アルミニウム含む添加物 過剰摂取、子どもに影響は
  

くらしナビ・ライフスタイル:アルミニウム含む添加物 過剰摂取、子どもに影響は

アルミニウムを含まない膨張剤(ベーキングパウダー)を使う「アルミフリー」の菓子パンやホットケーキミックス粉が増えている。一部の乳幼児が菓子パンなどを通じてアルミニウムを取り過ぎていると分かり、メーカーが切り替えを進めているため。厚生労働省は食品に使用基準を設ける方針だ。アルミニウムが子どもの体にどう影響するのかを考えてみた。

アルミニウムは土や水、空気など自然界にも多いことから、米や野菜などほとんどの食品に含まれる。厚労省は2011〜12年度の2年間、穀類、野菜、油脂類など七つの食品群から、どの年齢層がどれくらいのアルミニウムを摂取しているかを調べた。その結果、1〜6歳の乳幼児が他の年齢層と比べ、メロンパンや蒸しパン、ドーナツ、ホットケーキ、クッキーなどから多くのアルミニウムを取っていることが食生活パターンから割り出した推計で分かった。

●一部国際基準超え

なかでもアルミニウムの摂取量の多い上位5%の1〜6歳の子どもたちは、動物実験で健康影響の目安とされる体重1キロ当たり1週間で2ミリグラムの国際基準(暫定耐容週間摂取量)を超えていた。

その原因として浮かんだのが菓子パンなどに使われる膨張剤に含まれるアルミニウム化合物だ。このアルミニウム化合物は食品添加物のミョウバンとして知られ、漬物の色の安定化や水産加工品の形状安定化などにも使われている。

アルミニウムの過剰摂取問題は、今年6月に開かれた厚労省の薬事・食品衛生審議会添加物部会(部会長=若林敬二・静岡県立大教授)で取り上げられた。

国際基準の暫定耐容週間摂取量は、人が一生涯摂取し続けても健康への影響がないとされる1週間当たりの許容摂取量のこと。マウスを使った海外の実験によると、体重1キロ当たり1日100ミリグラムのアルミニウムを与えたところ、脳神経自体に異常は見られなかったものの、マウスが棒につかまっている時間が短くなるなど握力の低下が見られたという。遺伝や生殖への悪影響はなかった。この実験結果から、安全係数をかけて、体重1キロ当たり1週間で2ミリグラムという許容量が国際機関で決まった。

●リスク大きくない

こうした実験から導かれるアルミニウムのリスクの大きさはどれくらいなのか。同部会委員の小川久美子・国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター病理部長は「100ミリグラムという大量のアルミニウムを与えたときに見られたマウスの握力低下を人間の影響にあてはめて説明するのは難しい。ただし、脳神経に異常はないので、少なくとも大きなリスクとはいえない」と話す。

同部会ではアルミニウムの健康リスクを心配する意見は出なかった。同部会委員の山内明子・日本生活協同組合連合会組織推進本部長は「乳幼児が菓子パンや菓子類を毎日、たくさん食べるという偏った食生活の悪影響の方が大きいのではないか」と話し、バランスのとれた食生活の大切さを訴えた。

しかし、一部乳幼児に過剰摂取が想定されることから、厚労省は今後、菓子類など食品に含まれるアルミニウムの使用基準(使用量の最大限度)を定める方針だ。

●フリーに切り替え

こうした動きを受け、パンメーカーで組織する日本パン工業会は8月上旬、加盟21社に対し、アルミニウムを含まない膨張剤を使用するよう自主的な切り替えを求めた。「既に切り替えが進んでいる。今年度末には終わりそうだ」と同工業会。ちなみに通常の食パンは酵母の発酵で膨らませるため、膨張剤は使われていない。

3年前、東京都健康安全研究センターの調査でアルミニウムが多いと指摘されていたホットケーキミックス粉。「既にホットケーキミックス粉はアルミフリー」(森永製菓)と業界内の対応は早い。神奈川県の大手膨張剤メーカーは「菓子パンや菓子類向けの膨張剤は、アルミフリーが相当に進んでいる」と話しており、国が使用基準を定める意味がなくなるほど切り替えられているようだ。【小島正美】

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◇アルミニウム化合物(食品添加物)の主な用途

膨張剤 メロンパン、蒸し菓子、ドーナツなど

色止め剤 ナスやシソなどの漬物

形状安定剤 ウニやタコなどの魚介類

品質安定剤 ゴボウなど野菜の煮物

着色料 食品全般

(厚生労働省の資料から)

2013年10月3日 提供:毎日新聞社