酵素不足と首の不調
 

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1.健康と医療「酵素不足と首の不調」
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 首のこりや痛みの最大の原図は姿勢の悪さです。しかし、姿勢を正しても首の不調が改善しない場合には、胃や食道の不調が原因となっているケースが考えられます。なぜ内臓の不調が首のこりや痛みと関係があるのか、不思議に思う人も多いでしょう。私たちの体は内臓をはじめ筋肉や骨などの様々な器官が複雑につながり合っています。そのため、内臓が不調をきたすと、周辺の筋肉にも悪影響が現れるのです。内臓の不調が体のほかの部位に影響を及ぼすことを、専門的には「内臓体壁反射」といいます。

 私はこれまで背中や腰・首などの痛みを訴える患者さんをたくさん診察してきました。実はこうした症状の多くが内臓体壁反射によって起こっていたのです。内臓が不調になるには様々な原因が考えられます。ガンなどの病気が隠れていることもありますが、多くの場合は胃や食道の動きが衰えていたり、炎症を起こしていたりすることで、筋肉や神経に悪影響を及ぼしているのです。

 内臓の不調の原因は食生活の乱れやストレス、睡眠不足など、様々なものがあります。しかし、首の痛みを訴えている患者さんに話を聞くと、食生活に問題を抱えている人が非常に多いのです。例えば、朝昼晩の三食が肉食中心になっていたり、外食やレトルト食品(加工食品)で食事をすることが多い人。こうした食生活を続けていると消化不良を起こし、胃に腐敗物が溜まりやすくなります。その結果、血液の流れが悪くなり、疲労物質が首に溜まって痛みを起こすのです。

 肉食中心などの食生活を続けている人は当然、果物や生野菜が不足がちになります。このことも、胃や食道の不調の大きな原因になります。というのは、果物や生野菜に豊富に含まれている「酵素」という物質が働きにくくなるからです。私たちの体は、約60兆個もの細胞で構成されています。それらの細胞は、生命を維持するために、さまざまな化学反応を繰り返しています。
これを助ける物質が酵素なのです。

 酵素は体内で作られる体内酵素と食物に含まれる食物酵素に大別されます。
さらに体内酵素は食物の消化吸収を担う消化酵素とエネルギーを作り全身の代謝を促す代謝酵素に分けられます。人間の体の中で作られる体内酵素の量は限られており、年を取るにつれて作られる量が減っていきます。大量の飲酒、喫煙、睡眠不足、ストレスなどによっても減ってしまいます。

 酵素が不足すれば、体内の消化酵素の働きが低下し、胃もたれや胃痛・胸焼けを招きます。果物や生野菜を積極的に摂って酵素を増やすことが胃や食道の不調の解消ばかりか、首の痛みの改善にも不可欠となるわけです。では、効果的に酵素を補うには、果物や生野菜をどのように摂ればいいのでしょうか。酵素は48度以上に加熱すると破壊されてしまうので、加熱調理した料理では酵素を補給することはできません。果物や生野菜を生のまま細かく刻んだり、すりおろしたりして摂るのがお勧めです。サラダにするときはドレッシングにも注意してください。

 一般の油は消化不良を起こしやすいので、α−リノレン酸の油(アマニ油など)を用いるといいでしょう。もう一つお勧めしたいのが、スプラウトと呼ばれる発芽野菜です。スプラウトは種子が発芽したばかりの状態の野菜で、酵素がたっぷり含まれています。さらに、体内の酵素の働きを高めるスルフォラファンという成分も豊富に含まれています。発芽野菜は大きくカイワレタイプ、モヤシタイプ、ブロッコリータイプの3種類に分けられます。

 スルフォラファンはこれらのうちブロッコリーの新芽に多く含まれています。一つまみ程度の発芽野菜をサラダやスープ、麺類などに添えて食べれば、手軽に体内の酵素を補い、その酵素の働きも高めることができるのです。首の痛みが治らず、胃痛・胃もたれ・胸焼けなどの症状のある人は、酵素不足の可能性があります。肉食中心の食事を改め、果物や生野菜、そして発芽野菜を積極的に摂って酵素を補うようにしてください。

鶴見クリニック 院長 鶴見隆史先生
2012年9月3日