鳥インフル感染103人に 中国、死者20人 「人から人」の警戒強化
【上海共同=早川真、辰巳知二】中国浙江省は21日、鳥インフルエンザウイルス(H7N9型)の感染者が新たに5人確認され、うち1人が死亡し、既に感染が確認されていた別の患者1人も死亡したと発表した。上海市政府も、江蘇省で発症した男性の感染を確認したと発表。中国全体の感染者は死者20人を含め計103人となった。 同型ウイルスの世界初の感染例を中国政府が公表してから3週間。中国や国際社会は、大流行につながりかねない「人から人」への感染に対する警戒を一段と強めている。
感染は上海、北京の2市と江蘇、浙江、安徽、河南の4省に拡大。中国当局は感染ルートを特定する情報を得ておらず、解明は難航している。
感染拡大は、3月に発足したばかりの習近平(しゅう・きんぺい)国家主席と李克強(り・こくきょう)首相の新体制にとって大きな試練。中央政府の指示を受け、各地の地方政府は生きた鳥を販売する食材市場を閉鎖するなど防疫態勢の強化に乗り出したが、感染者増加に歯止めはかかっていない。
中国当局はこれまで、同じ家族で複数の感染者が出た2例のケースを調査。現時点で人から人への感染は確認されていないとの見解だ。中国以外の国・地域では、同型ウイルスの人への感染は報告されていない。
中国農業省は上海市など計9カ所の食材市場の家禽(かきん)から採取したサンプルと、江蘇省南京市で採取された野生のハトから同型ウイルスを検出したと発表している。
中国当局は世界保健機関(WHO)と連携して感染状況の分析などを進めている。中国のほか、ウイルス株の提供を受けた日本や米国がワクチン製造の準備に着手した。
経済面でも、畜産業のほか観光業や飲食業などに影響が広がっており、さらに感染が拡大すれば中国の景気の足を引っ張りかねない状況だ。
※H7N9型
A型インフルエンザウイルスの一種。人への感染は3月31日に中国当局の発表で初めて明らかになった。本来は弱毒性で公衆衛生上の危険は低いとされる。だが、中国の感染者の多くは死亡、または症状が重く、強毒化した可能性がある。日本の厚生労働省は、タミフルなどの抗ウイルス薬が同型ウイルス増殖の抑制に効果があることを確認。中国政府は各国と協力しワクチン開発に着手するとともに、各地で生きたニワトリなどの家禽(かきん)を扱う市場を閉鎖するなど防疫対策を強化している。2003年に大流行した新型肺炎(SARS)では中国当局の情報隠しが批判され、当時の衛生相と北京市長が更迭された。(上海共同)