◇トキソプラズマとサイトメガロウイルス
口腔内細菌の600種類(真菌、スピロヘーター、ウイールス、歯周病菌)などの感染も怖い、口移し。
赤ちゃんに障害が生じる恐れのある母子感染症の患者会が今年の秋に発足し、啓発活動に取り組んでいる。代表を務める歯科医師の渡辺智美さん(32)=東京都豊島区=も当事者の一人。「妊婦に予防法がほとんど知られていない。周知を図り、悲しむ人を少しでも減らしたい」と話す。
会の名称は「先天性トキソプラズマ&サイトメガロウイルス感染症患者会」。9月に設立し、初感染が原因で、出産した子に障害がある母親ら約60人が参加している。
トキソプラズマは寄生虫で、生肉を食べたり土いじりをしたりすることで体内に入る。サイトメガロウイルス(CMV)は多くの人が感染しているウイルスで、唾液などからうつることが多い。
妊娠中にこれらに初めて感染すると、流産や死産を起こしたり、赤ちゃんが水頭症や網脈絡膜炎になったりする恐れがある。同会顧問の森内浩幸・長崎大医学部教授(小児科学)はこれらが原因で生まれている障害児の数を、トキソプラズマが毎年数百人、CMVが約1000人と推計する。
渡辺さんは妊娠8カ月の検診でトキソプラズマに初感染したことが分かった。入院して薬を服用し、昨春、長女を出産した。長女は目などに障害がある。妊娠中に焼き肉店でユッケやレバ刺しを食べたことがあり、医師には「それが原因ではないか」と言われた。感染が分かってからインターネットなどで調べても、病気の情報がほとんどなく、不安だったという。
同会はホームページ(HP)に会員の体験談や、妊婦が日常生活で注意すべき項目などを掲載。また、厚生労働省に対し、同省のHPや母子手帳に予防法などを記載し、妊娠時に受ける検査にトキソプラズマなども対象にするよう求めている。
渡辺さんは「治療薬が保険適用外のため、自費で年間50万円かかるなど、改善すべき点は山ほどある。未来の母子のために啓発活動を続けたい」という。問い合わせは同会HPで。【袴田貴行】
2012年12月18日 提供:毎日新聞社