炎症防ぐ腸内細菌 投与で治療の可能性も
 

 人の腸で過剰な免疫の働きを抑え、炎症を防いでいる腸内細菌17種類を特定したと、東京大の服部正平(はっとり・まさひら)教授や理化学研究所の本田賢也(ほんだ・けんや)チームリーダーらが10日付の英科学誌ネイチャー電子版に発表した。

 免疫の働き過ぎで起きる潰瘍性大腸炎やクローン病の患者では、これらの細菌の多くが減っていることも確認した。細菌を投与することで病気を治療できる可能性もあるという。

 研究チームは、体内の免疫反応を抑える「制御性T細胞」に着目。このT細胞を増やす効果のある細菌を調べるため、無菌状態で飼育したマウスに健康な人の便を注入する実験を繰り返し、17種類を絞り込んだ。いずれも「クロストリジウム属菌」というグループの細菌とみられ、これらをマウスに投与すると下痢や腸炎が治まった。

 海外では、腸炎や感染症の患者に他人の便を注入し、腸内細菌のバランスを立て直す治療が試みられているが、必要のない菌まで注入してしまう。今回、腸炎の治療効果が期待される細菌が特定でき、安全で効果的な治療法につながる可能性があるという。

2013年7月11日 提供:共同通信社