冷え性に悩む女性が多い中、ショウガの効能に注目が集まっている。体を温め、発汗を促す作用があるためだ。様々な漢方薬に使われ、料理のスパイスとしても重宝されている。 |
漢方薬治療で知られる北里研究所東洋医学総合研究所(東京都港区)には、全国から治療を求める人が押し寄せる。鈴木邦彦医長は「患者の70%が女性。初診時に提出する問診票には多くの女性が『冷え性』に印を付ける」と話す。
冷え性の原因は医学的には解明されてないが、食生活や生活習慣の変化に伴い、人間の体温が低下していることが一因とされる。冷え性になると、体の動きが鈍り、便秘、頭痛、腰痛、関節の痛みなどをもたらすといわれている。
飲み物に混ぜて
こうした冷え性に効くとされるショウガは、インドなどアジアの熱帯地方が原産地で、古くから薬や香辛料に使われてきた。胃腸の働きを整えるほか、血の流れを良くし、体を温めたり、発汗を促す作用がある。すしと一緒に酢漬けのショウガを食べるのは、生もので冷えた体を温めるとともに、消毒するのが目的だ。
中国では長く漢方薬に使われてきた。明の時代の医師、李時珍は「本草網目」に「ショウガは百邪を防御する」と記している。「今でもショウガを使った漢方薬は約130種類ある」(金成俊薬剤部副部長)。すり下ろしたショウガ以外に乾燥させた生姜(ショウキョウ)、いったん蒸してから乾かした乾姜(カンキョウ)がある。
冷え性に効く成分は大まかにジンゲロールとショウガオールの2つ。いずれも体を温め、血行を良くし、胃腸の具合を整えるといわれる。生か乾燥状態かで働き方が変わり、症状に応じた漢方薬の配合も異なる。冷え性のお年寄りであれば、温める効果の強いカンキョウで内臓を刺激し、働きを活発にさせるのがいい。
薬を飲むのが苦手な女性は、普段の食事にショウガを取り入れてみてはどうか。冷蔵庫の野菜室や冷凍室に使いかけのショウガを眠らせたままの主婦も多い。冷凍室でラップに包んで保存しても成分や働きに大きな変化はないといわれる。活用しない手はない。
例えば、「薬膳(やくぜん)ポトフ」=写真左上。エスビー食品のレシピでは4人前でショウガを30グラムと多めに使う。ニンニクや香辛料もたくさん含む。体のしんから温まる料理だ。朝食のみそ汁に入れたり、バターと一緒にトーストに塗ってもいいだろう。
もっと手軽に、しかも頻繁に取り入れるなら、飲み物に混ぜるのお勧め。よく知られているショウガ湯やショウガ入り紅茶のほか、「昔ながらの甘酒やレモネードに入れてもおいしい」(エスビー食品営業本部の石井利一氏)。冬の起きがけ飲めば、内臓からぽかぽか温まるのがよく分かる。ハチミツを入れるとショウガの辛みを和らげることもできる。
家庭菜園で栽培
春になったら家庭菜園で栽培してもいい。ホームセンターなどで種ショウガが販売されている。チューリップの球根を植えるみたいに、芽を残すようにして土の中に埋めればよい。土は赤土などで構わない。
庭がなくても、プランターを使えばマンションのベランダでも栽培できる。写真左下は都内の農業高校がプランターを使って5カ月かけて生育したもの。掘り出したら、200−300グラムの立派なショウガが出てきた。「虫が付きにくく、乾燥しないようにこまめに水を与えるだけでよい」(農業高校教諭)
もっとも健康に万能なショウガにも使用上の注意がある。「体を温め、発汗作用がある分、高血圧や胃かいようを患っている人は取りすぎに注意したい」(鈴木医長)。自分の体調を考えながら、ショウガを上手に摂取しよう。
薬膳ポトフの作り方
材料(4人分)
ショウガ30グラム、ニンニク4片、肉ぶつ切り(骨付き)600グラム、水8カップ、中華用赤唐辛子、だいこん1/3本、こんにゃく1丁、ゴボウ1本、干シイタケ8枚、結び昆布4個、ナツメ4個、クコの実大さじ2、塩小さじ1、ホワイトペッパー少々、豆苗1パック、ネギ1センチ
タレ…しょうゆ大さじ3、白ゴマ小さじ2、ごま油小さじ1、七味唐辛子適宜
作り方
@ ショウガとニンニクは縦に割り、包丁の腹でつぶす。
A 鍋に@と鶏肉、水などを入れ、あくを取りながら煮る。
B ダイコンは2センチの厚さに切って下ゆで、コンニャクは1/4に、ゴボウは約5センチに切り、干しシイタケは水で戻す
C 鍋に野菜と結び昆布を入れ、火が通ったらナツメとクコの実を加え、弱火で煮る。仕上げに塩とホワイトペッパーで味を調える。
D ネギをみじん切りにし、タレをあわせる。七味は好みで
詳細はエスビー食品のホームページ(http://www.sbsoken.com/)を参照 |
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