ダニ媒介の新感染症 その予防策は
 

  ダニが媒介するウイルスによる新たな感染症が先月末、国内で初めて確認されました。
この感染症で死亡した人は、これまでに成人の男女合わせて3人に上っていて、厚生労働省は、いずれも最近海外への渡航歴がないことから、国内でダニにかまれて感染したとみて詳しく調べています。
まだ未解明な部分も多いダニが媒介するこのウイルス。
どのような感染症で、どうすれば予防できるのか。
厚生労働省を担当している社会部の松井亜紀記者が解説します。

ダニが媒介するウイルスによる新たな感染症

このダニが媒介するウイルスによる新たな感染症の名前は、SFTS=「重症熱性血小板減少症候群」です。
国内で初めて感染が確認されたのは、山口県の成人女性です。
この女性は、去年秋、発熱やおう吐などの症状を訴えて入院しました。
その後、血小板の値が著しく低下し、全身の状態が悪化して死亡しました。
国立感染症研究所が女性の血液を調べたところ、先月末になってSFTSウイルスが検出されました。
また去年秋、発熱や下痢などの症状を訴えて入院し、10日から16日後に死亡した愛媛県と宮崎県の成人男性合わせて2人の血液からもSFTSウイルスが検出されたことが13日、明らかになりました。
新たな感染症による死者は3人に上っています。
国立感染症研究所には、このほか5人の患者についてこの感染症が疑われるとして血液が送られていて、検査しているということです。

ダニ媒介の新感染症 その予防策は

SFTSウイルスとは

この新たな感染症はどのようなものなのでしょうか。
ウイルスは、おととし、中国で初めて特定された新種で、マダニが感染を媒介するとされています。
患者の血液や体液に触れることで、人から人に感染することも報告されています。
感染すると、6日から2週間の潜伏期間を経て、発熱やおう吐などの症状が出て重症化すると死亡するケースもあります。
中国内陸部の湖北省や河南省などの山岳地域で感染が広がり、これまでに少なくとも200人の患者が報告され、その大半が農作業に従事する人だということです。
致死率は10%を超えるとされていて、これまでに中国以外の地域で感染の報告はありませんでした。
今回、日本で検出されたウイルスは、中国のウイルスと遺伝子レベルでは違うため、厚生労働省は、ウイルス自体は以前から国内に存在していたものとみています。
また、国内で死亡した3人は、最近、渡航歴がなかったことから、厚生労働省は、国内でダニにかまれて感染したとみています。

ダニ媒介の新感染症 その予防策は

マダニとは

ウイルスを媒介するダニは、マダニという種類です。
マダニは、衣類や寝具など家の中に生息するダニではなく、国内でも森林や草むらなどの屋外に全国的に分布していて、市街地周辺でも見られるということです。
専門家によりますと、国内には44種類のマダニが生息していますが、どのマダニがこのウイルスを媒介するかは分かっていないということです。
専門家によりますと、マダニは、草むらや、やぶなどの葉の先端や裏側にいるほか、山の中では、イノシシなどの野生動物の表面に吸血するため、くっついている場合もあるということです。
このほか、ペットの犬や猫などにくっついている場合もあるということです。
成虫の場合は、数ミリの大きさで目に見えますが、幼虫は1ミリ以下のものも多く、ペットなどにくっついていても気が付かない場合もあり、注意が必要だということです。

ダニ媒介の新感染症 その予防策は

感染の予防策は?

では、どのように感染を予防すればよいのでしょうか。
このウイルスに対して有効なワクチンはないため、専門家は、感染を予防するためには、マダニに刺されないようにすることが重要だと指摘しています。
専門家が指摘するポイントをまとめました。
(1)マダニがいるような場所にハイキングに出かけたり、山で農作業をしたりする際は、肌をさらさないことが重要です。
防虫スプレーなどは効果がありません。
長袖や長ズボンを着用するほか、長靴を履いたり手袋やマフラーをしたりすることも有効だとしています。
(2)万が一、ダニにかまれた場合は、無理に引き抜かず、医療機関で処置してもらうことが重要です。
無理に引き抜くとマダニの一部などが皮膚の中に残ってしまうことがあるほか、押し潰すと感染する危険性があるということです。

ダニ媒介の新感染症 その予防策は

厚生労働省の対応は?

新たな感染症に対して、厚生労働省はどう対応しているのでしょうか。
厚生労働省は、新たな感染症の広がりをいち早く把握したいとしています。
このため13日に開いた専門家会議で、全国の医療機関に対し、感染が疑われる患者を診察した場合、法律で国への届け出を義務づけることを決めました。
具体的には、感染症法で、感染力は高くないものの、動物などを媒介して人に感染する「四類感染症」に新たに追加することにしています。
感染症法の政令を改正し、来月上旬にも感染者が出た場合、確実に把握できる体制を整えることにしています。
また、患者が確認された地域のマダニについて、ウイルスを保有しているかどうか調査することにしています。
まだ解明されていない部分も多い新たな感染症を引き起こすこのウイルス。
私の周りでも、ペットとして犬や猫を飼っている人は、マダニがついていないか、感染しないか心配している人もいます。
犬や猫向けのマダニの駆除剤を販売している都内のメーカーには、問い合わせが相次いでいるということです。
マダニは春から秋にかけて活動が活発になるということで、マダニにかまれないため十分な対策が必要だと思います。

ダニ媒介の新感染症 その予防策は


2013年2月14日 提供:NHK Newsweb