以前、あるテレビ局が「快食療法」の特集番組を放送したことがある。何人かの太った人に指導し、1カ月後にどれだけやせたかを検証しようという企画だった。ほとんどの人は指導後に体重が3キログラムぐらい減ったが、1人だけ、やせずに予定通り進まなくなったケースがあった。
その方は最初にクリニックに来た時はビールや焼肉が大好きだった。よく仲間と焼肉店に行き、相当飲んだり食べたりしていた。そして、中程度の脳疲労が認められた。快食療法がビール、焼肉の飲食にまったく制限を設けないことに驚き、喜んでいた。
指導を始めてから1カ月後、テレビ局がやせたところを取材しようとクリニックに来たが、期待に反して最初に89.6キログラムあった体重は91.9キログラムに増えていた。体脂肪率は31.3%から33.4%に、中性脂肪も正常値の120から206にそれぞれ増加しており、思ったようにはいかなかったのである。
しかし本人はやる気満々で、その後も快食を続け、半年後に再びテレビ局のスタッフとともに体重を測定しにやってきた。すると、何と体重は81.2キログラムで以前に比べて10キログラムも減っており、体脂肪率も28.3%に減少、中性脂肪値は69まで下がっていた。脳の疲労も全く認められなくなっていた。
体重も体脂肪率も、脳の疲れ具合のバロメーターと考えることができる。脳が疲れている場合、快食療法を始めると一時的に体重が増えることはあっても、脳が健康になるに従って消化、吸収、代謝、排泄が正常に戻り、体重は減少してゆくのである。そして自然に健康に良いものを食べたくなる。
ちなみに、やせすぎの人が快食療法をすると体重は増える。快食療法はやせる方法ではない。あくまでも食事を通して脳の健康を回復する方法で、何億年もかけて進化を遂げてきた本来の素晴らしい脳に戻すのが目的だ。指導を受けたご本人は「ビールの量は減り、焼肉は食べたくなくなり、野菜が食べたくなりました」と満足そうだった。
横倉クリニック院長 横倉 恒雄