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「ハンドピース使い回し」報道に日歯「表現は不適切」
歯科界への警告報道・評価とマスコミの次の関心事への憶測


読売「ハンドピース使い回し」報道に日歯「表現は不適切」

読売新聞は5月18日付朝刊で、歯科用ハンドピースについて国立感染症研究所の研究班の調査結果を基に「歯を削る機器7割使い回し」と報じた。日本歯科医師会は5月19日、同記事について「当該データがどのような調査によるものか学会と協力の上精査する必要がある」とした上で、「『使い回し』の表現はヘッドが1回ごとに捨てる器具ではない以上、適切でない。当該記事を書いた記者と意見交換する必要がある」との見解を都道府県歯科医師会宛てに送付した。

厚労省「感染対策を徹底」

今回の報道を受け厚労省歯科保健課は都道府県、関係団体等に対して歯科診療所における院内感染対策の周知・徹底を行うことにより安全で安心な質の高い歯科医療提供体制を整備していきたい」とコメントした。

“院内感染予防”への歯科界への警告報道・評価とマスコミの次の関心事への憶測

「多くの歯科で、医療機器の滅菌処置が不十分な実態が明らかになった。院内感染防止策の徹底が急務である。患者の唾液や血液に触れる歯科の医療機器には、病原菌を他の患者にうつすのを防ぐ措置が欠かせない」として、不十分な院内感染対策など指摘した読売新聞が報道(5月24日)したことで歯科界の対応が問われた。国立感染症研究所などの調査結果、予防接種の注射器の使い回しによる肝炎感染という、過去の医科からの事例などからの論調であり、具体的にはドリル(タービン)の扱いについて、日本歯科医学会から指針が出ていることを挙げて問題視している。

この問題指摘も最近の報道からは、結論として「周知徹底を図る」というとこで収まりそうだ。強制力や義務化が伴う具体的政策を取ることは合理性・妥当性を確保までできない現実もあることから、“周知徹底を図る”ことで妥当とする関係者の意見が多い。やはり、現実的に、歯科診療所での感染予防の不備などが原因で明らかに事故が続発している状況ではないのも事実が大きな要素であろう。

かつてのHIVやC型肝炎がクローズアップされた当時とは、報道のインパクトは違っている。本意ではない問題であることだが、“事故が起きないと動かない”のが行政の慣例。

マスコミ報道があったことで、改善される方向が出てきた効果は評価されるべきであるが、“インパクトが弱い”とは多くの歯科医師の感想のようだ。というより既にそれなり努力を尽くしているのも事実で、調査結果の数字だけの議論も臨床家からすれば、「理屈は理解できるが臨床現場の実情は反映されていない」という見解もある。一方では、「新聞記者はどこまで臨床を周知して記事を作成しているのか疑問」と吐露する開業歯科医師もいる。全国紙の記事報道の影響は看過できないのも事実であるが、内容を吟味すると釈然としないケースもあるが、最近はその傾向が目立つようだ。当該事案の根本的理由や本質論に迫る論調が乏しいのは事実。その理由には、医療・介護など専門的に取材活動をしている記者が極めて少ないこと。「社会部、政治部、医療社会保障部扱いの事案なのか、その線引きが不明瞭で合作して作成する場合があるものある」と述べる某新聞社元社会部記者(現在・経済産業担当)の声にも頷ける。こうした課題があることとは別に、マスコミ記者の次の関心事は何なのか。かつて新聞記者を務めた大学教授は「税金の使用方法に問題がないか、全国的大きな影・u梛ソを与える可能性がないか、問題が拡散し続けているかなどが取材のテーマにしていくポイント」と述べていた。

具体的には、臨床現場での作業や問われる業務範囲など期待が高まる“歯科衛生士”に係わる問題に関心が集まりつつあるようだ。高まるニーズに反して、離職問題、地域格差、歯科と医療・介護との狭間での業務の再検討の機運などから水面下での激しい動きがあると推測されている。結果として、どこかで健康保険法、療養担当規則、歯科衛生士法などに抵触する違反行為の有無、そこまでいかなくとも不適切な活動をしていないか、課題テーマにして動いているようだが、「臨床現場からのリーク、歯科診療所退職者の証言がほしい」と吐露しているが、今後の取材の拡充は不明としている。

奥村 勝 氏

引用:DENTWAVE 2014年5月27日

更新日:2014年6月12日