電動歯ブラシの
プラーク除去効果に関する研究
各種電動歯ブラシのプラーク除去効果
1992年 東京歯科大学歯科保存学第二講座
中川種昭ら(主任:山田了教授)
緒言
歯周疾患の予防や治療に関し歯齦縁上のプラークコントロールは、その処置の成否を決定する重要な因子の1つである。最近、口腔清掃に対しての関心が高まり手用歯ブラシに加え電動歯ブラシが使用されるようになった。電動歯ブラシのプラーク除去効果に大きく影響を与える因子として毛先の動きが注目されており、種々の電動歯ブラシが開発されている。本研究は、この点を解明すべく動きの異なった電動歯ブラシのプラーク除去効果を調べ、手用歯ブラシとの比較検討を行った。
実験方法
被験者は、歯列不正および測定に支障を来すような修復物を認めない東京歯科大学学生10名とした。今回用いた各種歯ブラシの種類と振動条件を表1に示した。プラークの付着状態の評価にはO'LearyらのPlaque Control Record (以下PCR)を用いた。また量的評価を行うために、鈴木らの測定法(以下鈴木法)を準用し、被験歯は64/641 146/46の10歯とした。刷掃時間は3分間で、図1に示すような手順で約1週間毎に8回測定を行った。実験結果は実験前後の値から除去率を求め比較し、統計的検索にはWilcoxonの符号付き順位検定を用いた。
実験結果
各種歯ブラシにおけるプラーク除去率の比較においては、図2、3に示すようにINTERPLAK(R)が最も高く、PCR、鈴木法の両測定法において、手用歯ブラシと比較して約20%高い除去率を示した。円形植毛部反復回転式は次に高い除去率を示し、この2種類の電動歯ブラシが手用歯ブラシと比較して統計学的に有意に高いプラーク除去効果であった。図4に示すように、隣接面においてもINTERPLAK(R)が最も高い除去率を示し、円形植毛部反復回転式、スクラビング振動+毛束ユニット運動以外の電動歯ブラシ,手用歯ブラシに対し有意に高い除去率を示した。円形植毛部反復回転式の除去率は手用歯ブラシ、スクラビング振動2000回/分、微振動に対し有意差が認められた。
結論
1. INTERPLAK(R)は手用歯ブラシ、他の電動歯ブラシと比較して統計学的に有意に高いプラーク除去効果を示した。とくに隣接面部、舌面部における刷掃効果が優れていた。
2.円形植毛部反復回転式も手用歯ブラシと比較してプラークの除去効果が優れていた。また、実験後のアンケートの結果、使用感、プラーク除去感ともに最も良好であった。
3.スクラビング振動+毛束ユニット運動、スクラビング振動、ローリング振動、微振動方式の各電動歯ブラシは、手用歯ブラシと同程度以上のプラーク除去効果を示した。
各種電動歯ブラシは、手用歯ブラシと同程度かそれ以上のプラーク除去率を示し、今後プラークコントロールの一手段として有効であることが示された。さらに、手用歯ブラシで効率よく刷掃できない患者に対し、またブラッシングに対して興味をもつ機会を与える上からも電動歯ブラシの使用は大きな意味をもつと考えられる。 |