歯を食いしばらない 香山リカのココロの万華鏡
 

いやはや、以外と、多いんです。自分が!?と思うかもしれないですが、ほぼ80%の方は食い縛り傾向です。

僕もそうです。

で、前歯もすり減り始めたのが、50代から、原因は癖と言いますが、奥歯の噛み合わせが低くなってくるのが原因で、40歳すぎてからの、噛み合わせ管理がとても、重要です。


香山リカのココロの万華鏡:歯を食いしばらない /東京

 歯や歯ぐきが痛くて歯科を受診したときのこと。レントゲンを撮ったり、口の中の状態を見たりして、歯医者さんはこう言った。「これ、歯の食いしばりが原因ですね。知らない間に随分力を入れてかみしめているみたいですよ」

 私は驚いた。特に奥歯をガッチリ食いしばり、顎(がく)関節が痛くなったり空気を飲み込んで胸が苦しくなったりする人がいることは知っていたが、まさか自分がそうなるとは。しかも、かみしめはストレスが原因とも聞いている。私は焦って歯医者さんに聞いた。

 「先生、私ストレスとは無縁の生活なんですよ! いったいどうすればいいのですか。食いしばり防止のマウスピースがあると聞きましたが、それを作ればいいのでしょうか」

 すると、歯医者さんは少々あきれたような顔をしながら、こう答えたのだ。「ストレスがなくてもかみしめちゃう人もいます。いきなりマウスピースを作らなくても、『食いしばっている』と気づいたら、ちょっと緩めて上と下の歯を離すだけで効果ありますよ」

 なるほど、そのつど力を抜くだけでいいのか。それから意識して口の中を緩めるようになった。すると、確かに歯の痛みは消えた。

 その経験をして以来、診察室で患者さんの顔を見ると、「歯を食いしばっていないかな。顔に力が入りすぎていないかな」と気になるようになってきた。精神科の診察室に来る人は深刻な表情をしている場合が多いが、中でも額にしわを寄せ、頬やあごにグッと力が込められているのがわかる人がいる。

 そういう人には、「ちょっと顔や口の中を緩め、だらーんとしてみては?」と促してみる。「ほら、ちょっとポカンと口を開け、ほわっとため息をついて……。そうそう、顔が緩んだでしょう」と、「にわか講師」になってリラックス法を指導することもある。
 私たちは日ごろ、緊張の連続で知らない間に顔全体に力がこもり、グッと歯を食いしばっているという人も少なくないだろう。そういう人にはぜひ、顔の力をフッと抜くだけで楽になる「顔緩め健康法」を勧めたい。「顔を緩めるだけで健康になれるんですか?」と聞かれたら、「いや、まだデータは集めてなくて」と正直に言うしかないのだが、簡単にできるリラックス法としてはなかなかいいのでは、と思っている。

 さあ、皆さんも一、二の三で、顔をだらーんと緩めてホッとため息。ガチガチの体とココロが少しほぐれるはずです。

2013年4月23日 提供:毎日新聞社