女性にも多い睡眠時無呼吸 閉経後や細い顎にリスク 
見逃しに注意呼びかけ

  

歯科従事者は患者さんへ、啓発していく義務があります。

 就寝中に呼吸が何度も止まり、日中の眠気に加え高血圧など生活習慣病の悪化も招く睡眠時無呼吸症候群(SAS)。患者の2〜3割は女性とされるが「太った中年男性の病気」というイメージが強いため、かなり見逃されている可能性もある。専門医によると、女性では閉経後に体重が増えた人のほか、顎がほっそりしている人も要注意。大きないびきを注意されたり、強い眠気が気になったりしたら、早めに医療機関を受診しよう。

 ▽気道ふさぐ

 SASの大部分は、寝ている時に、のどの空気の通り道である気道がふさがって起きる。代表的な原因は肥満だ。首周りに脂肪が付いて気道が狭くなったところへ、あおむけで寝ると、重力の影響で舌の付け根部分がのどの方へ落ち込む。こうした経過が多い。疫学調査から、SASは国内に少なくとも200万人いると推定されている。

 睡眠総合ケアクリニック代々木(東京)の井上雄一(いのうえ・ゆういち)理事長は「正確な男女比は不明だが、男3〜4に対し女1くらいではないか。男性が多い理由として考えられるのは、気道が女性より長いなど体の構造の違い。また、女性は閉経する更年期以降、男性との発症率の差があまりなくなることから、ホルモンの影響も疑われている」と話す。最近は「病気が広く知られ抵抗感が減ったためか、小顎、細顎の若い女性の受診が増えてきた」という。

 ▽家族の指摘

 20代後半のA子さんもそうした一人。結婚後、夫の指摘で初めて自分のいびきを知り、SASと診断された。顎がほっそりしているため、寝ると舌が収まりきらずに気道をふさいでしまっていた。自分では全く気付かなかったという。

 SAS発見のきっかけは、大半が家族や一緒に旅行した友人からの指摘だ。大きく不規則ないびきが続き、何度か呼吸が止まって、のどから「カカッ、カカッ」などと苦しそうな音が聞こえることが多い。自覚症状としては、いくら寝ても疲れが取れない、昼間に眠気が強い―などがよくある訴えだ。

 確定診断には一晩入院し、10秒間の呼吸停止が1時間に何回あるかを測定。他の症状と併せてSASと診断される。

 ▽治療で改善

 治療で最もよく使われるのは「CPAP(シーパップ)」という器具。鼻に装着するマスクから一定の圧力を加えた空気を送り込み、気道がふさがるのを防ぐ方法だ。

 B子さん(59)は更年期以降、体重が10キロ増えてSASを発症。CPAPを装着する治療を始めたところ高血圧の改善もみられたという。「肥満の人は減量によって症状が改善することもあるが、太っていない人は基本的に継続した治療が必要」と井上さん。ほかに、顎と舌を前方に固定し気道を広げるマウスピースを装着する方法もあるが、顎の関節や歯に問題があると使えない。CPAPもマウスピースも健康保険が適用される。

 こうした診療を受けるにはSASに詳しい専門機関を訪ねる必要がある。日本睡眠学会は9月現在で全国に95ある学会認定医療機関をホームページ(HP)に掲載。2008年からSASの啓発などに取り組むNPO法人睡眠時無呼吸症候群ネットワーク(SASネット、事務局・東京)もHPに情報を載せている。

 SASネットの伊藤康子(いとう・やすこ)事務局長(63)は「男性を中心にSASの認知度はかなり上がったが、特に更年期以降、自分のリスクも上がることをきちんと理解している女性は少ない。今後は女性が自分の睡眠に関心を持つような啓発に力を入れたい」と話している。(共同=吉本明美)

2013年12月3日 提供:共同通信社