病原、腰の血管から脳へ 侵入口解明、治療期待も
自分の神経を攻撃して病気を引き起こす病原性の免疫細胞は、腰の血管から入り込んで血流に乗り、脳や脊髄に到達することを大阪大や鶴見大(横浜市)などのチームがマウスで解明し、2日付の米科学誌セル電子版に発表した。
中枢神経系の血管には「血液脳関門」があって細胞や細菌、ウイルスは通常入れないが、免疫細胞が中枢神経を破壊する難病「多発性硬化症」や中枢神経系のがん、感染症もあり、侵入口があるとみられていた。
侵入口が重力や電気刺激で形成されることも解明しており、開閉を制御できれば治療につながると期待される。
チームは多発性硬化症に似た脳脊髄炎のマウスの病原性免疫細胞を、正常なマウスに注射。すると第5腰椎の血管に侵入口ができ脳脊髄炎を発症した。
第5腰椎には体を支える、ふくらはぎのヒラメ筋からの感覚神経が集中している。尾を上にして重力がかからないようにすると、1週間で侵入口がなくなり症状が改善。ヒラメ筋を電気で刺激すると再び侵入口ができた。
刺激が第5腰椎で感覚神経から自律神経に伝わって炎症が起き、血管組織の結合が緩んで侵入口となる微小な隙間ができた。前脚の筋肉に電気刺激を与えると首や胸に侵入口が形成された。
大阪大の村上正晃(むらかみ・まさあき)准教授は「はり治療や運動、ストレスなどの刺激が病気や体調に影響を与える仕組みが分かるかもしれない」としている。