H24.8.23 田邉
講師:若林歯科医院の若林健史先生
若林歯科医院での診療哲学
1,予防からメインテナンスまで歯周治療を診療の基本におく
2,他医院とちがう特色を持つ
3,患者さん一人ひとりとじっくり関わりを持つ
4,基本を大切に
5,楽しく診療する
歯科界の現状
今後の医療サービスの質と経営戦略
・診療のステップ
予約、来院
初心時の問診と診査
診査結果とカウンセリング
歯周基本治療
再評価
歯周外科治療
補綴修復処置
メインテナンス→リピーター
●初診時の対応
患者さんは第一印象で評価する。
・プレ・カウンセリング
歯周病の簡単な説明
診査の必要性
歯周治療の目的を説明
・緊急処置
痛み、不快症状、主訴の解決
全顎的診査(歯科ドック)
→口腔内外の視診、触診
歯周組織の診査
(プロービング、動揺度、分岐部etc)
エックス線写真撮影14枚法
スタディーモデル
口腔内写真撮影
咬合診査・咬頭干渉の有無
生活習慣問診票
●診査、診断
記録として残すことの重要性
1変化を診るためには記憶の保存が大切
2規格性、再現性のある診査を行う
3初診時と再評価時の診査結果を比較するこくとにより、さらに価値が高まる。
4目で見たもの、触れたもの、感じたもの(観察したもの)を記録しておく
●問診の重要性
主訴に隠されている問題点を引き出すには歯科医の洞察力が必要である。
患者さんの言いたいことを傾聴、共感、理解してあげることを通してコミュニケーションを確立する。
●視診
1顔貌の対称性
2顎運動の評価
3歯列の状態
4歯肉の性状
5付着歯肉の量
6プラークの付着状態
7う蝕の有無
8その他の異常所見など
●触診
1歯肉の厚み
2痛み
3排膿
4骨瘤、小帯→SCの印象
5口葢の深さ→エックス線写真
6嘔吐反射→エックス線写真 SCの印象
7顎関接の雑音、圧痛
8咬筋側頭筋の圧痛
●初心時におけるプロービング
1歯周疾患の進行の程度を把握する
→必ずしも正確でなくても良い
2患者へのモチベーションと情報提供
→検査の意味、測定値を読み上げる
3痛みに対する感受性と患者の協力度を知る
→患者の特徴を把握し、心をつかむ方が大切
無理して痛みを与えない!
●測定方法
1執筆状変法、軽く把持し、固定源を確保する。
2可及的に痛みを与えないで測定する(25g ホワイトファミリーではセンサープローブなので、安心です。
3プローブの先端を根面から離さない
4隣接面のポケットを見逃さない
根分岐部は垂直、水平を測る
ファーケーションプローブを併用
→根分岐部病変とは
Lindhe&Hampの分類
class1 水平的骨吸収 1/3以内 初期
class2 〃 2/3以上 中期
class3 〃 貫通する 高度
歯根の形態頭にいれる
●動揺度
0度 0,2mm以下
1度 唇頬舌方向にわずかに0,5~1mm
2度 近遠心方向、唇頬舌方向に1mm~2mm
3度 唇頬舌的に2mm以上 垂直方向にも動く
3壁性骨欠損→歯根から見て骨壁が3
2壁性骨欠損→ 〃 2
1壁状骨欠損→ 〃 1
混合型骨欠損 がある。
●パノラマ写真の限界
骨吸収が見られなくても
皮質骨が残っていても、
海面骨がなくなっていることもある!! ホワイトファミリーでは3DCTで詳しく確認します。
●症例分析と治療計画
カウンセリング
医院と患者の信頼関係を築く最良のチャンス
・カウンセリングはプライベートタイム
歯周治療は患者さんのプラークコントロールをベースとしているため患者さんの積極的な参加と協力が必要なであるため十分なインフォームドコンセントが不可欠
●カウンセリングで患者さんへ伝えたいこと
1診査結果を報告する
現在の状況がどうなっているか(現在把握)
なぜ今のような状態になったか(原因究明)
どうしたら健康を回復できるか(治療計画の提示)
ホワイトファミリーではトータルプランですべてを患者さんに説明
2費用の提示
3長期的治療計画の提示と相談
4医院の歯科治療に対する考えを理解してもらう
5院長の人柄や個性を知ってもらう
●価値観の変化を変える
口腔の健康に対する価値観を高める
あなたの歯ってあなたにとってどんな価値がありますか?
