細胞が「近道移動」 腸の神経形成、理化研解明
食道や胃、腸などの機能を調節する神経系は、神経のもととなる細胞が効率的に「近道移動」して形作られる―。従来の概念を覆すこんな研究成果を理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の榎本秀樹(えのもと・ひでき)研究室長らのチームがマウスを使って明らかにし、19日付の米科学誌ネイチャーニューロサイエンス電子版に発表した。
赤ちゃんの5千人に1人の割合で起こるとされ、腸の神経が欠損し腸の一部が機能しないヒルシュスプルング病の発症メカニズムの解明にもつながるとしている。
チームによると、こうした「腸管神経系」は食道から胃、小腸と大腸からなる腸の全長にわたって網目状に形成される。ヒトでは脳からの指令がなくても腸などの動きを調節でき「第2の脳」とも呼ばれる複雑な構造を持つが、これまでは細胞が口側から肛門へと一方向に移動して神経系を作ると考えられていた。
研究では、生きたまま細胞の動きを観察できるようにしたマウスの胎児の腸を取り出し解析。すると、受精後11日ごろの小腸と大腸が平行になる時期に、間にある膜を横切って小腸側から大腸側に近道移動する細胞があり、これらの細胞が大腸の神経系の大部分を作っていた。
近道移動が十分にできないとヒルシュスプルング病に似た神経欠損が生じることも発見しており、移動に必要なタンパク質などが分かれば発症メカニズム解明が期待できるとしている。
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