疲労回復に効果があるとしてカツオだしが注目されている。時速60キロで一生泳ぎ続けるカツオには、人間の体内に蓄積する疲労物質も消去するパワーがあるようだ。カツオだしを利用したレシピは数多く、上手く使えば夏バテの解消にも役立ちそうだ。 |
「カツオだしが体によいということはこれまでも言われていたが、科学的な実証実験はあまりされていなかった」と話すのは、味の素食品研究所(川崎市)の黒田素央・農学博士。今年5月に福岡市で開催した日本栄養・食糧学会で、その効果について報告した。
実証実験では、3時間かけて2.1キロ走ったネズミ(ゆるやかなジョギング程度の運動量)に濃度25%のカツオだしと蒸留水を飲ませ、その後の運動量を測定した。ネズミの活動を赤外線センサーで測ると、カツオだしを飲んだ方は蒸留水に比べて5倍多く動き回った。エネルギー源が肝臓にどれだけ残っているかを示す数値も、カツオだしは蒸留水の2倍となった。
「今回の実験で、カツオだしに豊富に含まれる栄養分のアンセリンやカルノシンに疲労回復効果があるということが証明された」(黒田博士)という。カツオをそのまま食べても同様の効果を得られるが、だしの方が料理に取り入れやすく、効率的に摂取できる。
伊奈和夫・静岡大学名誉教授(天然物化学)も「疲れを知らずに泳ぎ続け、エサを追うときに示す驚異的なスピードはカツオ特有。アンセリン、カルノシンは水溶性でだし汁で飲んでもよい。疲労回復だけでなく、老化防止、生活習慣病の予防などに効果が期待され、同じ回遊魚のマグロとともに研究の余地は多い」と認める。
古くから日本人の栄養食として、カツオだしは身近な存在だった。しかし食生活の洋風化でカツオだしやそれを使った料理を作らない人も増えている。「まず、適当なだしの濃度を知ることから始めてほしい」と話すのは、料理研究家の千葉道子さん。昆布と並ぶだしの王様だが、「濃度が低いために香ばしいにおいとうまみを感じないでいる人も多い」と指摘する。
千葉さんによると、分量の目安は200ccの水に対して5グラム以上のカツオぶし。水が沸騰したら、中火にしてカツオぶしを入れ、もう1回沸騰させてから火を止め、ペーパータオルでこす。水の段階からミネラル分の豊富な昆布を加え、1回目に沸騰する直前に引き出せばうまみと栄養は増す。
カツオだしと旬の夏野菜を使った簡単な夏バテ解消料理を、千葉さんに作ってもらった(表参照)。
まずは、酒のさかなにも向いている煮ナスの山かけ。体を冷やす効果があるナスと粘り気のあるヤマトイモ、オクラは夏場の体力増強には持ってこい。
もう1つが、ビタミン豊富な夏野菜の揚げびたし。レシピで紹介した以外にもニンジン、トウガンなど冷蔵庫にある野菜を使えばよい。ダシのつゆを作るのが面倒くさければ、市販のめんつゆを使ってもよい。
でんぷんの含有量の多いトウモロコシとビタミン豊富なチンゲン菜を使って冷製ポタージュもお薦め。トウモロコシの甘みとカツオだしとの相性が抜群だ。ヒスイ色の彩りも鮮やかで、食欲のない時などにお薦めだ。このほか、吸い物やだし巻き卵、だしで割ったしょうゆで刺し身を食べるなど、カツオだしを使った食べ方や料理は数多くある。
千葉さんは「カツオだしは料理の基本。様々な料理に活用できるので、意識的に使ってみたらどうか」とアドバイスする。
<煮ナスの山掛け>
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▼材料(4人分)
ナス4個、オクラ4本、ヤマトイモ150グラム、ウニ少々、A(カツオだし500cc、しょうゆ大さじ3杯、みりん70cc)
▼作り方
@へたを取ったナスを縦半分に切り、縦に2、3ミリ間隔で切り込みを入れる
AAを入れて煮立てた鍋にナスを入れ強火で5分ほど煮る。粗熱を取り、冷蔵庫で1時間程度冷やす
B器に盛り、すりおろしたヤマトイモ、ゆでて食べやすい大きさに切ったオクラ、ウニを添える |
<夏野菜の揚げ美足し>
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▼材料(4人分)
カボチャ小1/4個、オクラ4本、ミョウガ2本、ズッキーニ1/2本、レンコン小1節、ナス1本、インゲン6本、小タマネギ4個、赤ピーマン1/2個、ニガウリ1/2本、ナス1本、シメジ1パック、B(カツオだし250cc、しょうゆ、みりん50ccずつ)
▼作り方
@オクラとナスはヘタを取り、小タマネギは皮をむく。ミョウガは縦割り、ピーマンは拍子切り、シメジは小房に分ける。カボチャは7ミリ、レンコン、ナス、ズッキーニは8ミリの薄切り
A170度の油に小タマネギ、レンコンを先に入れ、3分程度をかけて素揚げにする
BBを一煮立ちさせ、野菜にかける |
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