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口臭 歯周病か舌汚れ疑って

 口臭が気になる人は少なくない。対策用のサプリや歯磨きグッズが多数出回っているが、そもそも、どうして口臭が漂ってしまうのだろう? 東京医科歯科大学の付属病院で「息さわやか外来」を担当する川口陽子教授に、原因や予防法を聞いた。

 ●生理的なものも

 「世の中に無臭の人は存在しません。どんな人にも『生理的口臭』があります」と川口教授は説明する。「誰でも、朝の起きたてが一番口臭が強く、食事をしたり歯を磨いたりすると下がる。空腹になるとまた上がる。ゼロになることはありません」

 他人が不快に思うレベル以下なら、これらは問題にならない。ニンニクを食べた時や、アルコール、たばこによる口臭も、一時的なものなので、治療対象にはならない。

 受診が必要なのは、何らかの病気が原因で起きる口臭だ。

 口臭は、口の中にいる細菌が、はがれ落ちた粘膜上皮や血液成分、細菌の死骸などのたんぱく質を分解し、においの原因物質である揮発性硫黄化合物が発生することで起きる。鼻やのどの病気、糖尿病などが関連している場合もあるが、90%以上は口の中の汚れや病気が原因だ。口臭が気になったら、まず口の中を疑うこと。川口教授は「歯科で口内の病気や汚れを取り除いてほしい」と勧める。

 ●細菌がうみを分解

 口内に関連する口臭の3大原因は(1)歯周病(2)舌の汚れ(3)唾液分泌の減少――だ。

 最も多いのは歯周病。歯周病になると、歯肉の組織が破壊され、出血したりうみが出たりする。この血液やうみを細菌が分解し、揮発性硫黄化合物を発生させる。揮発性硫黄化合物は歯周病を悪化させる場合もあるので、早めの治療が必要だ。

 「歯周病の予防には歯磨きが大切。フロスなどを使い、歯と歯の間をきれいに保ちましょう。初期の場合は、ブラッシングが治療の一つにもなります」と川口教授。定期的に歯科で診察を受け、歯石を取ったり、磨き方のチェックを受けたりすることも大事だ。

 ●朝食前に舌苔取る

 舌の汚れとは、舌の上についた白や淡黄色の「舌苔(ぜったい)」のこと。死んだ細菌やはがれた粘膜などからできており、これが舌の奥の方につくと、口臭の原因となることが多い。舌苔がついたら、水でぬらした軟らかめの歯ブラシか舌ブラシで磨いて取り除く。

 ポイントは1日1回、朝食前に行うこと。舌の粘膜は柔らかく、1日に何度もゴシゴシこすると、表面を傷つけてしまうので注意しよう。また、舌の汚れを落とせば、舌の表面にある「味蕾(みらい)」に食べ物の味が伝わりやすくなり味覚が敏感になる。舌はできるだけ前に出して磨き、舌全体がピンク色のきれいな状態になったかを鏡で確認すると良い。

 口臭は唾液の分泌量とも関係する。唾液の量が多いと、口の中の汚れが洗い流され、口臭は減るが、唾液が少ないと、口の中の汚れがたまって口臭が強まるという。唾液の分泌量は加齢とともに減るほか、緊張やストレスでも分泌が悪くなるので注意が必要だ。

 唾液の出が悪く、口が渇く時に役立つ「舌体操」を川口教授に教えてもらった。

 頬の片方を膨らませ、その内側に舌先をあてて上下に動かす運動を、左右とも行う。次に唇、頬の裏側と歯茎の間に舌を入れ、歯茎をなぞるように大きく回す。これを数回繰り返すと、唾液の分泌が促されるという。

 ●専門外来で測定

 ガムやサプリメント、洗口剤など、口臭予防をうたう製品が多数市販されている。だが、こうした製品で抑えられるのは生理的口臭。病気が原因の口臭は、根本的な原因を除去しない限り改善しない。

 川口教授は「自分のにおいは自分では分からない。口臭で悩んでいたら、専門外来でにおいを測定し、確認してはどうでしょう」と勧める。歯学部のある大学付属病院を中心に、全国に口臭専門外来があるので、気になる場合は受診してみよう。ただし、口臭測定は保険外診療。費用は全額自己負担になることに注意したい。【山崎友記子】

2014年2月25日 提供:毎日新聞社