歯周基本治療
1スケーリングルートプレー二ング
2口腔清掃法の指導 TBI
3う蝕治療 (歯内療法、要抜去歯の抜歯、歯の分割、歯根切断)
4歯の小矯正(MTM)
5動揺歯の、斬間固定
6選択削合による咬合調整
7再評価
8資料の収集
●ブラッシング指導
歯周治療の第一歩、治療の根幹を成すもの。
一見簡単そうに思えるが歯磨きのテクニックよりも日常生活の中で持続する気持ちを与えることが重要であるため最も難しい。
モチベーション(動機付け)が課題
プラークコントロールを日常生活の中で持続する原動力を患者さんに与えることがモチベーションである。
術者磨きをして、歯面を舐めてもらい
ツルツル感を知ってもらうことが大切
●ポストカウンセリング
治療終了後に術前のプロービングデブスや口腔内スライドを比較して見てもらい口腔環境が改善したことを確認してもらう。
治療の終了がゴールではなく新たなスタートであることを認識してもらう
毎日の患者自身のプラークコントロールと定期的なメインテナンスが重要であることを伝える。
次回の検診の予約をとっていってもらう。
●ルートプレーニング後の治癒様式
新しい結合組織の付着ではなく、長い上皮性の付着
非角化性重層扁平上皮で、細胞間隙が拡大しており歯根面との間にヘミデスモゾームが見られる。
ルートプレーニングはどこまで行う?
歯周組織に炎症を起こさせるグラム陰性細菌がもっている為害物質 エンドトキシン は露出セメント質の表面から30μm 以内の深さに存在する
→過度にセメント室を除去する必要はなく臨床的には均一でスムーズな生物学的に受け入れられる根面を作り出すこと。
一回のストロークで削れる深さは5~20μm
セメント質の厚さ
歯頸部付近20 ~50μm
根尖付近は150~200μm
セメント質の厚さを頭に入れて歯根面のダメージが極力少ないように操作しましょう。
●再評価の時期
歯肉溝が上皮で披覆されるのは6~10日目
結合組織の修復完了は10~21日
治癒に対する初期の反応性の評価には4~6週間が適切である
●歯肉の性状による治癒形態の違い
浮腫性の歯肉 →収縮
繊維性の歯肉→長い上皮性の付着
混合性の歯肉→収縮と長い上皮性の付着
浮腫性
・炎症は結合組織全体に波及
・進行が早い
・非角質化
・歯肉の収縮が起こりやすい
繊維性
・炎症の波及は根面に沿って根尖に向かう
・進行は比較的長時間を要す
・垂直性骨吸収が起こりやすい
・歯肉の収縮があまり期待出来ない
●歯周治療で大切な再評価
プロービングデプスの変化
プロービング時の出血の有無
→これらの改善は患者の意識の改革と医院側の処置が的確に行われていることを示している
●プロービング時の出血の意義
・肉眼的な歯肉の外観に惑わされることなくそこに炎症かあるか知ることができる
1歯石の存在
2患者のプラークコントロールの不良
3不適合補綴物の存在や清掃不良など
●再評価時のプロービングデプスと出血
・PD1~2mmの部位での出血の有無
→患者のプラークコントロールが不良と判断
→衛生士による再度の刷掃指導と動機付けを行う
・PD3~4mmでその部分の歯肉だけが腫脹、出血している場合
→歯石の取り残しが考えられる
→プローブや短針でチェックし歯石があれば除石する
・PD5mm以上のポケットが残り根面がザラザラしている場合
→歯石の取り残しや根面の滑沢化の不充分が考えられる
→麻酔下で再ルートプレーニングを行い1ヵ月後に再評価する
→治癒
→ポケット残存
歯周外科、短期間のメインテナンス
●歯周外科の必要な症例
ルートプレーニングを数回にわたり行った結果、歯周ポケットの減少が見られず、メインテナンス不可能だと思われる症例で、諸条件が満たされたときに外科治療を行う。
目的
・歯周基本治療で除去できなかった起炎物質(歯石)の除去
・メインテナンスの容易な口腔環境の付与
・歯周ポケットの減少、除去
・失われた付着、歯周組織の回復
・生物学的幅経、歯冠高経の確保
●歯周外科治療法
・切除療法
・組織付着
・再生療法
・歯周形成外科
●基本プログラム(BP)
3~4ヶ月ごとに60~90分を
歯科衛生士のアポイントをとる
検査内容:口腔の衛生状態、歯周病、カリエス、咬合
処置内容:ブラッシング指導、スケーリングルートプレーニング、ステイン除去、義歯調整・咬合調整
●メインテナンスの期間
基本的には3~4ヶ月のインターバル
1 歯周病があり広範な補綴処置の場合
1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月と延長
2 歯周病がなく広範な補綴処置の場合
2ヶ月、4ヶ月と延長
3 歯周病がなく小範囲な補綴処置の場合
4ヶ月ごと
4 歯周ポケットが残像している場合
数週間から1ヶ月ごと(spT)
感想
わかりやすい図と説明でした。
改めて歯周基本治療を学んで、今まで知らなかったSRP後の期間などが多々わかったので良かったです。
2013年8月23日 【歯科医師 田邉】
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