男の体臭気になります 悩み増加、加齢や疲労で 対策商品続々と登場
体臭に悩む男性が増えている。加齢のほか生活習慣の乱れ、疲労などが原因で、対策として消臭・防臭機能を備えた洗剤やシャンプー、衣類といった商品が続々と登場している。人間関係の希薄化に伴い、相手に嫌われまいと必要以上に臭いを気にする現代人の心理も背景にあるようだ。
▽生活習慣病にも
関西地方に住む会社員の太田守さん(52)=仮名=は数年前、部下の女性社員から「体の臭いが不快」と言われた。自覚症状もなく突然の指摘に戸惑ったが、その後清潔さを保つよう努力した。
ところが仕事中、手に異常な汗をかいたのをきっかけに臭いが気になり、社内の人間関係にも支障を来したため、専門医に相談した。体臭専門クリニックにはここ数年、こうした悩みを訴える患者の来院が増えている。
中高年男性を中心に悩ませる臭いは、汗や皮脂に含まれる物質が皮膚や衣類の細菌などに分解されて発生する。年齢を重ねるとともに生じ、枯れ草のような臭いがする「加齢臭」は「メタボ臭」ともいわれ、血中のコレステロールや中性脂肪の数値が高いと出やすいとされる。
疲れや激しい運動の影響で肝機能が低下し、アンモニアの分解機能が落ちることで起きる「疲労臭」もある。「いずれも体調不良から起きて生活習慣病と同じメカニズムをたどるため、食事などの生活習慣や体調を整え、ストレスをためないことが何よりの改善策」(専門医)という。
▽過剰に意識
調査会社の富士経済の推計によると、スプレーやシートを中心とする制汗剤の市場規模は2013年で253億円に達し、10年前に比べ30%超の見通しだ。
体に直接吹きかけたり、貼ったりする商品のほかにもさまざまなタイプが登場している。P&Gの衣料用洗剤「アリエール イオンパワージェル サイエンスプラス」は特に30代男性に目立つ皮脂汚れを落とし、抗菌や防臭効果が期待できる。
マンダムも加齢臭とは別に30〜40代男性の後頭部や首を中心に発生する体臭を「ミドル脂臭」と名付け、「ルシード」ブランドでシャンプーなどの対策商品を発売。紳士服メーカー、はるやま商事も付着した臭いを消す効果のある下着や靴下を売り出し、好評という。
一方、過剰に体臭を気にする傾向を懸念する声もある。体臭専門の「五味クリニック」(東京)の五味常明(ごみ・つねあき)院長によると、ここ10年、自分の体臭が周囲の人を不快にする不安に駆られ来院する人が急増しているが、実際に体臭の治療が必要なケースは多くないという。
五味院長は「人間関係が希薄で他人とのトラブルを避けようとする風潮が強い中、自分の体臭を否定されることへの不安感から臭いに過敏に反応している」と分析。最低限のエチケットとして臭いに気を使うくらいでちょうどいいと指摘している。