毎年、夏になると猛威を振るう食中毒。日本では年間約2千件発生し、2万−3万人もの人々が被害に遭う。大半がレストランや居酒屋など外食産業を原因にしたものだが、家庭で起こる食中毒も侮れない。保健所などに報告されないケースも多いためだ。これからの季節、基本的なことは知っておいて損はない。

食中毒は大きく分けて3種類ある。食品に付着した細菌が引き起こす細菌性食中毒、洗剤などの異物混入した食品を食べて発生する化学性食中毒、毒きのこやフグなどによる自然毒性食中毒。このうち細菌による食中毒が9割以上を占める。

原因菌やウイルスは、はやり廃りがある。戦前はコレラ菌や赤痢菌、戦後はサルモネラ属菌や腸炎ビブリオ、ブドウ球菌が多い。最近世界的に増加してるのはサルモネラ属菌の一つ、サルモネラ・エンテリティディス。主な原因食品は生卵や卵料理だ。また、多くの被害者を出したことで記憶に新しいのが病原性大腸菌O157。1996年には発生件数87件にのぼったが、対策が進み、2002年には12件まで減少した。

代わって急増中なのがノロ(小型球形)ウイルスやカンピロバクター。ノロウイルスはカキなどに多く付着し、冬の食中毒の発生源となる。海洋汚染が進んで増殖したとみられている。カンピロバクターは鶏肉などに多く付着する細菌で、おう吐や腹痛、下痢などの症状を引き起こす。細菌やウイルスに詳しい女子栄養大の上田成子教授は「食中毒は永遠に不滅だが、対策次第で発生リスクを抑えることは可能」という。一人ひとりの心がけが問われている。

食中毒の主な病因菌

病因菌名
(主な病因食品)
発生件数
サルモネラ属菌(肉、卵)
465
カンピロバクター(肉類)
447
ノロウイルス(カキ、ケーキなど)
268
腸炎ビブリオ(魚介類)
229
ブドウ球菌(米飯類)
72
(注)発生件数は2002年の食中毒。上田成子・女子栄養大教授による「空気調和・衛星工学」第78巻第3号の資料をもとに作成
2004.5.1 日本経済新聞