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認知症への対応は“義歯がカギ”

以上の健常者4425人に歯や口の中の状態を選択肢から自分で選んでもらい、その後4年間、認知症を伴う要介護認定を受けたかどうか追跡。結果、年齢、治療疾患の有無や生活習慣などに関わらず、歯がほとんどなくて義歯を使用していない人は、20本以上歯が残っている人より、有意に認知症による要介護認定を受けた頻度が高く、そのリスクは1.85倍(95%信頼区間は1.04倍から3.31倍の間)にも上るというもの。

関係者は、認知症の人に歯が少ないことは知られていたが、認知症の結果、歯の手入れができなくなって歯が失われるのか、歯がないから認知症になりやすいのかは不明であった。それを今回調査したところ、義歯がカギを握っているという結果になったという。時間の経過と共に認知症になった人の割合を追いかけたもので、一目瞭然、義歯を使っていない人だけがその割合が高くなっている。

ではなぜ、歯が少なくて義歯を使っていないと発症リスクは高くなるのか、という問題に関しては、山本准教授は、以下3つの仮説を挙げている。@歯周病の慢性炎症の影響:永久歯を失う最大の原因である歯周病は、歯茎で慢性的に炎症が起きている状態です。その炎症で作られるサイトカイン(細胞間の情報伝達を司る物質)は、脳神経細胞に悪影響を与えると考えられています、A噛めないことの影響:ものを噛むと、脳の血流が増え、記憶を司る海馬も活性化することが分かっています。この噛む刺激が足りなくなっている可能性があります、B食生活の影響:満足に噛めない人は、当然のことながら何でもバランスよく食べるというわけにはいかなくなります。野菜や豆など認知症のリスクを下げる食べ物が特に苦手になりがちです。ビタミンなどの摂取不足で、認知症になりやすくなっている可能性はあります。

この分野で先駆的研究している渡辺誠・東北大学名誉教授も自らの医学研究で、アルツハイマー病になると海馬が萎縮することが知られているとし、「認知症の予防には、自分の歯の数を保つことが、大切であることが証明された」と指摘した上で、認知症の予防のために大切な機能が咀嚼であり、同名誉教授は「噛むことで脳は刺激されるが、歯がなくなり、歯の周辺の神経が失われると、脳が刺激されなくなる。それが脳の働きに影響を与えているのではないか」としている。

なお、歯科臨床における問題点・注意点について関係者の話をまとめると、「歯科医師と本人のコミュニケーションが不安定」「治療の必要性や内容を理解してもらえない」「痛い場所が解らない」「口腔清掃不良」などが挙げられ、歯科医療の今後の課題の一つになるという。

2013年11月29日 提供:奥村 勝 氏