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歯と口の健康週間にちなみ、改めて「酸蝕歯」の問題を啓発=キリンビバレッジ


歯と口の健康週間にちなみ、改めて「酸蝕歯」の問題を啓発=キリンビバレッジ

歯と口の健康週間にちなみ、改めて「酸蝕歯」の問題を啓発=キリンビバレッジ

 6月4日から10日までは、厚生労働省、文部科学省、日本歯科医師会が1958年から実施している、歯科疾患の予防や早期発見、早期治療を徹底することを国民に対して普及啓発する「歯と口の健康週間」だ。「アルカリイオンの水」などを販売するキリン(キリンビバレッジは本社・東京都中野区)は同週間にちなみ、ニューズレターなどを通じて、改めて「酸蝕歯リスク」の問題を訴えた。(画像提供:キリンビバレッジ)

 「歯のトラブル」というと、まず「虫歯」を思い浮かべるが、最近では「酸蝕歯」についても関心が高まってきた。まず「虫歯」と「酸蝕歯」の違いだが、「虫歯」の原因が口内菌が作りだすプラーク(歯垢=しこう)による酸なのに対して、「酸蝕歯」の原因は酸性の食品そのものだ。つまり「虫歯」はプラークを作らなければ防げるのに対し「酸蝕歯」は、酸性の食品を食べている限り発生するリスクがある。

 酸性・中性・アルカリ性をあらわすのがpHという指標だ。水溶液中にある水素イオン(オキソニウムイオン)の濃度にもとづく数値で、中性の場合7、7未満だと酸性、7より大きいとアルカリ性になる。  例えば清涼飲料水の中には、胃液に近いほどのpHを示すものもある。かなり強烈な酸性度だ。このように、酸性の飲食物を絶え間なく摂取すると、口内のpHも酸性に傾きがちな状態になる。

 意外なことに、日本人の主食である白米のpHは4程度で、ヨーグルトとほぼ同じ酸性度だ。特に「酸っぱい」とは感じなくても、自分の歯を「酸蝕歯リスク」にさらす食品があるわけだ。

 歯の表面はエナメル質と呼ばれる、人体の中でも最も硬い物質で覆われている。この「エナメル質」のおかげで、人は前歯で硬い食べ物をかみちぎったり、奥歯ですりつぶしたりできる。ただこのエナメル質、「力学的」には極めて強いのだが、酸にさらされると弱くなり、溶けだしてしまう。酸とはいわば、「歯の天敵」だ。

 この現象を「脱灰」と呼ぶ。「脱灰」は口内の環境がわずかに酸性に傾いただけでも進行する。酸性のものを食べなかったとしても、エナメル質は酸性物質にさらされることになる。一般に、飲食をすると3分後には口内のプラーク内部やプラークがついている歯の表面が酸性化するからだ。やはりエナメル質は柔らかくなり、傷つきやすくなる。

 しかしその一方で、人の体にはさまざまな「調整」や「復元」のシステムが備わっている。口の中が酸性になると、酸を中和する働きを持つ唾液が分泌され、口内を中性に近づけていく。また、口内および歯の表面がアルカリ性に近づいていくと、今度は唾液中のカルシウムなどがエナメル質に取り入れられて、歯は再び補強される。これを再石灰化と呼ぶ。

 口内を中性に保たせようとする唾液は、大唾液腺と呼ばれる器官から分泌される。大唾液腺からの唾液が口内に出てくる場所はいくつかあるが、いずれも奥歯近くの場所だ。そのため、口内の酸性度は、場所によって偏りがちになる。

 酸性の飲料で口をゆすいだ後の歯のpHを測定する実験を行ったところ、奥歯ではすぐにpHが戻ったが、前歯ではなかなか戻らなかった。この実験では口をあまり動かさないようにして測定した。実際には自然に舌を動かすなどで、奥歯近くから出た唾液を前歯の方まで移動させているはずだが、睡眠中などの口内の状況は、この実験に近い状態になっていると考えられる。いずれにしろ、前歯の方が奥歯よりも「酸蝕歯リスク」が高いと言ってよい。

 歯の健康と大いに関係がある口腔内の「酸性度」だが、キリンは回答者100人を対象に、認識度などを調査してみた。

 「食後の口腔内が酸性化することについて意識していたか」尋ねたところ、79%と、約8割の人が「意識していない」と回答(あまり意識していない、全く意識していないとの合計)。改めて「食事の後、口腔内が酸性になりがちということについて、どう思うか」と尋ねたところ、57%の人が「歯の健康に悪いと思う」と答えた。

 このことから、食事した後の口の中が酸性に傾きがちだという事実が広く認知されていけば、口内のpHコントロールケアについての意識も高まると考えられる。

 乳幼児の虫歯予防から高齢者の入れ歯相談まで幅広い症例と向き合う一方で、歯や口の病気についての啓発活動を積極的に続けている丸山和弘歯科医師によると、飲食と飲食の間が短い、つまり飲食の回数が多いと、唾液による口内の中和が十分でなくなり、酸蝕歯の問題が出やすくなってしまう。  また、強い酸性にさらされた直後の歯は傷つきやすいため、歯磨きをすると摩擦などでエナメル質を削ることとなり、余計に歯を傷める心配がある。歯磨きは口内pHが中性かそれに近い状態に戻ったタイミングですべきだ。

 高齢者の場合には、加齢により唾液の分泌が減少することが多いので、食後にとる飲料のpH値を気にしてみたり、十分に唾液を出すような生活習慣を心がけた方がよい。唾液は噛む動作によって分泌が促されるので、丸のみなどせず、よくかんで食べる週間も有効だ。

 水分不足で唾液不足に陥ることも考えられる。そのため「のどが渇いたから水分を」でなく「口が渇く前に水分補給」を心掛けるべきだ。

 酸蝕歯を防ぎ、虫歯の原因となるプラークを取り除くには「口内の中和を促す」、「唾液をよく出す」ことが大切だ。食後にアルカリ性の水などを飲用する習慣をつければ、より健やかな口内環境を実現する効果を期待できそうだという。(編集担当:中山基夫)

引用:サーチナ 2014年5月29日(木)

更新日:2014年6月10日