生活習慣病防ぐ新薬剤 肥満マウスの寿命延ばす
人での応用も視野、東大

  

  糖尿病やメタボリック症候群などの生活習慣病を防ぐ薬剤を開発し、短命な肥満マウスの寿命を延ばすことに成功したと、東京大などのチームが30日付の英科学誌ネイチャー電子版に発表した。

 チームの門脇孝(かどわき・たかし)東京大教授(糖尿病学)は「肥満は糖尿病などの原因となり、がんや心臓病などのリスクを高める。この薬剤で生活習慣病を予防することで、健康長寿につながることが期待される」として、5年以内に人での臨床応用を始める意向を示した。

 脂肪を蓄えている脂肪細胞は「アディポネクチン」という善玉ホルモンを分泌。筋肉や肝臓の細胞が受容体と呼ばれるタンパク質でホルモンを受け取り、血糖値を下げたり、異常にたまった脂肪の消費を促進したりする。だが脂肪が増えすぎて肥満になると、ホルモンの分泌が減って糖尿病やメタボなどにつながることが知られていた。

 チームは、600万種類以上の化合物の中からホルモンと同じように受容体とくっつくものを探しだし「アディポロン」と命名。1日1回、マウスに飲ませたところ、脂肪肝が改善し、血糖値が下がる効果を確認した。

 遺伝子操作で肥満や糖尿病になりやすくした複数のマウスに高脂肪食を与えると、4カ月後に生き残ったマウスは3割だったが、高脂肪食に加えアディポロンを飲ませると7割が生き残り、生存率が大幅に改善した。

 アディポロンを飲ませたマウスは、長時間を走り続けられることも分かった。体重を減らす効果はないという。

2013年10月31日 提供:共同通信社