豊富な食物繊維
菓子などで活用

豆乳を作れば、搾った後におからができる。豆乳ブームの陰で忘れられていた、このおからにじわりと光が当たり始めた。もとはといえば健康食材の代表ともいえる大豆の一部。豆乳には残らない様々な健康成分が含まれている。豆腐、豆乳メーカーも捨てるには惜しいと用途開発に熱がこもる。この辺でおからも見直してみよう。

あんドーナツに肉まん、さらにはチョコケーキ……。1日約2万丁の豆腐を生産する豆腐製造の篠崎屋は2003年11月から、おからを利用した商品の販売を始めた。いずれも系列の豆腐店や飲食店に出荷し、4カ月余りで当初の2倍以上を売り上げるヒット商品も出てきた。

脱廃棄物化狙う
篠崎屋は埼玉県春日部市の豆腐二工場で約1.5トンの乾燥大豆を加工する。水を吸わせた体積が2.2倍になった大豆から豆乳を搾り出すと、元の乾燥大豆と同じ1.5トンのおからが後に残る。このおからは食料や肥料として使用しなければ、そのまま産業廃棄物になってしまう。「栄養価の高いおからを有効活用し、大豆を丸ごと利用できる体制を整えたい」。樽見浩生産部長は力を込める。

おからの成分を豆乳と比較してみよう。百グラム中の食物繊維は、おから11.5グラムに対して豆乳0.2グラム。おからが50倍以上の大差で豆乳を圧倒している。百グラム中のたんぱく質含有量でも、6.1グラムに対2.0グラムで、おからは豆乳の3倍以上だ。

食物繊維に注目すれば、成人の目標摂取量は1日20−25グラム。おから2百グラムで賄える勘定だ。玉川大学の竹中哲夫教授は「おからは胃の中で消化されず、そのまま腸にたどりついて水分を吸収して膨らむ。その際、不純物を吸収し、腸壁を刺激するので、便通を良くする」と解説する。

食物繊維はダイエットにも効果的だ。おからの繊維はおなかの中で膨らむので腹持ちがよくなる。余分な脂肪の吸収も妨げるので、油分や糖分をとりすぎて生活習慣病が気になる人には都合がよい。

ガンや動脈硬化の原因となる活性酸素の働きを抑えるとして豆乳ブームのけん引役になった栄養素、大豆イソフラボンで見ると、さすがに百グラム当たりで豆乳の25−30ミリグラムに対して、おからは15ミリグラムとほぼ半分だ。

更年期和らげる
それでも、武庫川女子大学の福田満教授は「おからが女性の更年期症状を和らげたり、乳がんの予防に効果的」と話す。女性ホルモンのバランスを取るには、1日当たり60−70ミリグラムの大豆イソフラボンを摂取するのがよいといわれる。この量を維持するために、「おからをうまく組み合わせてみては」と福田教授はアドバイスする。

おからのもっとも一般的な食べ方は、野菜や油揚げなどを入れていりつけた、うの花いりだ。うの花いりに使いやすいのは豆乳をしぼった後、水分が80%残った生おから。豆乳を含んでいて舌触りがしっとりしている。スーパーなどでは、このほか、さらにしぼって水分を70%にした生おから、水分を完全にとばした乾燥おからが売られている。

「お菓子などを作る際に、小麦粉を使う場合に比べてカロリーは20−30%カットできる」と福田教授。ただ、おからの大きさは直径1−2ミリ。そのまま使ってもぼそぼそしてしまう。しっとりさせるにはバターなどの油分を入れればいいが、入れすぎると逆効果になるので要注意だ。

大豆から自分で豆乳や豆腐を作るなら、そのときに同時にできるおからも無駄なく使って、大豆の栄養素を丸ごと摂取したい。フードクリエーターの向後千里さんが家でミキサーを使っておからとこれからの季節にぴったりのレシピを教えてくれた。

手作りのおからは、まず大豆を3倍の水に1晩浸してからミキサーにかける。つぶした大豆を火にかけて沸騰させた後、火を弱めて5分程度煮る。冷ましたものを布でこしたら出来上がりだ。

水分とばし日持ち
こした豆乳はそのまま飲めるし、にがりを入れて豆腐を作ってもいい。生おからは表に掲げた「雪花菜(きらず)飯」にして食べる。フライパンで温めて水分をとばすと、冷蔵庫で4、5日間は持つので、うの花いりや、うの花あえをつくって楽しもう。

豆腐製造の椿き家(広島県本郷町)が運営しているサイト「おからひろば」(http://www.okara.jp)
には、同社が募集したおからを利用した惣菜やお菓子のレシピが多数掲載されていて、いつもと違う食べ方をしたいときに便利だ。

<雪花菜(きらず)飯の作り方>(4人分)

※ フードクリエーターの向後千里さんが提案
@米2カップを洗って炊く
A刺し身用のタイ320グラムをそぎ切りにし、水で少し湿らせた昆布にはさんで40分程度おき、昆布じめにする。
Bおから150グラムをからいりして、水分をとばす。ゴボウ1/2本小さめのささがき、せり50グラムは1センチ幅のざく切りにし、葉の先の部分は飾り用に分けておく。
Cフライパンにごま油を熱し、Bのゴボウをいため、おからを加えて油がまわったら、みりん大さじ2、しょうゆ・塩をそれぞれ小さじ1を加えて混ぜる。
D炊き上がったご飯にBのせりを入れ、10分蒸らす。
E器にご飯を盛り、飾り用のせり、AのタイをのせてCをかける。好みでワサビじょうゆをかける。
2004.4.10 日本経済新聞