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パキスタン、路上で「歯科治療」 無資格でも市民に需要

 虫歯が痛い。でも歯医者にかかる金はない。生活の苦しい市民が多いパキスタンで、医師資格のない自称「歯科医」が路上で「治療」を行っている。保健当局による取り締まりを物ともせず、安い費用で患者の"ニーズ"に応えている。

 「ここなら本物の歯科医と同じぐらい良い治療が受けられる。虫歯が痛むたびに来ているよ」。首都近郊のラワルピンディの路上。歯の検査を受けにきた国家公務員バシール・カーンさん(40)は笑顔で語った。

 歩道に広げた自前の器具で診察したのはアブドゥル・ワヒドさん(57)。歯科医の資格を持たずに路上で開業し30年になるベテランだ。治療後に一度も患者からクレームを受けたことがないのが自慢だという。

 ワヒドさんは「貧しい人の歯を治して、感謝してもらえるのは幸せだ」と胸を張る。費用は歯石除去が15パキスタンルピー(約13円)で、虫歯を抜くのは200パキスタンルピー。一方、正規の歯科医の治療は最低でも2千パキスタンルピーは掛かる。

 「最初は師匠から治療の仕方を習った。師匠も医師免許は持っていなかったけどね」と包み隠さず語るワヒドさん。地元保健当局のダニエル・ファルーク氏は無資格医療を取り締まり、約5千パキスタンルピーの罰金を科しているが「いくらやってもきりがない」とあきらめ顔だ。同様の「歯科医」は国内の大半の都市にいるという。

 開業して15年というモハマド・パルビズさん(42)は8歳の長男に手ほどきを始めた。「私も父から治療方法を習った。お金がなくて息子には学校に行かせてやることもできない。早く技術を教えて独り立ちさせたい」(ラワルピンディ共同)


2012年5月18日 提供:共同通信社