いろんなウイルスに効く?薬の候補物質を発見 京大


いろんなウイルスに効く?薬の候補物質を発見 京大

 有効な治療薬がない様々なウイルス感染に効果が期待できる薬の候補物質を、京都大などのグループが見つけた。従来の治療薬とは異なる仕組みで、薬が効かなくなる「耐性」も生じにくいという。米臨床医学専門誌「ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション」電子版で9日発表した。

 ウイルスは、増殖に必要な「部品」を自ら作れず、感染した生き物のたんぱく質を活用して作らせる。従来の薬はウイルスごとに異なる部品を標的にしているが、部品は変化しやすいため、薬が効かなくなることがある。

 萩原正敏・京大教授らは、様々なウイルスの部品作りに不可欠なたんぱく質に着目し、この働きを止める化合物を作った。

 治療薬が効かないヘルペスウイルスに感染させたマウスを使って調べた結果、従来の薬を塗ったマウスは10日以内に全5匹が死亡したが、この物質を塗ったマウスの死亡は1匹だけで、効果が確認された。今のところ毒性は見られず、試験管での実験では、インフルエンザウイルスなどでも効果がありそうだという。

 生き物側のたんぱく質は変化しにくく、この物質を長期間使っても耐性が生じにくいと見込んでいる。萩原さんは「来年度にも人で効果や安全性を確かめる研究を始めたい」と話す。

 東京大の川口寧(やすし)教授(ウイルス学)は「抗ウイルス薬は数が限られ、有望な研究だ。ただ、人での効果と副作用は慎重に検討する必要がある」と指摘している。(阿部彰芳)

 

提供:朝日新聞 2014年7月9日(水)

2014年7月10日更新