スギ花粉にも有効?始まる花粉症の舌下免疫療法
スギ花粉にも有効? ついに始まる花粉症の舌下免疫療法
どの治療法を選択するにせよ、スギ花粉を避けることが重要です
■花粉症の免疫療法とは
免疫療法とは、花粉症に対して免疫をつけるための治療です。
体がアレルギーを起こす物質であるアレルゲンに反応することを「感作(かんさ)」と言います。
反応を減らすと言う意味で、「減感作療法」(げんかんさりょうほう)とも呼ばれています。
免疫療法(減感作療法)は、微量のアレルゲンを反復注射または舌下に投与したり、アレルギーの力を減らしたアレルゲンを服用したりして、アレルゲンに対して反応しない状態にすることを言います。
免疫療法をすることで、体の中では、アレルゲンに対するIgEの値が減少したり、ヒスタミンなどのアレルギーの症状を起こす化学物質が出てこなくなったり、IgEを抑える物質を体の中で作ってIgEの働きをブロックしたりすることで、アレルギー反応が起こらなくなると言われています。
免疫療法は、スギ花粉症において行われています。施行医の条件としては、アレルギー科領域の専門的知識と経験を十分に持った医師であることが必要になっています。
■免疫療法への期待されることと報告されている副作用
免疫療法ではアレルギー症状の改善効果が期待でき、長期間にわたって薬の使用量が減少することが期待されています。
今まで行われてきた皮下注射による免疫療法では、70%の有効性があります。
3年以上治療を続けると、治療中止後5年後にも80〜90%の効果が持続しています。
一方で、副作用がないわけではありません。
特に皮下注射の場合は、注射部位の腫れ、時に、じんましん、ショックや喘鳴などのアナフィラキシーになることもありますので、注意が必要です。
そのために、はじめから免疫療法を選ぶのではなく、いくつかの治療法を先に試みることが大切です。
■免疫療法をする前にするべきこと
まずはスギ花粉を避けることが必要です。
免疫療法は治療法のひとつであって、万能ではありません。
免疫療法中も療法後も、スギ花粉の飛散には注意する必要があります。
スギ花粉回避のためには、以下をしっかり実践することが大切です。
・花粉飛散情報に注意する
・飛散量が多い時は外出を控え、外出時には、マスク、メガネを使用する
・毛織物などの衣服の使用は避ける
・帰宅時には衣服や髪をよく払って入室する
・洗顔、うがい、鼻をかむ、鼻うがいをする
・飛散の多いときは、窓や戸を閉めておく
・換気するときは窓を小さく開け、短時間にして、カーテンをしておく
・飛散の多い日の布団や洗濯物の外干しは避け、部屋干しにする ・掃除をしっかりとする。
特に窓際の掃除は念入りに
■免疫療法を受けられる人・受けられない人
免疫療法の適応条件は、皮下注射は5歳以上、舌下療法は12歳以上です。
また、スギ花粉症と診断されていることが必要で、くわえて下記の条件があります。
・抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬、ステロイドの点鼻薬などで症状が十分にコントロールできない人
・長期の薬の治療が望ましくない人
・薬の副作用が出る人
残念ながら、免疫療法ができない人もいます。
・心臓の薬であるβ阻害薬使用中の人 ・不安定な気管支喘息の人 ・全身ステロイドを毎日使用している人 ・抗がん剤を使用している人 ・妊娠している人 ・急性感染症にかかっ ている人 ・自己免疫疾患、膠原病のある人、または以前、かかったことのある人
また、転居の予定や継続的な通院ができない人はできれば、避けたほうがいいでしょう。
■免疫療法の方法
現在、免疫療法の方法としては、注射による皮下免疫療法と、舌下免疫療法の2つがあります。
□スギ花粉に対する注射での皮下免疫療法
スギ花粉飛散時期以外で治療を開始します。
初回はスギ花粉の皮膚試験を行い、反応する濃度か1/10の量から開始します。
注射後は20分から30分は副作用が出ないどうかをチェックします。
徐々に濃度を増やしていきます。1カ月に1回注射して、2〜3年は治療を継続します。
注射なので、月に1回は医療機関に受診します。
副作用は、注射部位の腫れとアナフィラキシーです。特にアナフィラキシーに対しては速やかに適切な処置を必要とします。
注射は医療機関で行い、注射後30分は医療機関に居るようにしてください。
□スギ花粉に対する舌下免疫療法
スギ花粉飛散時期以外で治療を開始します。
少なくとも2年間毎日投与が可能であること、最初の1年間は2週間に1回、月に1回は通院可能であることが必要です。
2分間舌の下にスギ花粉のエキスを保持し、初回は30分間安静にして、医療機関で観察されます。
投与直後には、最低2時間以内の激しい運動、アルコール摂取、入浴は避けます。歯科の治療中や口内炎、口に傷のある場合は一時中止します。
この治療は、毎日する必要があるため、家で行うことになります。
口の違和感、かゆみ、腫れがある場合は、治療中の医療機関に連絡してください。これらの口の違和感などは治療中に軽くなったり、起こさなくなります。
アナフィラキシーは非常に稀ではありますが、皆無ではないので、注意は必要です。
無症状で続けていくことが治療の基本ですから、決して自己判断で、中止したり、再開しないようにしてください。
(※現在、この治療方法は、講習会受講の医師に限定されています。)
皮下免疫療法と舌下免疫療法での効果の違いはまだ報告されていません。
舌下免疫療法は家で毎日行い、週に2回、その後月に1回の受診を必要としますので、医療機関に定期的に受診できることが必要条件になってきます。
(清益 功浩)