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インプラント 治療・歯科、口腔外科 コツコツ健老塾

コツコツ健老塾:インプラント 治療・歯科、口腔外科

 ◇手術で人工歯埋め込み

 たくあんをぽりぽりかじったり、ステーキをほおばったり、おいしいものを食べて人生を楽しむには、歯の健康が欠かせない。しかし、年を取るほど歯の抜ける人が増え、国の調査では60代で8割以上の人が歯を失っている。歯が抜けた状態が続くと、食べ物がきちんとかめないだけでなく、歯並びや顔の形が変わったり、虫歯や歯周病などの悪影響が出てくる。抜けた部分を補うため、手術で金属をあごの骨に埋め込んで人工の歯を取り付けるのがインプラント治療だ。固いものでも食べられるようになる半面、さまざまなトラブルも報告されており、メリットとデメリットをよく理解してから治療することが重要だ。

 ◇1本30万〜50万円

 厚生労働省が昨年公表した歯科疾患実態調査によると、60〜64歳で自分の歯が1本以上抜けている人は83%を占め、失った歯の本数は1人平均5・9本。多くの人が年をとると歯が抜け、治療を必要としていることがわかる。

歯を失った時、治療には大きく分けて三つの選択肢がある。一つは入れ歯で、比較的短期間で治療ができ、取り外して洗浄することが可能だ。だがかむ力が弱くなるうえ、異物感も大きく、入れ歯を支える歯に負担がかかる。二つめが「ブリッジ」と呼ばれる治療法だ。抜けた部分の両隣の歯を利用して、人工の歯(ブリッジ)をかぶせる。かむ力は回復し、見た目もきれいだが、健康な両隣の歯を削らねばならず、削った歯が虫歯になる恐れがある。三つめがインプラント治療だ。

インプラント治療は、骨と結合しやすい性質の金属「チタン」を手術であごの骨に埋め込んで固定し、これを土台にして人工の白い歯をつけて、かみ合わせや歯並びを回復させる。残っている歯に負担をかけず、見た目もきれいなうえ、固いものでも食べられるようになるのが特徴だ。メリットは大きいが、体に人工物を埋め込むため治療後は定期的な清掃や検診が欠かせない。ほとんどが保険のきかない自由診療のため、1本あたり30万〜50万円の費用がかかる。

◇治療後トラブルも

この治療について特に注意が必要なのは、外科手術を伴うため、骨の中にある神経や血管を傷つけるなどのリスクがあることだ。日本顎(がく)顔面インプラント学会が大学病院など全国の79カ所を対象に行った調査(回答率94%)では、インプラント治療を受けた後に再治療が必要になった重い医療トラブルは昨年までの3年間で421件あった。このうち神経を傷つけてしびれやまひが残ったケースが158件と4割近く、上あごの骨をインプラントが突き抜けた例も63件(15%)あった。同学会の瀬戸〓一(かんいち)理事長は「手術の成功率は極めて高いが、リスクはゼロではない。治療後に不具合を感じたら、すぐに病院の歯科口腔(こうくう)外科に相談することをすすめます」と話す。

この治療が適さない人もいる。あごの骨の量が少なかったり質が低下しているとインプラントを固定しにくい。東京歯科大の矢島安朝教授(口腔インプラント学)は「治療がうまくいくかは患者の健康状態や持病の影響が大きく、高齢者は特に注意が必要」と話す。糖尿病や骨粗しょう症、貧血があると傷の治りが悪くなるなど、治療の失敗につながりやすい。同大千葉病院では手術前に、骨の状態を立体的に見るCTスキャンや、患者の全身状態を調べる尿と唾液、血液検査を行っている。持病があっても病状を管理すれば、多くの人はインプラント治療を受けることが可能になるという。

◇医師選びが大事

 日本歯科医学会の調査では歯科診療所の手術前の検査や設備にはばらつきがあった。どういう観点で選べばよいのか。矢島教授は「一方的にインプラントを勧める医師はやめた方がよい。入れ歯やブリッジで満足できる患者もたくさんいる。質問に納得できるまで説明してくれる医師を選ぶとよいでしょう」と話している。【斎藤広子】

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◆インプラントのメリットとデメリット
◇メリット
・かみ合わせの安定
・かみ砕く能力の回復
・見た目の美しさ
・生活の質の向上
◇デメリット
・外科手術が必要
・自由診療
・治療期間の長期化
・全身疾患の状態によっては治療が不可能



2012年6月25日 提供:毎日新聞社