特集:“空間除菌”ウイルス対策いろいろ
「弱酸性次亜塩素酸水」を使った商品が注目
◇殺菌効果高く人体にも安全 さまざまな用途で、消費者に安心を
“空間除菌”は根拠がない――。二酸化塩素を発生させる商品を部屋に置いたり、首に掛けたりするだけで「空間除菌できる」とうたった宣伝について、消費者庁は先月、景品表示法違反(優良誤認)に当たるとして、販売17社に、再発防止を求める措置命令を出した。消費者の期待を裏切る形になったが、別のウイルス対策もある。殺菌効果が高く人体にも安全な「弱酸性次亜塩素酸水」を使った商品が注目されている。【原田悠自】
消費者庁によると、17社は、新聞広告やホームページで「空間に浮遊するウイルス・菌・ニオイを除去」などと効果を宣伝。二酸化塩素に殺菌効果はあるものの、人の出入りなどによる空気の流れがある場所では十分な根拠があるとは言えず、宣伝を裏付けるとは認められなかった。
こうした二酸化塩素を発生させる商品に代わるものとして挙げられるのが、次亜塩素酸水だ。厚生労働省から消毒効果が推奨されており、ノロウイルスなど感染力の強いウイルスに効果が高いとされている。
ノロウイルスには塩素消毒が有効とされている。だが、家庭用漂白剤などに含まれる次亜塩素酸イオンは、強いアルカリ性で刺激が強く、皮膚や粘膜に炎症を起こすなど、人体の消毒には使えないとされてきた。そこで、中区の製造販売会社「シージーアイ」は、県工業技術センターと新たな商品を共同開発。次亜塩素酸イオンに塩酸を加えて弱酸性の次亜塩素酸水にすることで、人体でも安全に使える製品化に成功した。佐藤克則・副社長は「超音波で水溶液をミスト化しているので、物が濡れることもない。課題だった金属などの腐食も抑えることができた」と話す。
通常の空気清浄機は、空間に漂う微粒子をフィルターで捕らえるものなので、フィルターの掃除を怠ったり、長年使っていると効果が落ちる。これに対し、弱酸性次亜塩素酸水は、空間のウイルスを感染しない程度まで安全に分解するため、ウイルスやカビ、悪臭に効果があるという。
日常の悪臭は、尿などのアンモニア▽卵の腐敗臭の硫化水素▽肉・魚の腐敗臭のトリメチルアミン▽タマネギの腐敗臭のメチルメルカプタン――の4種が約8割を占める。弱酸性次亜塩素酸水は、これらに対しても消臭。17〜18畳の部屋(約30平方メートル)で、10分程度で消臭効果があるという。
病院や介護施設、家庭やオフィスなどでも需要がある。美作市内のデイサービスセンターでは、1日に25人前後の利用者がいる。感染症予防策を探っていたという下山玲子センター長は、2011年冬に、事務所や調理場の出入り口など計4カ所に商品を設置。ノロウイルスが流行する1、2月には、トイレの手すりなど人が触れやすい場所に、スプレータイプの商品を使って対応している。下山センター長は「利用する人が、一日中施設内にいるわけではないので、空間除菌によって感染拡大を少しでも防ぐ形で使わせてもらっている」と話した。
商品を取り扱う薬剤師の山本芳男さん(50)は、勤務先の薬局内に4年前から商品を設置。毎年インフルエンザに感染する職員がいたが、商品導入後はぴたりとなくなったという。山本さんは「安全で、さまざまな用途に使えるのが一番の強み。これからの季節で悩まされるカビ対策などに活用してほしい」と呼び掛けている。
商品は、持ち運べるスプレーボトルや、手をかざすと液体が自動で出てくる装置、据え置き型の超音波霧化器などがある。問い合わせはシージーアイ(086・201・1122)。