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東京地裁:民事裁判で昇高会飯野歯科に331万円支払い命令

東京地裁:民事裁判で昇高会飯野歯科に331万円支払い命令 
原告の請求一部認める

インプラント治療をめぐり、原告・吉田深鈴氏...

インプラント治療をめぐり、原告・吉田深鈴氏(横浜市・63歳・女性)が被告・医療法人社団昇高会飯野歯科(中央区・福井陽子理事長)を相手に、2500万の損害賠償を求めた民事裁判(高橋譲裁判長)の判決が10月25日、東京地裁であった。判決概要がこのほど明らかになった。何が問題視され、裁判所の判決理由にも注目される内容となった。なお、この裁判は、現在公判中の被告・飯野正之の刑事事件とは別の裁判。判決主文は次のとおり。被告は、@原告に損害賠償331万円の支払いを命ずる、Aその他の請求は棄却する。判決要旨を以下に紹介する。

平成15年12月、原告は、上顎の差し歯が外れ、マスコミで知った飯野歯科医院を来院し飯野正史院長による治療(インプラント治療含む)を受けた治療における内容を巡る裁判である。平成16年1月に日大歯学部付属病院で岡田明子歯科医師から、左側下顎顎下部抹消性神経障害性疼痛、複合性局所疼痛症候群疑い(CRPS)の診断を受けた。結果として、疼痛や咀嚼障害等が発生しており、@事前検査事務違反、A説明義務違反、B手術手技に関する義務違反、C術後管理義務違反などを訴えの理由にしており、治療契約の債務不履行(民法415条)に基づき損害賠償を求めたものである。また、判決文から、鶴見大学歯学部付属病院、日歯大付属病院での診察を受けたこと、同病院関係者は裁判所から意見を求められていたことも明らかになった。

まず、争点となっている@について原告は、CT検査の必要性を指摘し、医院のパンフレットにも掲載しているが、CT検査がなかったと指摘しているが、本件の当時(平成15年)は、CTの有用性を認められているものの、必須の検査項目として一般化していないという意見(端山智弘・調停委員)もある。今後は、三次元画像診断の普及が望ましいことだが、口腔内の施術に対応になるよう措置を講じるべきことを怠ったことではない。必ずしもCTを設置し活用していた歯科医院は多くない状況であった。

A手術に付随する危険性、他に選択可能の治療方法との関係と利害得失、バイコチカル方法や意図的に穿孔することの説明を原告にしたという証明はない。10時30分頃から診療が始まり、口腔内審査、治療が14時頃にはすべての治療が終了し、治療費支払いがされたことは認められる。しかし、被告が、各所での問題について、原告に十分理解させた上での意思決定されるに足りる具体的な証拠はなく、原告への説明を怠ったというべきである。

B原告の口腔内CT撮影した佐藤淳一歯科医師(鶴見大学歯学部)は、穿孔を生じてはいけないという見解であるが、端山智弘・調停委員は、ドリリングは軟組織への損傷、インプラントは舌側皮質骨穿孔に伴う神経、血管損傷の危険性があると指摘、またそれに沿う医学文献があること、極力回避すべき歯科学上の知見も存在しており、飯野歯科医師の供述は採用できない。剥離については、飯野歯科医師の慎重さを欠くとの指摘もあるが、推論でしかない。また、骨吸収に関与されるとされるインプラント埋入について、十分な間隔を確保すべき要請より、健康な骨質にインプラントを埋入することを優先すべき、という歯科学上の知見を認めるに足る証拠はなく、インプラントの本数を減らすなど十分な間隔を確保する対応も考えるべきである。

C骨折の有無の確認するCT撮影の試み、消炎のために積極的に措置を講じず、漫然と経過観察していたのを認められ、飯野歯科医師の供述は採用できない。疼痛や咀嚼障害との相当因果関係を有するものは認められない。

最後に、裁判所は「本来希望していない12本のインプラントを埋入することになった。このような口腔内に侵襲度の高い手術を受けるにあたり適切な説明を受けてないこと。施術の問題で様々不適切な点が多かったこと、本件手術直後から、疼痛やインプラント周囲炎に悩まされ、他の医療機関において通院期間約5か月、実通院日数は約36日、入院は2日になる治療を受けることが余儀なくされたこと、相当因果関係は認められないものの、インプラント除去を余技なくされた部分には、不必要かつ不可逆的侵襲が加えられた結果になっている。これらの負担を負うことによって強い精神意的な苦痛を被っていること等の事実が認められる。本件注意義務違反、態様、その他に関連する諸般の事情を考慮すれば、飯野歯科医師の注意義務違反行為に原告が被った精神的苦痛を慰謝するための慰謝料として200万を認めるのが相当である」としている。

この裁判では、横浜市歯科保健センター・佐合賢治歯科医師、鶴見大学歯学部教授・小林馨歯科医師、日歯大病院・河合泰輔歯科医師、日歯大病院・白川順正歯科医師ほかなど、それぞれの立場での意見も判決文には要旨が記され、参考にされていたこともわかった。

2012年11月1日 提供:Dentwave.com