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これからの時代を見据えた歯科診療哲学
<明日から未来ヘ>今解決すること、準備しておくこと

吉永 勉(大阪市生野区開業)

平成24年6月10日東京国際フォーラム 第30回日本顎咬合学会講演より

未来は見えますか?

未来のことは誰にもわかりません。もちろん私もわかりません。ですから人は不安を抱えて迷います。歯科医院を運営、継続していくには多くの悩みも生じます。ス
タッフの事、お金の事、患者さんの事・・・

仲間をつくることは必要ですが、不安から人と同じ事をしていれば安心だと、携帯でも自分には不要な機能を多く持つ最新機種を求めつづける反面、個性を大事に
したいという矛盾を抱え、本来の意志とは違うところに流されがちです。しかし、どんな時でも未来を見通す「道標」はあります。自分に都合の悪い話に目をつぶって
いるとそこにあるものが見えなくなります。素直な心になれば、見えてくるものがたくさんあります。

おかしい歯科の常識と行動

保険診療はどうなっていくのでしょうか。Tekが保険導入されましたが、300円です。技工士さんはいったいいくらで作ることができるのでしょうか。本当に歯科が保険制度を続けるなら、まずは正しい原価計算をするべきです。ありえない価格設定に本気で怒らない歯科界もおかしいですし、財源がない(?)なら一部を保険診療から外すしかありません。歯科界に優秀な人材が集まらなくなりますし、離れていきます。

年収一千万、二千万かせぐ歯科衛生士さんが10人以上現れないのもおかしい。お金がすべてではありませんが、一つの基準にもなります。衛生士学校を3年制、いや、今後6年制にしたところで結局人は集まらないでしょう。

こんな話をすると「保険診療に不満のある人は保険医をやめればいい」という意見がでるのもおかしい話です。若い先生がまじめに根治をして、まじめに説明して、まじめに労務をして、それで歯科医院がつぶれていくのはおかしいと思います。

チーム医療といいながら・・・

面接のときに労働条件や有給のことを質問したら、「今の若い人は休みのことばかり考える」「給料の事、こまかく聞いてくる。こっちが雇ってやるのに・・・」そんな意見が平気で専門誌にでてくる歯科界です。労働者が賃金や休日その他を聞くのは当たり前のことなのに、労働契約書もない。まともな契約もしない。「有給なんかまと
もにとらせたら経営は成り立たない!」といってベンツに乗ってミナミで夜な夜な飲んでいる。

実際、まじめに保険診療だけで成り立たすのは無理です。自費診療を批判する先生もいますが、まじめにとりくんだ保険の根管治療の赤字分や他の不採算分を補っているのが自費の売上じゃないですか?滅菌をきちんとできるのは自費があるから。それが現実ですよ。

今をどう生きるか

人聞が作る社会だから、未来になっても本質は変わりません。時代が変わっても義理や愛etc.は変わらないものです。明るい未来を目指してがんばってみても、うまくいかない日、辛い日、苦しい日もあるでしょう。でも後から考えれば輝く未来をつくるために大切な1日だったことに気づくでしょう。

ですからリーダーは険しい道を選択すべきです。最初から「険しい道を行くぞ!」と覚悟さえしていれば、意外に「思ったより楽なところもあるんだな」と乗り切れるものです。それを繰り返していくうちに身体に筋肉が付いていくように心も鍛えられて強くなる。

生まれかわりなど私は信じていませんが、もし皆さんの前世が志半ばでたおれた歯科医師や歯科衛生士さん、卒業前の学生だったらどうしますか。だったら今をどう生きますか?

私達の人生なんて宇宙の歴史に比べたらほんの一瞬のことです。一瞬だからこそ歯科医療を通じて今を真塾に生きて、未来を切り開きながら生きていくことが大切なのではないですか?

2012年6月10日 提供:第30回日本顎咬合学会講演より 吉永 勉