感染症:限りなく感染に近い腫瘍
 

東京医科歯科大学、研修医セミナー
第7週「慢性活動性EBウイルス感染症」─


世界ではEBウイルスはどのようにとらえられているのか。
EBウイルス感染症はアジアの病気であるのか。
血液内科の新井文子氏が解説。

欧米からはほとんど報告がない

講師は血液内科講師の新井文子氏


新井 慢性活動性EBウイルス感染症(CAEBV:Chronic Active Epstein-Barr Virus infection)という病気は世界中にどこにでもあるかというと、不思議なことに、欧米からはほとんど報告がないのです。もともと報告されたのは欧米なのですけど、欧米では、米国国立衛生研究所(NIH:National Institute of Health)の先生たちが調査してまとめたところだと、同じようなEBウイルスの慢性感染症には、予後が悪いようなタイプがあるとのことです。しかし、NIHの先生たちは感染する細胞の主体はB細胞だといっているので、同じ病気なのかということは分かりません(Cohen et al. Blood.2011;117:5835-49.)。


欧米からは報告がほとんどないのですが、日本での10年以上のエビデンスは、だんだん報告されていくうちに欧米でも認められてきて、2008年にはWHOの疾病分類で、リンパ腫の分類が改定されたとき、子どもに多くてIMのような炎症症状が長く続く、T細胞に感染したEBウイルスの腫瘍があるということで、「EBV-Tpositive Lmphoproliferative disorder of childfood」という名前で、CAEBVが初めて記載されました。


本当は病名を改定すべき

CAEBVとは
CAEBVとは


つまりCAEBVはリンパ球の腫瘍なのです。今日の講演のタイトルも実は迷いました。CAEBV、つまり「感染症」という名前をいつまでも使っていると、病気の本態である「腫瘍」という意味が理解されず、正しい診療がなされない可能性もあります。私はCAEBVはEBV陽性T、NKリンパ増殖症(EBV-T/NK-LPD)と呼ぶべきだと思います。


CAEBVの原因は未解明

研修医A アジアに多いという事ですが韓国や中国でも多いのですか。


新井 たいへん良い質問です。韓国や香港、台湾でも報告があります。東アジアにもあるということですね。中国ですごく報告が多いかといえば、そういうことはないです。特殊な検査が必要なので、十分調べられていないからかもしれません。
米国や欧州にも報告がないわけではありませんが極端に少ないです。遺伝的に病気になりやすい、なりにくいといったことがある可能性があります。


研修医B CAEBVを起こしやすいウイルスと起こしにくいウイルスの区別はありますか。


新井 EBウイルスの分類の問題ですね。残念ながら同定されていません。なぜありふれたウイルスが一部の人に重い病気を起こすのか、今のところわかっていないのです。


興味がある方は一緒に調べてみませんか。

2013年8月7日 提供:まとめ:星良孝(m3.com編集部)