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スペシャルインタビュー:患者さんにお任せしない。定期健診


予防・メンテナンスに関してのお考えを教え下さい。
    
      定期健診(チェックアップ&クリーニング)が最も重要だと考えています。患者さん各個人にお任せするのではなく、クリニックでの定期健診を中心として組み立てていく、ということですね。
    
      40年の臨床経験から、自分たちのやることにどうしても限界を感じています。私は大学では補綴科にいて、一応一生懸命勉強しました。それでも何年かで補綴物や歯が壊れてくる。接着に関しても同じで、接着の技術を使ってなるたけ削らないようにして修復や補綴を行う。確かにこれはこれで一時的には間違いなくいいのだけれど、数年絶ってくると外れてしまって、またそこからカリエスになったりする。歯周病に関しても、こうしなさい、ああしなさい、歯石取りなさい、で、まぁ所詮対症療法ですよね。こんなことをやっていても結局根本的な治療にはならないんです。
    
      虫歯は治らないし治せない。私はこれをはっきりと患者さんに伝えています。歯周病も同じように、罹ってしまえばそう簡単に元に戻ってくるわけでもないですし。じゃあどうしたらいいかってことを考えれば、結局は病気にさせないことが一番大切でしょってことを力説するんです。それでも治療が必要となれば、やはりすべてにおいてミニマムインターベーションが基本ですね。健全な歯は削らないだとか、あるいは患者さんが歯を抜きたくないと思ったら、本来抜いたほうがよいと思われる歯でも抜かないとか。あるいは無理にでも神経を残すとかする。そういうような処置っていうのは、患者さんは喜ぶかもしれないけれど、無理な処置をしているわけですよね。無理したものっていうのは、放置すると駄目なわけです。定期的に来て僕がきちんと経過を診るということを前提にしないと駄目。そういう少し無理をした処置でも3〜6か月で定期健診に来てチェックを入れることで、少し危なそうだからよく歯磨きをしましょうねとか、手当てをしましょうとか、そういうことが言えるんです。
    
      患者さんに今までの歯科医療のリスクをいろいろと話してあげて、結局何が一番良いかってっていうと、私の何十年の経験から考えると、みなさまがともかく定期的に来てくれるということが一番大切だと力説するんです。他の予防を重点的に行っている先生方から見れば違うって言われればそうかもしれないのだけれど、各個人に予防のプログラムを任せたり、毎日のメンテナンスだとかをお任せするっていうのは、結構難しいのでね。こうしたら病気にならないだとか言ったって、なかなか皆さんその通りには実行できませんし。歯磨きだって、あんなつまらない作業を毎日繰り返すのは難しいですよ(笑)。
    
 確かに、毎日きっちりと歯磨きを行うのは大変ですね。
     
      よく衛生士さんが、「一日10分間くらいはやりなさい」なんて言いますけど、そんなに面白くない作業を10分もやるってことは苦痛ですよね。そこで私は普段はそこそこに磨いてくれれば良いから、だから必ず私のところに3か月に一回ぐらいいらっしゃいとお伝えします。最低でも半年に一回はいらっしゃいと。これに関しては、私はかなり強く言う。それが出来ないのならば、この歯は抜かなきゃいけません、この神経は取らなきゃいけません。あるいは、もっと削って被せなきゃいけませんといいますね。つまり、今までの治療方法しか取れませんよと伝える。
    
      一番大切なことは来てもらうこと。普段は何も特別な事はしなくてもいいですよ、と言ってあげる。そうすると何となく、患者さんもホっとするんですよ。歯磨きの仕方が悪いとか、日常の生活習慣がよくないとか、酒を飲むなとか何とかと言われるよりはずっと楽になるんですね。それで定期的にいらっしゃっているうちに徐々に患者さんとのコミュニケーションが取れてくれば、今度は間食がいけないんですよとか、夕食をとったのに寝る前に何か食べるのがいけないんですよとか、いろいろと注意をすることができるんですよね。定期健診に一回も来ていないような時に言うと、まだコミュニケーションがとれてないので、患者さんの気持ちの中ではなんか怒られてるとか、叱られてるとか、そんな意識が働くんですよね。だから、歯科医院にあまり来たくなくなってしまう。
    
      どうしたら虫歯になるかとか、どうしたら歯周病になるかっていうのは、もちろん予防法も治療法も含めて手の内はたくさん持っているんだけど、定期健診っていうローテーションが回転する前はあまり余計なことは言わないし、手も出さない。慣れてくると逆に今度は患者さんの方が知りたがるんですよ。「先生、みがき方は?」なんて言うから「え? 興味あるの!?」なんて。
    
