イワシやサバなどの青魚に多く含まれる「オメガ3系脂肪酸」の割合が多い食事を取ることで、恐怖や苦痛を伴う記憶を緩和させる傾向があることが動物実験でわかったと、国立精神・神経医療研究センター(東京都)の関口正幸室長らの研究チームが19日、発表した。
不安障害などの発症予防に役立つ可能性があるという。20日から京都市内で開かれる脳神経分野の合同学会で報告する。
オメガ3系は、DHA(ドコサヘキサエン酸)やαリノレン酸などの不飽和脂肪酸。実験では、オメガ3系と、植物油に多いオメガ6系(リノール酸など)の含有割合を変えた餌を食べさせた複数のマウスに、怖がって動かなくなる程度の電気ショックを与えた後、再び動きだすまでの時間を比較。3系、6系はいずれも必須脂肪酸だが、食事の欧米化が進み、日常生活での3系の摂取量は、6系に比べて減っている。3系と6系の割合を1対7〜8にした餌を与えた32匹は、動き出すまでに平均80秒かかったのに対し、この割合を1対1にした32匹では平均42秒に縮まった。関口室長は「魚をたくさん食べて3系の割合を増やすことで、不安障害の発症を抑えられるかもしれない」としている。
食生活が心身に与える影響について詳しい明智龍男・名古屋市立大教授(精神腫瘍学)は「オメガ3系が豊富な食事をしているがん患者は病名告知後、うつの発症が少ない傾向がみられ、今回の結果と矛盾しない」と話す。