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北大と長瀬産業、歯科用人工骨 骨再生促す機能に優れる

 北海道大学歯学研究科の吉田靖弘教授らの研究グループと長瀬産業は、でん粉を原料とする天然多糖類プルランを使って、骨再生能力に優れる歯科用人工骨(骨補填材)を開発した。プルランとリン酸の化合物であるリン酸化プルランを素材として採用。歯周病で溶けてしまった骨を回復させる治療に用いる。動物試験では有効性を確認できており、来年にも臨床試験(治験)を開始する。2018年度の薬事承認取得を目指している。

 両者が共同で開発したのは、リン酸化プルランにカルシウムの一種であるアパタイトを混ぜてペースト状にした歯科用人工骨。歯周病治療の1つである歯周組織再生法に用いる。

 歯周病は歯と歯ぐきの隙間が広がり、炎症で歯を支えている骨が溶けてしまう。開発品は歯ぐきを切開して骨の欠損部分に塗り込むことによって、骨の再生を促すと期待されている。

 ラットを使った動物試験では約2カ月で骨が再生する効果を確認できた。他の素材を使った人工骨に比べ、骨再生能が優れていることを実証できたという。

 吉田教授らは歯科用人工骨の製品化のため、今年4月にも医療機器開発ベンチャー企業「メディカルウェイズ」を設立する。今後、非臨床での安全性試験を経て、来年にも治験を開始する計画。そのため、長瀬産業子会社のナガセケムテックスがリン酸化プルランを安定的に製造する技術を開発中。製品上市後の販売は歯科材料大手のジーシー(東京都文京区)が担当することが決まっている。

 プルランは長瀬産業子会社の林原(岡山市)が世界シェア100%を握る素材。水に溶けやすく強い接着性を持つほか、医薬品のカプセル材料として生体内での吸収性と安全性が確認できている。吉田教授らはプルランに歯科用接着剤の素材に用いられるリン酸基を導入したリン酸化プルランは、接着性と生体吸収性に優れた素材であるため、さまざまな医療機器の素材として応用できると見込んでいる。

 吉田教授らは歯科用人工骨のほかに、脊椎圧迫骨折の椎体形成術に用いる骨セメントとしての開発も進めている。


2014年2月20日 提供:化学工業日報