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創傷治癒ゲルを国内開発へ 3DM、医療・美容向けに展開


 スリー・ディー・マトリックス(3DM、東京都千代田区)は、傷跡をほとんど残さずに止血できるゲル状の創傷治癒材「TDM−511(開発番号)」の日本での製品化を目指す。米国で前臨床試験を進めており、向こう2〜3年内に日本でも開発に乗り出す。管理機器に分類される「クラス2」医療機器として認可取得をねらう。米国では、臨床試験中の歯槽骨再建材「TDM−711(同)」の軟骨や腱などへの応用も進める。国内外で組織再生領域の研究開発を加速し、事業拡大につなげる。

 3DMは自己組織を形成するペプチドを活用した医療製品を開発しているベンチャー。511は、表皮や真皮の出血を迅速に止めるとともに、創傷部の再生機能を向上させて治癒を促す。通常の止血のほか、火傷によるケロイドを切除して審美性を回復させるといった美容用途も見込む。まずは米国で、既存の医療機器と同等の機能を有する製品に簡易な手続きが認められる510(k)申請を今年度中に行い、開発進展を見ながら国内開発に着手する。

 人工合成したペプチドの711は、インプラント治療に必要な歯槽骨を再生させる。歯槽骨は歯の土台となる部位で、歯周病にかかって破骨細胞で吸収されると回復が難しい。歯槽骨の再建では、他人の骨を使ったり、自分の腰の骨などを使う治療法がすでに存在するが、供給の不安定や感染リスクといった問題があった。人工材料であるため、こうしたリスクを回避できるとみて実用化を目指す。

 ペプチドで骨を再生するという手法は、脊椎や軟骨、アキレス腱、心筋など他の部位に応用できる可能性がある。米国では、個人で加入する民間保険で治療費をカバーできるためインプラント治療が日本より盛ん。まずは米国で歯槽骨に関するデータを集め、順次他分野にも用途を広げていく。

 基盤技術である自己組織化ペプチドを利用した製品では、止血材「TDM−621」の開発が最先行しており、2013年度中の国内承認を見込む。3DMが扶桑薬品工業と販売契約を結び、扶桑薬品が科研製薬と販売提携を決めたため、621が承認されれば扶桑と科研の両社で共同販促することになる。

 3DMが開発する組織再生製品は「ヒトの細胞に加工を施したもの」ではないため、国会に提出された改正薬事法が示す再生医療製品に該当せず、3DMでは医療機器として実用化を目指す。

2013年8月5日 提供:化学工業日報