定期健診、チェックアップ&クリーニングはどの様な形でされていますか。
    
      私の場合は一応ローテーションとして3か月から半年の間に一回。中には毎月っていう患者さんもいます。それはむしろ患者さんの希望から行うのですけど、その時にやることは、私がまず口腔内を大雑把に診査する。あとは患者さんが何か訴えてることはないか、気にしていることはないかを判断してやることを決めます。私の診査はだいたい10分すると終わります。世間話をしつつ、じゃあ診ますねとか言って。「お、綺麗ですね、バッチリですね」なんていって、とくに問題なければ衛生士さんにクリーニングしてもらう。
    
      クリーニングを衛生士さんにやってもらうと、衛生士さんはクリーニングしながら歯も徹底的に見て報告してくれます。みがき方が悪いだとか、あるいは隠れたところに虫歯があるとかね。彼女たちが30分から40分くらいかけてやったことを報告してくれるわけです。最後に私が患者さんと向き合って、ここをこうやったらとか話して、あるいはう蝕に関しては私が診て、手を出すう蝕か、手を出さなくて良いう蝕かを判断する。衛生士さんが指摘してくれているう蝕っていうのはいわゆるC0かC1になったくらいのやつなんだけど、これも患者さんに訊くんです、「削って詰めます?」って。削るってことはやっぱり嫌なわけで、患者さんは「しなくていいんですか」っておっしゃいます。きちっと定期的に来て下さるならば大丈夫です、削る必要はありませんとお伝えします。そんなわけで、私の予防・メンテナンスってどのようにって言われれば、「定期健診」がすべてですというのが答えです。
    
電動歯ブラシを臨床においてどの様に活用したら良いと思われますか
    
      深川優子先生(第一生命歯科診療所主任歯科衛生士)のプロフェッショナル・デイリー・ブラッシング、あれはとても良いアイディアだと思いますよ。歯磨きなんかこんな面倒くさいものはしなくていい。私のところでやってあげるから、っていうのが基本で。それに対しては電動歯ブラシを使ったらいいっていうのが深川さんのアイディア。これは素晴らしい。
    
プロフェッショナル・デイリー・ブラッシングとは?
    
      予約もしなくていい。自分の好きな時に、自分の換えブラシだけ持ってクリニックに行くと歯科衛生士さんが磨いてくれる。プリペードカードを使って一回の料金を安価に設定して。時間も10分か15分間くらい。その快適さを知った患者さんは、電動歯ブラシを自分で買うかもしれないし、歯科医院に来るのが楽しいという雰囲気になれば一歩進んだPMTCにも進んでくるっていう話に繋がるわけで。
    
「電動歯ブラシだと、怖くない」
    
      電動歯ブラシが、とても優れているっていう言い方はなかなかし難いんですよね。私がエンジンに回転ブラシをつけてやればね、もっとキレイにできる。でも深川さんが良いこと見つけてくれたのは、患者さんが怖くなく来院するってこと。機械じゃないから。これはとってもいいことじゃないかなと。まさしくケアだけの患者さんっていうことで衛生士さんの裁量でやってもらえばいい。そういうことをやると電動歯ブラシってすごく有効になってくる。
    
ブラウンOral-Bに関してお教え下さい。   
    
      私も使ってるんだけど、ふと思ったのはね、電動歯ブラシに対して、最初は普通の歯ブラシの面倒臭さを補うもの、あるいはスピードが出て早くできるものという風にとらえてたの。それはあくまでも普通の歯ブラシを使って歯磨きをするという、普通の歯ブラシに追従するだけでただ単に便利にしただけでしかないわけね。でも先端を丸型にしたという特徴。これは人間が目的地に到達する行動に例えるなら、最初は歩いているのを駆け足をする進歩があって、その後は馬のように足の早い動物を利用する。現在は車を使って移動するようになる。この行為の変遷を見ていると、究極的に辿りついたのは決して人間が走る足の動きを模したものではないわけですね。そう考えると現時点の電動歯ブラシというのは、普通の手用歯磨きに追従した進歩ではなくて、電動歯ブラシ独自の新たな道を歩み始めているんじゃないかなと思ったわけです。そうすると、なるほど丸形っていうのも良いのかなって思いました。それは普通の歯ブラシに追従してそれを改良して良いものを出そうっていうコンセプトではなくて、口の中の汚れを取るための最良の行為を考えたら丸形が良かったという結論にたどり着いたんでしょうね。電動歯ブラシを使って何が良いって感じ方としては、歯がツルツルになって、これが一番おぉやったな、取ってるなって感じがするわけ。歯磨きをした実感が得られるのは重要だよね。
 10年間使った後が問題ですよね???
WFは想う

    
※「健診」・・・健康な人を診るという意味で使用しております。
    (インタビュアー:DW編集部 今泉)

 

2012年1月31日