では、人への影響を調べてもらいたい、すくなくとも10年は追跡して
触れるだけでマダニが死滅 カーバメート系の殺虫成分「プロポクスル」
ライオンは、殺虫成分「プロポクスル」にマダニを死滅させる効果があることを突き止めた。虫体に直接噴霧するのではなく、塗布した箇所に触れるだけで効き目が得られることを確認。卵からふ化して成長する各発育段階で同様の効力を発揮することもわかった。マダニが媒介する新しいウイルス感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」が全国で広がっている。ライオンはプロポクスルや他の殺虫成分を用いた技術開発に取り組み、マダニに対する消費者の関心の高まりに備える。
独バイエルが開発したプロポクスルは、国内で1979年に医薬品として承認されたカーバメート系の殺虫成分。ゴキブリやトコジラミなどに対する殺虫成分として用いられている。今回の研究でマダニに対する有効性を初めて明らかにした。
プロポクスルを吹きかけて3日目と26日目のろ紙を使い、発育段階の異なる幼ダニ(ふ化後2カ月)、若ダニ(脱皮後2〜4カ月)、成ダニ(同6〜8カ月)を24時間接触させた。薬剤の接触による変化や持続性を調べたところ、100%の確率で死滅したという。3日目と26日目で効果は変わらなかった。
若ダニがSFTSと大きなかかわりを持つ可能性が指摘されていることから、若ダニで検証を重ねた。薬剤の接触時間と致死の関連性を詳しくみると、少なくとも30分触れれば瀕死の状態になっていた。ふ化前の卵を対象にした試験でも、ほぼ100%の殺卵効果を示したという。
SFTSはウイルスを持つマダニに噛まれることで感染し、発熱や嘔吐、下痢などを発症。昨年1月に国内で初の感染患者が出るなど厚生労働省は注意を呼びかけているが、現在のところ有効な治療薬はない。気温が高くなることでマダニの活動が活発化することから今後、国内感染の確認例が増える可能性もある。
ライオンは2004年、中外製薬からの事業譲渡によって殺虫剤市場に参入。ブランド「バルサン」の名称でくん煙殺虫剤などを手掛ける。
業界ではアース製薬など競合他社もマダニ向けなどで殺虫剤の事業強化に乗り出している。ライオンは今後、プロポクスルなどを使った新商品を開発・発売していき関連商品群を増やす考えだ。