夏バテにならないコツは
 

 ひときわ暑い今年の夏。お盆の夏休みを楽しみに、仕事に励む方も多いだろう。とはいえ今日は、暦の上では立秋。長引く暑さに負けず、残暑に疲れをためないコツを、食事面と精神面から聞いた。


●ビタミンB1とる


「夏バテには三つの要因があります」。女子栄養大短期大学部の佐藤智英(ちえ)准教授(臨床栄養学)はこう語る。暑さで胃腸の働きが弱まり、一方で基礎代謝が上がってエネルギーやミネラルが不足しやすい▽軽度の熱中症に陥っている▽冷房で汗をかきにくくなり、体温調節がうまくいかない――の三つだ。


「その全てに食事が関係しています」


暑い時はそうめんやお茶漬けなど、サッと食べられる一品物に手が伸びがち。すると、食事の中で糖質の比重が高くなり、糖質をエネルギーとして利用するのに必要なビタミンB1が不足し「疲れたりむくみやすくなったりする」という。


まず、ビタミンB1を意識的にとろう。豚肉やうなぎ、豆乳や枝豆などに多く含まれる。ご飯を、ビタミンB群の多い胚芽精米や強化米に変えても良い。


●塩分と糖分も必要


次に熱中症。水分補給が重要だが、小腸が水分を吸収するには、塩分と糖分も必要だ。


市販の経口補水液を飲んでも良いが、自作もできる。水500cc、砂糖大さじ21/4杯、塩小さじ1/6、またはリンゴジュースと水各250cc、塩小さじ1/6を入れてかき混ぜ、1時間くらいかけてゆっくり飲む。これをおいしく感じたら、脱水症の可能性が高い。


「糖質、たんぱく質、ビタミンをバランス良く取ることが重要。特に朝食は生体リズムを整えるためにも有効です」と佐藤さん。牛乳とバナナ▽野菜ジュースとパンとヨーグルト▽イモ類や卵、野菜を入れたスープ――でも良い。


最後に、汗をかきやすい食事とは。記者は先日タイに旅行した際、おなかの調子が良くなり驚いた。佐藤さんは「タイの煮込み料理は温まって汗をかきやすい。繊維質の野菜も多く、香辛料が食欲をそそる。暑い国の料理は理にかなっており、積極的にメニューに加えてみては」と話す。


●意識的に休憩を


「夏は心にもストレスがかかりやすい。楽しいこともストレスのもとですが、自覚しづらいので、疲れがたまりやすい」。こう話すのは、産業カウンセラーで、生活情報サイト「オールアバウト」でガイドを務める大美賀(おおみか)直子さん(41)だ。


温度と意欲には実際に相関関係があるという。百貨店では、店内の温度を25度に設定すると購買意欲をそそるそうだ。


「夏はやる気が薄れて当然。頑張り過ぎず、適度に空調を利用し、休憩を長くとるなど、工夫して意識的に休んでください」


夏のストレスには二つの原因があるという。一つはテンションが上がりやすいこと。海に山にと予定を詰め込み、疲れてしまう。もう一つは人疲れ。お盆の帰省で旧友や親戚と会ったり、家族ぐるみで遊んだりと、非日常的な行動が多く「たとえ楽しくてもストレスにつながる」という。


疲れを感じても、しばらくは体がそれに適応しようとする「抵抗期」が続き、この時期は忙しくても頑張れる。だが、それでも休まないと、突然「疲弊期」が訪れる。


疲れを残さないためには「ぼーっとする時間を持ちましょう」と大美賀さん。「携帯電話を手放すなどの『情報断食』をして、自由に空想を広げてください」。スーパー銭湯に行くのもお薦めだ。


休みの最終日に旅行先から帰ることは避け、最終日は「骨休みデー」にしよう。夕方からは手帳を見て、日常への助走をつけよう。


夏休みが終わると空虚な気持ちになりがちだが、それは「気持ち的時差ぼけ」。大美賀さんは「生活リズムを整え、1〜2週間で元に戻れば十分という気持ちで過ごしましょう」とアドバイスしている。【榊真理子】

2013年8月7日 提供:毎日新聞社