できる旨示し、その周知を呼びかけ
た。

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◆2◇ お知らせと協力のお願い ◇◆◇◆
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■ご遺体の身元確認作業への協力のお願い

  日歯は、3月11日に東北地方太平洋沖地震が発生したことを受けまして、身
元確認作業へのご協力を募っています。ご所属の都道府県歯科医師会にご連絡
の上、登録していただきますようよろしくお願いします。
  派遣期間は1週間〜10日程度となります。また、警察歯科医として確認作業
の経験が深い場合は、その旨ご連絡ください。
  実際の派遣場所や日時につきましては、警察庁や現地からの要請を受けて日
歯から連絡します。また、移動手段は警察庁が手配します。
  身元確認作業で必要となる器具・機材は次の通りですが、日頃使用されてい
る器具・機材を持参いただいても差し支えありません。

◇器具・機材一覧
・口腔内検査器具
  デンタルミラー/ピンセット/深針/歯ブラシ/ガーゼ/ゴム手袋/開口器/
ペンライト
・筆記具、用紙
  死後、生前記録用紙(デンタルチャート)/メモ用紙/ボールペン、鉛筆、
消しゴム
・口腔内写真撮影用機材
  口腔内写真用カメラ一式/口角鈎/口腔内写真用ミラー/フィルム/スケール
・エックス線写真撮影用機材(なくても可)
・その他
  タオル/ティッシュペーパー/手洗い用石鹸/防寒用具
※以上、全てが必要ではありませんが、持参できるものは持参してください。
※歯科医師は2名チームで作業に当たります。
※「身元確認マニュアル」等が必要な場合は日本歯科医師会庶務課
(TEL:03-3262-9321)までご連絡ください。

■東北地方太平洋沖地震災害対策本部の連絡先のご案内

  日歯は、東北地方太平洋沖地震災害対策本部の専用メールアドレスを設けて
います。
  被災地及び被災者の支援や、身元確認作業等の支援業務の参考に資するため、
救援物資や被災現場の状況、身元確認協力会員の声などを下記までお寄せいた
だきますようよろしくお願いします。
  E-mail: saigai@jda.or.jp
  TEL:03-3262-9321(日本歯科医師会庶務課)
  FAX:03-3262-9885

■義援金募金のお願い

  東北地方太平洋沖地震の被災者に対する支援のため、義援金の受け付けをい
たします。
  下記要領で受け付けていますので、会員の皆様のご協力をよろしくお願いい
たします。

○募金口座
  銀行名:三菱東京UFJ銀行 市ヶ谷支店(店番014)
  口座番号:普通預金 0089492
  口座名:日本歯科医師会 東北地方太平洋沖地震 義援金口 代表 大久保満男
      (ニホンシカイシカイ トウホクチホウタイヘイヨウオキジシン
       ギエンキンクチ ダイヒョウ オオクボミツオ)
○募金の期間
  平成23年5月31日まで

2011.03.14 記事提供:日歯メールマガジン