歯と歯茎の状態を15歳、45歳など年齢に置き換えてわかりやすく示す「口腔(こうくう)年齢」チェックが、一般の歯科医院にも広がり始めた。歯茎は加齢に伴って黒ずみ、つやを失い、歯周病にかかりやすくなる。しかし日ごろから口腔年齢を意識したケアをすれば、実年齢相応の状態を保てるだけでなく、若返りさえ可能だという。
各地の歯科医院で測定可能に
「口を大きく開けてください。虫歯の状態をチェックします」。「次は歯茎の腫れ具合を見ます」
5分ほどチェックが続いた後、パソコンにデータを入力するとすぐさま口腔年齢がはじき出された。「14.2歳」。先日歯石を除去したばかりというMさん。実年齢よりも10歳以上若い年齢に「チェック前は不安だったが、手入れに気をつかっていてよかった」と満足げだ。
実年齢と大差も
口腔年齢を測定するには、歯科衛生士などが専用のソフトを使って診断する必要がある。同ソフトを扱うジーシー(東京・板橋)によると、全国100近くの歯科医院や歯科医師会が導入済み。
歯と歯茎への手入れ次第で実年齢とかけ離れやすい。60代でも口腔年齢が30代の人もいるが、その逆もあり、結果を聞いて驚く人も目立つ。
口腔年齢の算出手法を開発したのは大阪歯科大学の神原正樹教授だ。「肌に比べておろそかになりがちな口の中の健康に関心を向けてもらおうと、年齢表示を考えついた」と狙いを説明する。
年齢算出の基本は虫歯の処置をしていない健全な歯の本数。さらに口のなかを6エリアに分け、それぞれについて歯石や歯茎の炎症の有無、歯と歯茎のすき間にできる歯周ポケットの深さを測定する。これらデータを日本人の平均値と照らし合わせ、年齢を算出する。すべての歯と歯茎が健全なら9.9歳とされ、そこから虫歯や歯周ポケットの深さなどによって評価が減点される。最高年齢と分析された場合は98.1歳だ。
神原教授は「口腔年齢は日ごろのケアで若返ることもある」と話す。実際神原教授がある企業の歯科検診で年齢を測りながら指導したところ、11年間で平均5.4歳の改善が見られた。
口呼吸を避けて
では、どんなケアが有効なのだろう。口腔年齢の計測ソフトを導入済みの歯科医院にかかり、指導を受けるのが確実だ。しかしそうした医院が身近にない場合でも、口腔年齢を若返らせる手法はある。
「憧れの『口もと美人』になる本」などの著書をもつ宝田恭子・宝田歯科医院(東京・江戸川)院長の話などが参考になる。
神原教授と宝田院長がそろって「最も重要」と指摘したのは正しい歯磨きだ。磨き残しは歯肉炎や歯周炎の原因になるので毛先がまとまった歯ブラシを使い、歯と歯茎の境目を特に意識して歯ブラシを小刻みに動かす。強く磨きすぎると歯肉を傷つけ、歯茎の老化を進めるので注意したい。また市販の洗口液は、気分のリフレッシュだけでなく歯周病菌の殺菌効果がある。
普段の呼吸は鼻呼吸を心がける。口呼吸は口内に細菌を持ち込むほか、口内を乾燥させるので汚れが取れにくくなるという。だ液による殺菌を促すため、口周りをよく動かしたり、食事の際にかむ回数を増やすのも有効だ。
このほか、宝田院長は人さし指を使った歯肉マッサージをすすめる。歯磨き後マッサージをすることで、血液中の酸素濃度を高め、歯茎の腫れを抑えられる。つめが長い人は歯肉を傷つける恐れがあるので「指サックやゴム手袋を着けるように」と注意していた。
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